なぜこの明るさで撮影するのかというと、星空のトーンをうまく描写できるヒストグラムだからである。また、撮影後の編集のためにも明るめに撮ることが有効だ。
ヒストグラムの山のピークが左から1/3になるように撮った例。左から1/3というのは厳密ではなく、だいたい左から1/3で良い。左から1/4~1/2の間で撮っていれば、あとは編集で何とかなる。
暗く撮影した写真の例。暗く撮影してしまうとこのように空のトーンは分かりにくく、天の川などの部分もよくわからなくなってしまう。撮影後、編集時に明るくする方向に編集しようとすると、ノイズとの戦いになることが多い。
ちょうどいい明るさで撮影した例。明るく撮影することにより、星空のトーンが分かりやすくなり、天の川もわかりやすくなる。この状態からなら、明るくする方向に編集する必要はほぼ無いので、ノイズ量が減ることはあっても増えることはない。
星空をどのように撮るのかは、その後どう見せるかによるところがあるので、好みの部分も大きい。ただし、撮影現場で液晶画面を見て「明るい」と感じても、ヒストグラムで確認するとそうでない場合が多い。そのため、必ず再生画面のヒストグラムを見て確認することを忘れないこと。
- 絞り値:F1.8
- シャッター速度:40秒
- 焦点距離:8mm
- ISO感度:3200
- 三脚・ソフトフィルター使用
- OM-D E-M1 Mark II
- M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
夜空や、星空をゆっくり味わって眺めると暗い中にもトーンがあることに気が付かないだろうか?その夜空のトーンを再現するためには、ヒストグラムを確認しながら撮影するのが早道だ。この写真も雪山の寒さに凍えながらヒストグラムを確認しながら撮影したものだ。
- 絞り値:F2.0
- シャッター速度:30秒
- 焦点距離:12mm
- ISO感度:3200
- 三脚・ソフトフィルター使用
- OM-D E-M1 Mark II
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
この撮影に使用している12mm F2.0は、星空を撮るのにとても便利なレンズだ。画角が使いやすくて、画質も良く、携帯性も素晴らしいので、必ずカメラザックの中に入れている。8mm F1.8が出るまでは、星空写真の大半はこのレンズで撮っていて、今でも手放せないレンズだ。
5.シャッター速度・F値・ISO感度の決め方
ヒストグラムの山のピークが左から1/3になるところで撮影すれば良いということが分かった。それでは、シャッター速度・F値・ISO感度をどのくらいで撮れば良いのだろうか?それは、撮影者がどのように撮影したいのかによる。まずは、星景写真と呼ばれる、三脚だけを使い、星と景色を一緒に止めて撮る場合のことを考えてみよう。撮影モードはMモード(マニュアルモード)を使おう。なぜならカメラ任せの明るさではなく、撮影者が明るさを決めて撮るからである。
星が止まっているように撮影するにはシャッター速度を速くすればよい。そのため、最初に決めるのはシャッター速度になる。広角レンズを使用し、12mmか14mmの焦点距離で星を止めたように撮影する場合、30秒より短いシャッター速度で撮ればよい。
シャッター速度を30秒にすると、カメラの判断したEV値は、+3.0を振り切ってしまう。しかし、暗いところではカメラの判断した露出は参考にならないので、無視すればよい。信じられるのは再生時のヒストグラムだけである。
次に、絞りだ。お勧めは開放、つまりそのレンズの持つ一番小さなF値を使おう。オリンパスのレンズであれば、開放からしっかり写るので、開放で使用するのがお勧めだ。絞ることもあるが、それは、撮影者が何らかの目的を持って撮影する時だ。
最後にISOを決めよう。これまで言ってきたとおり、これは再生時のヒストグラムの山のピーク(空の部分の明るさ)を参考にする。そのため、まずは撮ってみないと決められない。撮ってみて、ヒストグラムの山のピークが、左から1/3より左に寄っていると思ったら、暗いのでISOを高くする。左から1/3より右であれば、明るすぎるのでISOを低くする。とはいっても厳密なものではないので、大体左から1/3で十分だ。
ISOを下げきっても明るすぎる場合
もし、ISOをベース感度である、ISO200まで下げてもヒストグラムの山のピークが右に寄りすぎている場合は、まずはシャッター速度を短くしよう。ほとんどの場合、この対応だけで十分なはずだ。絞りでの調整は、どうしても必要な時だけにしたほうが良い。
- 絞り値:F2.8
- シャッター速度:4秒
- 焦点距離:12mm
- ISO感度:200
- 三脚使用
- OM-D E-M1 Mark II
- M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
都市部の撮影ではISO200にしても、シャッター速度を落とさなければならない場合が多い。また、街明かりの程度にもよるが白飛びを防ぐために、少し暗めに撮影して編集で調整することもある。
暗すぎる場合
このケースも、最近のカメラならほとんどないはずだ。天の川の見えるようなところであっても、ISOを3200~6400あたりまで上げれば、十分なはずだ。必要であればISO12800も使おう。編集によって後から明るくするより、撮影時に最適な明るさで撮影したほうが、ノイズも少なくなる。
- 絞り値:F2.0
- シャッター速度:30秒
