星空を一番撮りやすいカメラ OM-D E-M1 Mark II

3.ピント合わせのコツ

星撮りで難しいことの一つは、ピントだ。条件によっては、AF(オートフォーカス)が効くこともあるが、残念ながら正確に合うとは限らない。このため、MF(マニュアルフォーカス)を使い拡大してピント合わせを行うのが基本になる。

とても暗い星空の場合、ピント合わせは難しい。そのため構図合わせをする前に、地上の明かりや明るい星など、しっかりと視認できる対象を見つけてピントを追い込む。ピントはピントリングやズームリングを触らなければ、構図を変えても変わらないので、まずピントをしっかり合わせてから構図合わせを行えばよい。レンズによって違うのだが、ここで使用しているM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 PROの場合、地上の光あるいは、明るい星を画面端に配置して、その星の形が縦から横に変形するポイントでピント合わせを行うと良い。

ライブビューブースト2であれば、多少のピンボケ状態でも星が見える。これを使ってまずは素早くざっくりとピント合わせを行なう。そのあと星を拡大して厳密なピント合わせをすれば、素早く正確なピント合わせが可能になる。コツとしては、厳密なピントの追い込みを行なう直前に、ライブビューブースト2を解除することだ。整理すると次の手順になる。

ライブビューブースト2での撮影手順

  • ① BULB/TIMEへの切り替えを行ないライブビューブースト2の表示に切り替える。
  • ② ざっくりとしたピント合わせを行ない、拡大枠を明るい星に合わせる。
  • ③ 拡大前に、シャッター速度をBULB/TIMEから60秒に切り替える。
  •  これでライブビューブースト2がOffになる。
  • ④ 厳密なピントの追い込みを行なう。
  • ⑤ 拡大を解除する。

このようにする理由は、ライブビューブースト2ではフレームレートを落として表示することで、明るく表示しているためだ。いうなればスローシャッターである。そのため、ピントリングの操作がワンテンポ遅れて表示に反映される。このため、拡大してからのピントの追い込みはライブビューブースト2をOffにした方がやりやすい。

ピントを追い込むときは、最大倍率である14倍まで拡大することが基本。

さらに、ピント合わせを行うときにカメラのシャープネス設定を「-2」、高感度ノイズリダクションを「Off」にすると、さらにピントを合わせやすくなる。

明るい星空の場合

ある程度明るい空や、街明かりなどがある場合には、ライブビューブースト2を使わずともピント合わせができる。このときに明るいレンズや高性能なレンズを使うとピントも合わせやすい。

素早いピント合わせのコツ

レンズの距離指標を使ったり、レンズの機能であるスナップショットフォーカス、マニュアルフォーカスクラッチを使うことで、ライブビューブースト2を使わずに、無限遠付近にピントを合わせることも可能である。慣れればこちらの方が切り替えが不要な分速い。ただし、厳密なピントの追い込みには、拡大してのピント合わせは必須である。ピント合わせに適切な星を探すための手段として、ライブビューブースト2が使えることも知っておくと良い。

12mm F2.0と、17mm F1.8のスナップショットフォーカス機能にだけは注意が必要だ。素早くピントを合わせるのにはスナップショットフォーカスは最強。だがしかし、ピントのステップが荒いため厳密なピントの追い込みには向いていない。このため、ざっくりとピントを合わせた後はスナップショットフォーカス機能を解除して、通常のMFでピント合わせすることをお勧めする。あくまで、スナップショット用のフォーカスなのだ。なお、PROレンズのマニュアルフォーカスクラッチでは問題無い。

12mm F2.0と、17mm F1.8レンズ

ピントをどこに合わせるか?は、何をはっきり見せたいか?である。ここでは星をくっきり見せることにこだわったので星にピントを合わせている。また、絞り値とISO感度の組み合わせも星の軌跡をどう描写したいかで決めている。オリンパスのレンズは像面湾曲なども少なく、周辺までくっきりと写るので、しっかりピントを合わせればそれに答えてくれる安心感がある。

ソフトフィルターを付けて撮影すると、星より街明かりのほうが目立ってしまうこともある。このときは、富士と、五重塔と富士吉田の街の明かりのきらびやかさを出したくて、ソフトフィルターを付けて撮影した。このときもピントは星だ。木や植物は揺れるので、ピントをぴったり合わせても無駄になることが多い。

