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海野和男 ボルネオ撮影記
TG-4を持ってボルネオへ

使用カメラ:STYLUS TG-4 Tough

自然写真家
海野和男

自然写真家、海野和男氏がSTYLUS TG-4 Toughを持ってボルネオへの旅に出た。この地域は、ここ数十年で開発が進み、熱帯雨林の減少が心配されている地域でもある。

途中、道に迷いながらも貴重な生態系の撮影に成功した数々の写真を、海野氏の語りとともにご覧ください。

STYLUS TG-4 Tough

STYLUS TG-4 Tough

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TG-4を持ってボルネオへ行ってみようと思った。

ボルネオは世界で3番目に大きな島だという。面積は日本の約2倍もある。島の南側はインドネシアで、北側はマレーシア、ブルネイという小さな国もある。今回訪れたのは北東部のマレーシア領サバ州。東南アジアの最高峰キナバル山があるエリアだ。

35年ほど前に、進化論の提唱者であるアルフレッド・ラッセル・ウォレスの足跡を訪ねてマレーシアからニューギニアとの南にあるアル島まで旅をしたことがある。ウォレスは1854年から1862年にかけてマレーシアとインドネシアを旅し、多くの昆虫や動物を採集した。バリ島とロンボク島の間のロンボク海峡を境に東側と西側で動物相が大きく異なることを見つけた。後にウォレス線と名付けられたこの境界線は生物の分布で、東洋区とオーストラリア区を分ける境界線になっている。

ボルネオは東洋区で、マレー半島やジャワ、スマトラと共に、氷河期にはスンダランドと呼ばれる大きな大陸であったと考えられている。ウォレスに憧れていたこともあり、スンダランド地域はぼくの一番メインのフィールドになった。ボルネオも何度か訪れ、キナバル山も登ったことがあるが、最近はあまり行っていなかった。

TG-4を持って、何処かへ行きたい、そうだ久し振りにボルネオへ行ってみようと思った。最後の秘境とも呼ばれ、今なお熱帯雨林が色濃く残るボルネオだが、ここ数十年で、開発が進み、熱帯雨林の減少が心配されている地域でもある。そんな現状も見てみたいなと思ったからだ。

地図

TG-4はいつもぼくのポケットに入っていた。

STYLUS TG-4 Tough

STYLUS TG-4 Tough

タフシリーズ4代目となるカメラSTYLUS TG-4 Tough。タフシリーズはTG-2でマクロ機能が充実して以来、手放せないカメラになっている。この2年間は、いつでもポケットに入れているカメラはタフシリーズだ。前機種のTG-3がとても気に入ったので、新しいTG-4を使うのが楽しみだった。防塵防水でタフなカメラは旅行にぴったりだ。何しろ一台で風景から、スナップ、数ミリの虫まで対応できるカメラというのはタフシリーズしかないのである。自然観察をしている人には一番お奨めのカメラだ。実際、TG-3を使ってから、自然観察が楽しくて仕方がないという方が多い。特に今までカメラにあまり興味がなく、スマホでいいやと思っていた人たちが前機種のTG-3を使って以来、写真が楽しくなり、腕もめきめき上達した人を何人も知っている。

さてTG-4を手にして見ると、大きさも見かけもTG-3とほとんど変わらない。TG-3がとても良くできたカメラだったから当然かもしれない。防水と、暗いところで撮影できるF2.0の明るいレンズ、顕微鏡モードの超マクロがTG-3の売りであったが、TG-4はその優れた機能はそのままに、さらに進化していた。まずRAWが撮れるようになったのはたいへん嬉しい。このシリーズはOM-Dなどとも併用している人も多く、より高画質な写真を撮りたいという要望に応えてくれた。顕微鏡モードで、従来AFターゲットが中心に固定されていたのが、移動ができるようになったのも嬉しいことだ。

一番嬉しかったのは顕微鏡モードの使い勝手だ。従来は1〜10cmまでしかピントが合わなかったのが30cmまで広がった。花やチョウなど、ちょっと大きめのマクロ撮影では、従来はいちいち普通のモードに切り替えていたのが、しなくてすむようになった。顕微鏡モードのまま、大型のチョウのポートレートから、顔のアップまで自在に撮れるのはとても便利だ。もう一つ、フラッシュにスローシンクロモードが加わった。夕方や朝の薄暗い時にフラッシュを使うと、背景が真っ黒になってしまうことがあったが、スローシンクロを使えば問題ない。そんな機能を使いながら、食事する時もジャングルで撮影する時もTG-4はいつもぼくのポケットに入っていた。

