OM-D E-M1Xで撮る風景写真

マイクロフォーサーズシステムは日々進化を遂げ、デジタル写真の分野では押しも押されぬ地位を獲得している。とくに風景写真においては、手持ち撮影をメインスタイルとするアクティブな表現者層から強い支持を受けている。立役者はOM-D E-M1 Mark II。強力な手振れ補正機構に加えて三脚ハイレゾ機能を持ち、手持ち撮影でも三脚撮影でも高画質表現を可能にした。
そして2019年春、新たにOM-D E-M1Xがラインアップされる。これは縦位置グリップを一体成型した強靭なボディーに、手持ちハイレゾやライブNDといった新機能を追加した「E-M1」シリーズの新機軸カメラだ。表現に新たな風を巻き起こすであろうOM-D E-M1Xと、不動の地位を獲得したE-M1 Mark IIの両機によって、風景写真はさらなる未来へと向かう。(写真家 萩原史郎)

OM-D E-M1 Mark IIが与えてくれた表現世界

小型軽量システムの恩恵

言うまでもなくマイクロフォーサーズはミラー構造を持たないため、ボディーのみならずレンズも含めたシステム全体が小型軽量化する。このことは実は非常に大きなメリットなのだが、カメラやレンズは大きいほうが良いという、神話や都市伝説にも似た感覚に囚われて、知ろうとしない向きが案外多い。小型軽量のメリット、それはどこへでも行けること、その先の風景を見に行こうという気持ちにさせてくれること、安全に撮影地に行き集中力をもって撮影し、そして安全に帰ることができること、これに尽きる。

筆者も含め写真を楽しむ層が高齢化する現代において忘れてはならないことは、安全が確保しやすいカメラシステムを使ってほしいということだ。そのためにはマイクロフォーサーズシステムはベストチョイスである。本格的に風景写真が撮れるOM-D E-M1 Mark IIを選び、2年以上使い続けて得た実感と願いである。

システムが小さいので小型のザックをチョイスできる。そのうえ軽いので、さらに先へ先へと歩が進む。その先の風景を見たいという気持ちを身体が裏切らない、それがマイクロフォーサーズシステムである。

絶対三脚思考からの解放

OM-D E-M1 Mark IIには絶えずM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(以下12-100mm)が装着されている。この組み合わせならシャッタースピードにして約6.5段分の防振効果が得られる。筆者の感覚では約1/4秒までなら、プロの目で見たとき「ブレ度ゼロ」の写真が作れる。これは何を意味するかと言えば、場合によっては三脚を持たずに撮影地へ入れるということ。もっと言えば滝や渓流の撮影にも挑めるということである。滝や渓流は時に険しい山道を分け入ってようやくの思いで撮影が叶うわけだが、そんな場所へ三脚を持って行くだけでも苦行を強いられる。しかし両手がフリーの状態ならどれだけ楽で安全なことか。そんな撮影行がOM-D E-M1 Mark IIと12-100mmの組み合わせなら可能になるのである。

風景写真は三脚が必須であるという絶対三脚思考から解放されると、前述のほかにもメリットを享受できる。手持ち撮影ならどんなアングルにも対応しやすい。風景の劇的変化にも即応できる。三脚禁止の場所でも撮影ができ、また三脚によって通路やスペースをふさがないので周囲への配慮もできるなど、メリットは決して小さくないのである。

筆者が三脚中心ではなく、手持ち撮影を中心に風景を撮るようになったきっかけを与えてくれたのは、OM-D E-M1 Mark IIと12-100mmのコンビを使うようになったことであることを付け加えておきたいと思う。

不安定な岩の上からの手持ち撮影。シャッタースピードは1/4秒だが、ブレは微塵も見られない。水流はここまでブレてくれれば、スローシャッター効果は出ていると言ってよい。

モミジの樹の懐に潜り込んでの撮影。三脚を立てるのは少々面倒だし難しい場面だが、手持ち撮影なら難なく狙いのアングルをとることができる。

上のモミジのカットを撮影したのち、歩道を歩いていたら猿の群れに遭遇。近距離で樹の実を食べ始めたのでとっさにレンズを交換し手持ちで撮影をした。

ダストリダクション&防塵防滴の信頼性

今では当たり前になっているため忘れかかっているかもしれないが、オリンパス機にはダストリダクションというゴミ取り機能が搭載されている。センサー面に付着したゴミを超音波振動で振るい落とす機能だが、この機能があるおかげでアウトドアでのレンズ交換も安心して行える。風景写真にはなくてはならない機能で、とくにオリンパスのゴミ取り機能は優秀で、これまでの長い経験の中でゴミが画像に映りこんだのはたったの2回。その時も電源のオンオフ操作だけでゴミは除去できた。

もう1つ、忘れてならないのは強力な防塵・防滴構造。激しい雨の中の撮影でも、傘をささずとも撮影を行い、なんの不具合も起きない。これも風景写真によっては極めて重要な機能だが、案外軽視されているかもしれないので、あらためてここに記したいと思う。

小雨が降る中、この満開の桜と霧という絶好のシチュエーションをものにするべく、アングルを変え、構図を変え、何枚もシャッターを切ったが、その間、傘はささず手持ちで撮り進めた。おかげでたくさんの良作を得ることができた。