- 焦点距離:14mm
- ISO感度:1600
- 三脚・ソフトフィルター使用
- E-5
- M.ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD
古いカメラ、例えばフォーサーズのE-5などの場合、ISOを上げすぎると、筋状のノイズが出てしまうことがある。この場合は、筋状のノイズが出ないISO感度で、シャッター速度を伸ばして対応しよう。もっと良いのは、F値の小さな明るいレンズを使うことだ。参考までに、筆者の場合フォーサーズのE-3以前のカメラはISO800まで、E-5前後のカメラはISO1600、E-P3世代のカメラはISO3200まで、OM-D以降のカメラ(E-P5なども含む)では、特にISOを気にせず使っている。もちろん発売時期の新しいカメラのほうが性能が良いので、この機会に買い替えるのもお勧めだ。
まとめ
広角レンズ(焦点距離12mmか14mm)を使って、三脚のみを使って撮影するときは、
- ① シャッター速度を決める。最長で30秒。
- ② 絞り値を決める。基本開放(一番小さなF値に設定する)。
- ③ ISOは再生画面のヒストグラムを見て決める。
- ④ 必要であれば、シャッター速度なども調整する。
と、いう手順になる。
試し撮りを始める参考設定
基本的には上記の手順なのであるが、月が出ていたり街中で撮るときなど空が明るい時は、高いISOで撮り始めると、調整に時間がかかる。逆に天の川の出ているような暗い空で、低いISOから撮り始めると、また調整に時間がかかる。調整時間短縮のための参考設定を下に示す。ただし、必ず撮影後再生画面のヒストグラムを見て、ISOを調整すること!あくまでここに示すのは参考であって、これで撮れば良いということでは無い。信じられるのはヒストグラムだけだ。
- とても明るい街中での撮り始め設定 ISO200 F2.0 2秒
- とても明るい街中での撮り始め設定 ISO200 F2.8 4秒
- とても明るい街中での撮り始め設定 ISO200 F3.5 6秒
- とても明るい街中での撮り始め設定 ISO200 F4.0 8秒
- 月が出ていたり、少しだけ暗いところでの撮り始め設定 ISO200 F2.0 8秒
- 月が出ていたり、少しだけ暗いところでの撮り始め設定 ISO200 F2.8 15秒
- 月が出ていたり、少しだけ暗いところでの撮り始め設定 ISO200 F3.5 20秒
- 月が出ていたり、少しだけ暗いところでの撮り始め設定 ISO200 F4.0 30秒
- 天の川が出ているところ撮り始め設定 ISO1600~3200 F2.0 30秒
- 天の川が出ているところ撮り始め設定 ISO3200~6400 F2.8 30秒
- 天の川が出ているところ撮り始め設定 ISO5000~10000 F3.5 30秒
6.カメラで設定しておきたい項目
星空撮影をする際は、撮影前に設定しておきたい項目がある。なお、筆者は星空はRAWで撮影し撮影後に現像するのが基本である。そのため、撮影時にJPEG撮って出しとして仕上げるための設定ではないことを最初に断っておく。
撮って出し向きの設定ではないと言っても、ヒストグラムを意識してホワイトバランスが適切であればそれなりに写る。この種子島で撮った写真も撮って出しだ。
スーパーコンパネで設定できる項目
ホワイトバランス AUTOか蛍光灯か白熱電球
撮影の時のホワイトバランスは、AUTOあるいは、蛍光灯をお勧めする。次点としては白熱電球だが、色温度が低いため本来赤みを帯びているはずの星(アンタレス、ベテルギウスなど)が白くなってしまうことに注意。地上の光害の影響で、緑被りしてしまうことが多いので太陽光などはお勧めしない。
仕上がり設定 NaturalかFlat
これもRAW現像すれば、あまり関係ないのだが、Vividだと色が強調されすぎると感じているので、NaturalかFlat辺りで撮っておくのが無難だ。
シャープネス -2
この設定は、ピント合わせのための設定だ。シャープネスを強くかけると、わずかながらピントのピークの範囲が広がって見えるため、本当のピントのピークを見分けにくくなる。そのため、一番弱い設定にしている。シャープネスによりシャープに見せるより、ピントをしっかり合わせることによりシャープに見せたい。また、シャープネスの基本として、シャープネスはかけない状態で編集し、最終的な出力に応じて最後に必要な強さでシャープネスをかけるのがお勧めだ。
階調 Normal
星空では、階調Normalが基本だ。高感度で階調AUTOを使うと、必要以上に暗部のノイズが強調されてしまうことがある。このため、撮影時には階調Normalにしておき、現像時に必要に応じて階調設定を切り替える。
ハイライト・シャドウ
これも、現像時に調整するので、撮影の時はデフォルトのハイライト±0、中間部±0、シャドウ±0の強調しない状態で見極めている。
画質モード RAWかRAW+JPEG
星空を撮影するときは、RAW画像から現像するのが基本だ。このため、RAWかRAW+JPEGが基本になる。なぜRAW現像にこだわるのかというと、光害のある夜空の場合、いろんな光が混じっていることが多いこと、光害がある状況だと、天の川などのコントラストが低く、強調処理を施さないと見栄えのする星空にならないことが多いからだ。
手振れ補正 Off
撮影時には、忘れずにOffにしよう。焦点距離の長いレンズを使う場合には、ピント合わせの時だけ手振れ補正をIS-1にするのもお勧めだ。