車を止めて、キナバル山の雄姿を撮影。

ボルネオへは成田からコタキナバル行きの直行便に乗った。まっすぐに南下すればボルネオに着くから、なんと6時間かからずに着いたのにはびっくりした。コタキナバルの空港は小さな空港で、レンタカー屋が夜の8時には閉まってしまうので、コタキナバルに1泊。翌朝8時にレンタカー屋が開くのを待って、予約してあったレンタカーを受け取りに空港へ。コタキナバルの町から空港は5kmほどだから、空港へ車をとりに行くのも苦にならない。借りた車は4WDのフォードレインジャーというトラック。完全な新車で70kmしか走っていなかった。傷付けたら心配だから、保険をフルに入れて、壊してもお金をまったく払わなくて良いようにした。初めて運転する大型の車だから心配だったが、運転しやすくて安心した。

車を受け取ったら、一路キナバル国立公園を目指す。天気は上々だ。途中、車を止めてキナバル山の雄姿を撮影。キナバル国立公園に入る。入場料は外国人が15リンギ、約500円である。この切符で50kmほど離れたところにある同じキナバル国立公園のポーリン温泉エリアにも入場できる。公園内は車道が奥まで伸びているので、まずは一番奥まで行ってみる。キナバル山のハイキングを楽しむための車が、たくさん止めてあったので、戻ってゲート近くのトレッキングコースに行くことにした。

キナバル山

顕微鏡モード、マクロ好きには素晴らしい機能だ。

渓流があったので、覗いてみると、ハゼみたいな小さな魚がたくさんいる。石に生えている苔などを食べているようだ。TG-4は水に入れても大丈夫だから、この魚の写真も撮ってみることにした。手を水の中に入れたら、魚が登ってきて、皮膚を突っつく。角質を食べてくれるドクターフイッシュにも似た性格の魚だ。

半水面で渓流を撮影

水の中にいた魚も撮った

けれど天気はいいのにお目当てのチョウはさっぱり現れない。聞いてみると、今年は2月3月とほとんど雨が降っていないそうだ。2〜3月はボルネオでは雨の多い季節のはずだ。このところ地球は病んでいるなーと感じることが多い。昨年のマレー半島ではやはり1〜3月に雨がほとんど降らずに、山火事が発生したり、水不足だったりした。それが今年のマレー半島では1月は大雨で、洪水が起きたりしたという。木の切り過ぎや、二酸化炭素の増大で、温暖化などの異常気象が進んでいるなと感じる。チョウがいないので、TG-4で蘭の花などを撮影したりして初日は終了。2日目の朝もまずはホテルの部屋の前にいた小さなコオロギのような虫や庭の花をTG-4を使って試し撮りをする。そうだ1cmから30cmまで寄れるTG-4の顕微鏡モードで、広角と望遠を使い、キスゲのような花を撮ってみよう。顕微鏡モードだけで全体像から雄しべまで撮れる。マクロ好きには素晴らしい機能だ。被写界深度が深い小型撮像素子の特徴を使えば、マクロ初心者でもかなりの写真が撮れるから、マクロは難しいとあきらめていた人は是非試して欲しい。

ホテルの部屋の前にいた小さなコオロギのような虫

望遠の顕微鏡モードで30cmから大きな花の全体像を撮る

望遠の顕微鏡モードで20cmまで近寄る

望遠の顕微鏡モードで10cmまで近寄る

望遠の顕微鏡モードで1cmまで近寄って、さらに撮影

広角側の顕微鏡モードで30cmから大きな花の全体像を

同じ位置から望遠側

10cmまで近寄る

さらに1cm近くまで寄って雄しべを撮影

今回のフォトグラファー

海野和男(うんの かずお)

東京農工大学の日高敏隆研究室で昆虫行動学を学ぶ。アジアやアメリカの熱帯雨林地域で昆虫の擬態を長年撮影。1990年から長野県小諸市にアトリエを構え身近な自然を記録する。著書「昆虫の擬態(平凡社)」は1994年日本写真協会年度賞受賞。2015年にその続編「自然のだまし絵 昆虫の擬態(誠文堂新光社)」を発刊。
日本自然科学写真協会会長

海野和男のデジタル昆虫記 http://www.goo.ne.jp/green/life/unno/
小諸日記 http://www.goo.ne.jp/green/life/unno/diary/