Photo Recipe(フォトレシピ)

OM-3で野鳥撮影を始めよう!

撮影・解説 : 川辺 洪
Official Home Page:BirdingHolic
2025年10月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
2025年3月、「OM-3」というミラーレス一眼の新たなボディが発売されました。有効画素数は2037万画素、ボディ単体での重量はわずか496gと非常に軽量です。外観デザインは、往年のフィルム一眼レフカメラ「OM-1」を意識したクラシックなスタイルで、心をくすぐられる方も少なくないでしょう。
スペックを見てみると、センサーや画像エンジン、最大常用ISO感度、AF性能、動画機能など、多くの点でフラッグシップモデル「OM-1 Mark II」と共通しています。それでいて、価格は比較的リーズナブルに設定されています。今回このOM-3ボディを実際にフィールドへ持ち出し、風景写真やスナップ撮影とは違った、バードウォッチングのさまざまな環境で使用してみました。
夏の貯水池や河川敷で
OM-3に搭載された機能の中でも注目したいのが、AI被写体認識AF(オートフォーカス)の「鳥モード」、高速連写が可能な「SH2モード」、そしてシャッターボタンを押した瞬間からさかのぼって記録できる「プロキャプチャーモード」です。これらの性能を確かめるには、難易度の高い飛翔シーンの撮影に挑戦するのが最適だと考えました。私自身、普段はあまり飛翔写真を撮影しないため得意とはいえませんが、今回は予想以上に良好な結果が得られ、正直驚かされました。
撮影時のおすすめ設定はマニュアル(M)モード+ISOオートです。絞り値を固定したまま、シャッタースピードや露出をダイヤルで瞬時に調整できるため、変化の激しい状況でもスムーズに対応できます。また、水準器表示をオンにしておくと、常に水平を保ちやすく便利です。オートフォーカスは、前述のとおりAI被写体認識AFの「鳥モード」に設定しておくと安心です。
1. ヨシゴイ

ヨシゴイが飛び立つ瞬間を、プロキャプチャーモードを活用して狙いました。この機能は、被写体が飛び立った後でシャッターボタンを押し込むだけで、誰でも簡単に決定的な瞬間を捉えることができる画期的なものです。OM-3はフラッグシップ機とほぼ同等の連写性能を備えており、プロキャプチャーモード SH2では最大50コマ/秒で、AF追従にて連写撮影する事が可能です。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 PRO+ MC-14
840mm相当*, Mモード, 1/2000秒, F6.3, ISO 1600
2. バン

親子の関係性が伝わってくる、微笑ましいひとときに出会いました。ヨシゴイを撮影していたところ、抽水植物の陰からバンの親子が姿を現したのです。ヨシゴイの飛翔シーンを想定してシャッタースピードを高めに設定していましたが、ダイヤル操作によりファインダーを目視することなく、瞬時に低速側へ調整することができました。こうした素早い設定変更が可能なのも、OM-3の操作性の大きな魅力です。このような場面では、撮影に夢中になるあまり、親子の行動を妨げたり分断したりしないよう、十分な配慮が必要です。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 PRO
600mm相当*, Aモード, 1/250秒, F4.0, ISO 320
3. イワツバメ

川面の上を行き交うイワツバメを、橋の上から撮影した一枚です。被写体との距離が近いため、単焦点の超望遠レンズではとてもフレーミングできません。こうした状況では、画角を柔軟に調整できるズームレンズが有効です。連写モードは、高速連写のSH2を使用しました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
300mm相当*, Mモード, 1/3200秒, F5.7, ISO 3200

OM-3は、撮像センサー全面にオールクロスタイプの位相差検出方式を採用しており、画面全域でのオートフォーカスが可能です。そのため、被写体を画面の端に配置しても、正確にピントを合わせることができます。実際にこの写真でも、画面の隅に被写体を置いた状態で、しっかりとAFが追従してくれました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 PRO
600mm相当*, Aモード, 1/3200秒, F4.0, ISO 1250
4. ツバメ

