星空を一番撮りやすいカメラ OM-D E-M1 Mark II

10.手振れ補正を生かした撮影

手振れ補正を生かして機内から撮影した一枚。窓に押し付ければ綺麗に撮れると思われるかもしれないが、それでは構図が限定されてしまう。また、飛行機が振動しているためそれだけではうまくいかない。従来のカメラだと補正しきれないか補正できても数秒だったのが、確率は落ちるとはいえ十数秒でちゃんと止まっているのは驚異的だ。そのうち機内からのオーロラ、天の川写真が普通になるかもしれない。なお、綺麗に撮るには機内光の写りこみをいかに遮断するのかがポイントになる。

OM-D E-M1 Mark IIの手振れ補正の効きは驚異的なため、星空の撮影でも手振れ補正は有効利用できる。他社の手振れ補正では、広角レンズの秒単位の撮影は実用的ではない。しかし、オリンパスのカメラ、特にOM-D E-M1 Mark IIであれば、明るいレンズとあわせれば、星空をしっかり写すことも可能だ。

まず活用しているのが、試し撮りだ。星空を撮影するには、三脚を使わなければならないと強く思い込んでいる人も多いだろう。しかしISOを12800~25600まで上げて高性能なレンズを組み合わせると、数秒で天の川まで写るので、試し撮りには最適だ。三脚を使わない自由な視点で構図を決め、最終的な撮影の時のみ三脚を使うようにすれば、より創造的な構図に挑戦できる。また、現地に三脚や撮影機材を持っていく前に、カメラとレンズだけの軽やかなスタイルで偵察を行い、良い絵が撮れそうな場合だけ、三脚など撮影機材を持ち込むようにするのもとても便利だ。

試し撮りの時、私は連写設定にしている。これは、長秒時ノイズ低減AUTOなら、連写設定で撮影すると自動的に長秒時ノイズ低減がOffになり、素早く撮影結果が確認できるからだ。空の明るさにもよるが、ISOをできるだけ上げて撮影する。ライブビューブースト2でも、地上の暗い部分の構図は確認しづらかったりするので、条件によって試し撮りは有効だ。なお、ピント合わせも慣れれば、手持ちでも十分できる。

次に試し撮りの延長にある星空スナップだ。三脚を使えないシーンや、三脚を持ち出したくないシーンでも星空や天の川を撮ることができる。皆さんも、今まで撮れなかったシーンにチャレンジして欲しい。

  • 絞り値:F0.95
  • シャッター速度:4秒
  • 焦点距離:10mm
  • ISO感度:12800
  • 手持ち 手振れ補正設定 IS1
  • OM-D E-M1 Mark II

水面に映る星が綺麗だったので、撮った一枚。手振れ補正を設定することにより、電子接点のないレンズでも手振れ補正を効かせることができるので撮ることができた1枚。手持ちでの撮影だと、しっかり構えて撮ることが重要だ。手持ちで長秒だと、すべてがブレなく撮れるわけでは無いので、設定を調整しながら何枚も撮るのもコツと言える。撮る世界を広げる高性能なカメラ・レンズを期待したい。

11.OM-D E-M1との画質比較

初代E-M1は、星空を撮るのに向いていない。こんなことを聞いたことはあるだろうか?これは真実でもあり、嘘でもある。初代E-M1が苦手だったのは、長秒撮影だ。長秒撮影で、長秒時ノイズ低減を行わない場合、画面上にノイズが多くのってくる。気温が高くなるとさらにノイズは増える。そのため、花火撮影などの場合は、長秒時ノイズ低減が欠かせないのでテンポよく撮れない。しかし、旧世代のフォーサーズカメラなどに比べると、高感度ノイズは抑えられており、長秒時ノイズ低減AUTOで使用すれば、満足のいく撮影も可能だ。しかし、新世代であるOM-D E-M1 Mark IIでは、初代E-M1よりさらにノイズは抑えられている。このPartでは、E-M1とE-M1 Mark IIでどのくらいの違いがあるのかを確認する。
共通条件として、全て撮って出しのJPEG、仕上がり設定 Normal、ホワイトバランス AUTO、階調 Normal、シャープネス-2、高感度ノイズリダクションOFF、シェーディング補正OFFで撮影したもので比較する。なお、画像の拡大・縮小・切り出しに伴う画質変化についてはお許しいただきたい。