よく聞かれるのが、ソフトフィルターを使うときのピント合わせのことだ。ソフトフィルターを付ける前にピント合わせを行うべきか?ソフトフィルターを付けた後にピント合わせをするのか?
これに関しては、ソフトフィルターを付けてからピント合わせを行うべきだと考えている。理由としては、ソフトフィルターを付ける前にピント合わせを行った場合、ソフトフィルターを付ける動作でピントリングが動いてしまった場合無力であること。ピントを合わせなおすたびに、ソフトフィルターを付け外しするというのは、あまり実用的ではないためである。

購入時にはレンズリセット設定がOnになっている。この設定がOnになっていると、カメラがスリープに入ったときや電源を切ったときに、ピント位置がリセットされてしまう。続けて撮るなら再度ピントの合わせ直しが必要になる。レンズリセットは忘れずにOffに設定しておきたい。

星空を撮影するときには手ぶれ補正をOffにするのがセオリーだ。筆者も星空を撮影する段階では手ぶれ補正をOffにする。ただし、ピント合わせの時は例外だ。手ぶれ補正をOnにしておいたほうが、拡大表示でピントリングを触ったときの振動が抑えられる。広角レンズであれば、手ぶれ補正OnでもOffでもあまり気にならないが、標準以上・望遠レンズを使用してピント合わせをするときには、手ぶれ補正をOnにしておいたほうがやりやすい。ただし、撮影時には必ずOffに切り替えること。

4.露出(星空の明るさ・適正露出)の決め方

構図・ピントときて、次に難しいのはどのくらいの明るさに撮ればいいのか?(適正露出)ということである。このパートではこのことについて学んでいこう。
星空撮影でよくあるのが、現場で液晶画面で見てちょうどいい明るさだと思ったのに、家のパソコンで見ると暗いということである。皆様も経験があるのではないだろうか?

こんなことが起きてしまうのは、液晶画面で明るさを確認しているからである。液晶画面はバックライトで照らされている。星空撮影など非常に暗いところで撮影する場合、液晶の明るさは目に痛いくらいだ。

星空撮影の前に、液晶の明るさの設定は最低の輝度である「-7」か「-6」に設定しておくのがお勧めだ。わずかな差だが、ピント合わせの時は明るさ設定を「-6」にしておいた方がやりやすい。
ただし、翌朝には液晶の明るさ設定を戻しておくことをお忘れなく。これを忘れると、液晶の暗さに騙されて写真を明るく撮ってしまう。

なお、BULB/TIMEは専用の液晶輝度設定を持っている。このため、通常の星空のピント合わせに使うときは、輝度-6で、BULB/TIME時は、輝度-7などという設定も可能。

周囲の暗さによっても、液晶画面の明るさ設定によっても、液晶画面で確認した写真の明るさは違って見える。つまりは、液晶画面での見た目は信用してはいけないのである。
では何を信用すればいいのか?再生画面のヒストグラムの表示である。

ヒストグラム

ヒストグラムを「見たことも無い」という人も、中にはいるだろう。しかし、綺麗な星空を撮るためには必須の機能なので、この機会に覚えて欲しい。撮影した写真を再生することは、皆さんもできると思う。再生ボタンを押すだけのことだ。そのまま、「INFO」ボタンを何度か押すと、ヒストグラム表示に切り替わる。

実は再生時のヒストグラム表示には2種類ある。4つ表示される画面と、1つだけ表示される画面だ。ヒストグラムが4つ表示される画面では、左上の白い山が表示されているヒストグラムを見れば良い。

ヒストグラムは、画面内の明るさの分布を表している。分布というと難しそうだが、構えないでほしい。まずは、暗いデータ。このようにヒストグラムに表示される山は、左側に寄る。

次に、明るいデータ。このようにヒストグラムに表示される山は、右側に寄る。つまり、ヒストグラムの左側に山があると、暗いデータ。ヒストグラムの右側に山があると、明るいデータ。ということが分かる。

星空の場合どのくらいの明るさで撮影すればいいかというと、星空の明るさがヒストグラムの左から1/3辺りになるように撮るのがお勧めだ。大体の場合は画面の大部分を星空が占めるので、ヒストグラムの山のピークの部分が、空の明るさを示している。つまり、ヒストグラムに表示される山のピークが、左から1/3のところになるように撮影すればよい。