OM-D E-M1 Mark IIと作る!鉄道写真新時代

「バルブの見える化」実現!

現行のOM-Dの3機種にはすべて搭載されている、夜景撮影時には他機材に圧倒的に差をつける「ライブ」関連3機能について述べたい。

デジタル化された鉄道写真の現場でも、もっともフィルム時代から変わっていないもの。それはバルブ撮影だろう。ノイズリダクションのためのブラックアウトタイムが撮影時分と同じだけ存在するという点では、フィルム時代よりたちが悪いといえるかも知れない。

そんな悩みを一挙に吹き飛ばすのが、この「バルブの途中経過をモニターで表示する」ライブバルブ機能だ。モニターで露光状態をチェックしながら「もうこの辺でOKかな」と思ったタイミングで露光を終了させればOK。露光不足やオーバーを一気に消滅させるばかりか、ブレやピンボケも早いタイミングでリカバリーが可能だ。これはもう「バルブ革命」と呼んでいい画期的な機能だ。

さらにライブコンポジット(比較明合成)機能は、適正露出を保ったまま明度に差が発生した部分だけに露光をプラスしていくことを可能にする。分りやすく例えると、通常のバルブ撮影がポンと一押しで決まってしまう「版画」だとすると、このライブコンポジット機能での撮影は、版で一回押絵を作ったあとに、上から足りないところ(光)を画面を見ながら追加していく「油絵」だと思ってもらうと分ってもらいやすいかもしれない。または「ハムがおいしい」と評判のサンドイッチ店で、皆は「1サンドイッチに1ハム」を律儀に守っている中、後からやってきたOM-Dだけ他社機が唖然として見つめる中、一人だけ1サンドイッチに次から次へとハムばかり足していっている…のような感じだ。

作例は、筆者の自宅近くの公園にある静態保存の都電車両。背景と車両のバランスを、カメラの出た目の露出に少しマイナス(これは個人の好みによるが)補正をしたら、あとは手にストロボを持って、少しずつ電車を照らしていく。正面はやや弱く光量を控えめに絞り、背後に回って足回り、ビューゲル(集電装置)にはフル光量で。背後の木の陰からも数発焚き、あとは再び背後から車内や天井方向に、輪郭を浮き立たせる為に何発か焚く。「舞台の上に立つ名優・都電」をイメージしながら。

撮影データをみてほしい。全体の露光は30秒で終了し、あとの23回は車両のみストロボで「油絵を塗っていった」回数だ。普通に30×24回=720秒露光したとしたら、もう完全な露光オーバーになっている。ときどきモニターに表示された現在状況を見て、「もう少しあの辺照らしておこうか」などと判断する。

今まで被写体と思って見たことのない静態保存車両も、OM-Dなら素敵なモデルになってくれることだろう。車両と語り合うように、じっくりと対面して自分の思い通りのライティングを試してみよう。

人々が寝静まった夜、公園の電車は人知れず走り出す…。そんなイメージを脳裏に描きながら、ストロボを持って照らして回る。「OM-D」以前と「OM-D」以降で、あなたの夜の撮影はきっと変わる。

ライブバルブで表示間隔を1秒にセット。露光チェックもさることながら、花火が順にパッパッと咲いていくモニターを眺めるのはとても楽しい。
※作例はE-M5 Mark IIで撮影、ライブコンポジット機能は同機種にも搭載されております

車両が自らがコントロールできない光源に照らされている中で、花火を背景にしたい…。普通なら露光オーバー必至な環境でも、OM-Dでは何も恐れることはない。
※作例はE-M5 Mark IIで撮影、ライブコンポジット機能は同機種にも搭載されております

満天の星空はライブコンポジットの本領発揮だ。画像処理ソフトではシャッターをその都度切らねばならず、途中経過もわからない。何よりノイズリダクションを切らないと星の軌跡が千切れてしまう。一眼画質できっちりと記録する、OM-Dならではの夜の楽しみ。