OM-D E-M1Xで撮る風景写真

OM-D E-M1Xの登場

持ち運ぶときの携帯性や撮影するときの軽快性にとことんこだわった歴史的名機OM-D E-M1 Mark II。一方で、ホールディング性を極限まで高め、徹底的に操作性を重視したモデルも欲しいと思っていた昨今、それに応えてくれるボディーが出現することになった。その名はOM-D E-M1X。OM-D E-M1 Mark IIの後継機種ではなく、新機軸として登場するカメラだ。つまりOM-D E-M1 Mark IIとOM-D E-M1Xは用途によって使い分けができるということでもある。

OM-D E-M1Xの特徴:ボディーデザイン

では、OM-D E-M1Xとはどのようなカメラなのか、ご紹介しよう。先に述べたように、OM-D E-M1Xはバッテリーグリップが一体成型となったタイプで、より強靭なボディー構造を得た。OM-D E-M1 Mark IIではバッテリーグリップは後装着式だったが、本機は一体成型式なので剛性に加えて、防塵・防滴の面でも信頼性はさらに厚くなったと言ってよいだろう。加えて縦位置撮影時のホールディング性と操作性を最高レベルで実現したことも指摘したい。小指もしっかりとグリップにかかり、手持ち撮影時の安定性は一段と増している。縦位置へ移行したときも横位置時と同一のグリップ感覚と操作感覚があり、違和感はない。操作系の大きなトピックとしては、ボディー背面にAF操作用のマルチセレクターが配備されたこと。これにより測距点の移動が格段にしやすくなった。

裏側からみられる滝。頭上からは水滴が大雨のように降りかかる状況での撮影だが、手持ちで撮影している。もちろん、撮影中も撮影後もなんのトラブルもなし。安心と信頼のOM-D E-M1Xである。

上段写真の撮影状況

目まぐるしく変化する状況に対応するため、撮影ポジションを変化させ、構図を作り直しての撮影。測距点も当然、撮影の度に変えるが、マルチセレクターを使えば操作はらくらく完了する。

OM-D E-M1Xの特徴:機能

OM-D E-M1Xが持つ風景写真で効く三大神機能

  • 1. 手持ちハイレゾ
  • 2. ライブND機能
  • 3. 7.5段の手ブレ補正機能

機能面での進化も著しい。筆者は風景写真家なので、本稿では風景写真に効果絶大の機能をピックアップしてみたい。その機能は3つ。筆者は「三大神機能」などと呼んでいるが(笑)、そのうちの1つ目は手持ちハイレゾ機能だ。OM-D E-M1 Mark IIに搭載されている50Mハイレゾは三脚使用が前提だが、OM-D E-M1Xでは手持ちによるハイレゾ撮影が可能になる。2つ目はライブND機能。これはNDフィルター効果をボディー内で実現するもので、フィルターの装着が必要なくなる。3つ目は手振れ補正効果の強化。ボディー単体では約7段分だが、12-100mmとの併用なら約7.5段分となる。驚くべき数値ではないか。この3つの機能を使いこなすだけでも、風景表現は新たな未来が広がるはずである。

OM-D E-M1Xが持つ風景写真で効く三大神機能

1. 手持ちハイレゾ

夢の世界で描いていた機能が新搭載された。手持ちハイレゾである。三脚前提の50Mハイレゾは、0.5ピクセル単位でセンサーを動かしながら8回露光した画像から約5000万画素相当の画像を生成する機能だが、手持ちハイレゾは、16回の連写で発生した位置ずれを利用することで約5000万画素相当の画像を生成するものだ。体感としては三脚ハイレゾよりも少々処理時間は長いが、1回の撮影を終え、次の構図を考えているうちに処理が終わるといった感覚だ。解像はもちろん通常撮影の約2000万画素をはるかに超え、細部の調子がくっきりと見えてくる。三脚に頼らずとも、手持ち撮影で約5000万画素クラスの高解像データが手に入ることは計り知れないメリットがある。三脚が使えない場所や三脚を持たずに行動したいとき、移動中に素早く撮りたいときに真価を発揮する。ただ、被写体が風で動いたり、流れる水が対象である場合は、解像低下が発生することは承知しておいてほしい。

言わずもがなのことだが、当然三脚ハイレゾも搭載されている。つまり、じっくり型の三脚ハイレゾと速攻型の手持ちハイレゾを撮影スタイルや状況に合わせて使い分けることができるということになる。

北海道・銀泉台での撮影。なんの変哲もない風景のように見えるが、画像中央あたりにナキウサギの小さな姿が写っている。俊敏な動きを見せるが、いったん止まるとしばらくじっとしている。その瞬間を捉えたもので、手持ち撮影ができるハイレゾだからこそ捉えることができたと言ってよいだろう。

初秋の北海道・層雲峡の紅葉である。手持ちハイレゾには絶好の無風の条件での撮影なので、葉の1枚1枚が見事に解像している。少しずつ歩を進めながら秋の層雲峡を撮ったうちの1枚である。

小さな沼の足元に目をやると落ち葉の彩りを発見。水は完全に静止している状態なので、手持ちハイレゾに挑戦してみたが、結果は見ての通り。リアルな葉脈の質感や表面張力が浮き上がった水の様子など、細密に描けている。

早朝に霧が立ち込めることで有名な新潟の棚田での撮影。霧の動きが止まったように見えた瞬間にシャッターを切っている。手持ちハイレゾは特に遠景の風景に対して効果を発揮しやすい。

2. ライブND機能

風景撮影ではスローシャッター効果を使いたい場面は数知れないが、そんなスローシャッター効果をNDフィルターを使うことなしに得られる機能がライブNDである。かんたんな操作でND2(1段分)から最大ND32(5段分)の減光効果が選べる。しかもファインダーや背面モニターでは選んだNDの効果を撮影前にライブ映像として確認(LVシミュレーション)することができるのだ。これまでは減光効果の異なるNDフィルターを装着しては撮影し、効果が狙いと違えば別のNDフィルターに交換して撮影をすることを繰り返していたが、そんな無駄な時間が劇的に短縮できる。そればかりかNDフィルターの着け外しがないので撮影も素早く行える。さらにM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PROのように、レンズ前面にフィルターが装着できないレンズでもNDフィルター効果が得られるようになる。神機能と呼びたくなる理由もお分かりいただけると思う。

ND32:1秒

ND16:1/2秒

ND8:1/4秒

ND4:1/8秒

ND2:1/15秒

曇天の明るい日中に、ND32からND2までの効果を試した。これだけの効果の違いが得られれば十分と言える。必要があれば、これにPLフィルターを装着して使えば、水の表現は事足りる。

紅葉の黄色と空の青色を映した渓流の淵を表現した。ND32を使うことで4秒のスローシャッター効果となったため、水面はまるで静止したかのように表現できている。拡大しても不自然な描写はない。