こちらに向かって高速で飛来するツバメを撮影しました。向かってくるツバメに正確にピントが合うということは、OM-3のオートフォーカス性能の高さを示す好例といえます。この撮影では、あらかじめ飛行コース付近の一点に仮ピントを合わせておき、あとはAI被写体認識AFの「鳥モード」に任せます。ツバメがファインダーに入った瞬間にシャッターを切るだけで、撮影が可能です。シャッタースピードは1/2000秒以上に設定しておくと安心です。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 PRO
600mm相当*, Mモード, 1/2500秒, F5.0, ISO 1250
過酷な鳥見環境で
今回の撮影では、東南アジア・インドネシアのスマトラ島にある熱帯雨林で行いました。熱帯雨林は高温多湿で降雨も多く、足場の悪い森の小径や登山道を長時間歩くことになります。そのため、機材には高い防塵・防滴性能と堅牢性が求められます。
この熱帯雨林では、視界が3mもないほどの濃霧に包まれたり、沢を横断する際に水しぶきがカメラにかかったりと、過酷な環境が続きました。さらに、道を塞ぐ倒木を乗り越える際にカメラをぶつけてしまい、土が付着する場面もありました。それでも、OM-3はIP53の防塵・防滴等級に対応しているため、このような状況でも気にすることなく撮影に集中することができました。
また、樹高が高く下草も繁茂する熱帯雨林では、日中でも薄暗い環境での撮影が続きます。どのカメラにもいえることですが、こうした環境ではISO感度をできるだけ上げずに撮影したいものです。
OM-3は5軸シンクロ手ぶれ補正を搭載しており、補正効果は中央で7.5段、周辺で6.5段と非常に優れています。実際に試してみたところ、手持ちで1/10秒のシャッタースピードに設定しても、落ち着いて数枚撮影すればブレのない写真が得られました。特別にホールド力が高いわけではない私でもこの結果だったことを考えると、OM-3を使用する限り、野鳥撮影において三脚や一脚が必要となる場面はほぼ無いといえます。ホールドが不安な方は、別売(社外製)のグリップを取り付ける事も選択肢です。使用するレンズにあわせてグリップを自由に取り付けたり、取り外したりできるのも本機ならではの特徴だと言えます。手持ち撮影ならではの素早く自由な構図決定を楽しみましょう。
5. スマトラハシリカッコウ

時間は16時を過ぎ、もともと暗い森がさらに薄暗くなった頃、ようやくお目当てのスマトラハシリカッコウが姿を現しました。私は過去に2度スマトラを訪れており、いずれもこの鳥を見ることができなかったため、今回こそは撮影を絶対に成功させなければなりません。
OM-3は暗所でのオートフォーカス性能も優れており、このような低照度かつよく動く被写体でも、迷うことなくしっかりと捉えてくれました。まずは、ポートレート的な撮影でその姿を収めました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
338mm相当*, Mモード, 1/5秒, F5.8, ISO 160

鳥がさらに近づいてきたタイミングでは、アップでの撮影に挑戦することができました。身動きが取りにくく、レンズ交換が難しいこうしたシーンでは、ズームレンズの柔軟性が非常に役立ちます。描写力は十分で、背景のボケ味も美しく表現されました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*, Mモード, 1/10秒, F6.3, ISO 400

私にとって、一生に一度出会えるかどうかという希少な種であるため、あらゆる場面を写真に残したいと考えました。今回は、鳥だけでなく周囲の環境も大きく取り入れた引きの構図でも撮影してみました。こうした撮影が可能なのも、ズームレンズならではの利点です。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
200mm相当*, Mモード, 1/20秒, F5.0, ISO 200

木立の中に隠れている場面を、あえて作例として掲載します。AI被写体認識AFの「鳥モード」では、枝や葉で体の大部分が隠れている状況でも、迷うことなく顔に正確にピントを合わせてくれました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
488mm相当*, Mモード, 1/10秒, F6.1, ISO 320
手ぶれ補正の効果をわかりやすく示すため、手ぶれ補正オン・オフの両方で動画を撮影してみました。どちらも手持ちでの撮影です。
手ぶれ補正ON
手ぶれ補正OFF
6. 推定バンレイシ科の果実

熱帯雨林の森を歩きながら鳥を探していた際、足元に落ちている、独特な模様の果実を見つけました。しかし、レンズを交換する余裕はありません。そこで、鳥用に装着していたズームレンズを望遠マクロのように活用して撮影してみました。最短撮影距離が1.3mのレンズだからこそ可能な使い方です。
鳥を見に行ったからといって、鳥だけを撮影して帰るのは少しもったいないかもしれません。同じように、昆虫や花なども、せっかくの機会なので撮影してみることをおすすめします。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
200mm相当*, Mモード, 1/10秒, F5.0, ISO 125
さいごに
取材を通して、OM-3はフィールドでの実践においても、そのスペックに見合った性能を十分に発揮してくれることが確認できました。特に、軽量かつ超望遠域をカバーするズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II」との組み合わせがオススメです。軽量・コンパクト・タフな設計を活かして、気軽に野外へ持ち出してみましょう。
*35mm判換算値

川辺 洪
1987年、東京生まれ。探鳥家。幼少のころ、今は亡き父の影響で鳥の観察を始める。社会人になってからは国内のみならず海外へ赴きライフリストを数える。近年は、キジ類を求めてアジアの秘境を駆ける。 『BIRDER』(文一総合出版)にて記事「キジの棲むアジアの秘境を訪ねて」連載中。
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