OM-D E-M1 vs OM-D E-M1 Mark II その1 (明るめの空)

どちらもISO6400で撮影したものだが、明るめの空の場合、縮小画面では見分けがつきにくくどちらもノイズが無いように見える。読者にはどちらがどちらのデータかわかるだろうか?見た目で分かるのは画角が微妙に違うこと、オートホワイトバランスにした時のホワイトバランスが違うことぐらいである。比較のためにはもっと細かい部分を比べる必要がある。
共通データ ISO6400 F2.8 8秒 焦点距離 24mm

こちらが最初に示した画像で、ノイズが一番わかりやすいと思われる部分をトリミングして並べたものだ。先に示したISO6400の画像と同じEV値になるよう、ISO感度とシャッター速度を合わせて撮影したものになる。E-M1 Mark IIのほうが画素数が多いため、画像のサイズをE-M1に合わせてからトリミングしている。ぱっと見て違いがわかるだろうか?

まず見てわかるのは、画像の上の明るい部分ではどの写真でもほとんど差が感じられないということだ。つまり高感度で撮る場合でも明るい部分では、ノイズは目立たないということがわかる。ノイズを比べるのであれば画像をクリックしていただき、より詳細に画像をチェックしてほしい。なお、ノイズの量は周辺温度によって大きく変わる。例えば夏の暑い夜と冬の凍えるような寒さの中とでは、夏に撮影したときのほうがずっとノイズは多くなる。

長秒時ノイズの違い

それではどこで比べるのかというと、画像の下側の暗い部分で比較する。まずわかるのが、E-M1の長秒時ノイズリダクションOFFの画像では、E-M1 Mark IIと比べて、ISO1600やISO3200の時に長秒時OFFだと1ドットぐらいのぶつぶつしたノイズが見える。これが、長秒時ノイズである。E-M1 Mark IIの場合、長秒時ノイズリダクションOFFでもONでもほとんど差が無い。これは、E-M1 Mark IIでは長秒時ノイズが減っているということを示している。ただE-M1でも、長秒時ノイズリダクションがONになっている状態だとE-M1 Mark IIと比べてもあまり差が無く見える。つまり、E-M1では長秒時ノイズリダクションを適切にかけることが必要になってくる。お勧めはカメラ側で長秒時ノイズリダクションの有無を選択してくれる、長秒時ノイズリダクションAUTOだ。なお、このノイズは1ドット程度なので縮小画面ではよくわからない。違いを確認するには等倍表示以上に拡大して比べるとわかりやすい。

暗部の階調

次に注目するのは、暗部の階調が残っているかどうかだ。画像処理するとき、暗部のノイズを嫌うあまりノイズリダクションを効かせすぎて階調がなくなってしまっていないだろうか?また、レビューなどでざらっとしたノイズがあるかないかだけで判断してしまっている例を見ることもある。大事なのはノイズとディテールのバランスであり、ノイズを減らしつつディテールが残っていることが重要だ。それを確認するには、暗部のなだらかな階調がつぶれてのっぺりとしていないかが一つの目安となる。ISO感度が上がるにつれて、手前の山と奥の山の境界線、山と森・森と畑の境界線がわかりにくくなっていくのがわかるだろうか?筆者の判断では、手前の山と奥の山の境界線はE-M1ではISO3200でははっきりわかるが、ISO6400では崩れ気味、ISO12800ではわかりにくい。これが、E-M1 Mark IIだと、ISO6400やISO12800でも階調は残っておりE-M1より再現力が上がっていることがわかる。撮影条件によっても変わると思うが、E-M1のISO1600で撮影したものと、E-M1 Mark IIのISO1600で撮影したものを比較するとE-M1 Mark IIのほうが綺麗。E-M1のISO1600で撮影したものと、E-M1 Mark IIのISO3200で撮影したものを比較した場合、E-M1 Mark IIで撮影したもののほうがなめらかで、階調はほぼ同等。ISOが上がってもこの傾向はあまり変わらない。