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野鳥撮影をはじめよう
~その3 冬の野鳥の楽しみ方~

菅原 貴徳

撮影・解説 : 写真家 菅原 貴徳

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2022年11月公開

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鳥たちの冬

冬は、鳥たちとの出会いが多くなる楽しい季節です。この時期、日本で見られる鳥は、季節変化による大きな移動(=渡り)をしない「留鳥」、夏を過ごした高地から温暖な平地へと降りてくる「漂鳥」、そして北国から渡ってくる「冬鳥」です。求愛や子育てに忙しい春から夏、渡りの只中で日々鳥が入れ替わる秋といった時期に比べ、越冬期の鳥たちの暮らしは幾分ゆったりと、そして規則的な感じがします。朝夕の冷え込みは身に堪えますが、防寒対策を万全にして外に出かけてみましょう。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影したコハクチョウの写真

コハクチョウ

ハクチョウ類は冬鳥の代表格。大型で、飛跡もわかりやすいので、飛翔撮影の入門にも最適です。ひと家族が収まるフレーミングを意識しました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード F2.8 1/1600秒 ISO 200 +0.7EV

冬の花形 カモ類を楽しむ

冬の水辺に彩りを添えるのが、カモの仲間です。日本で冬を過ごす間に、雄たちは求愛のための美しい羽で飾られ、とても見応えがあります。運が良ければ求愛のダンスも見られます。1羽の雌を、複数の雄が追いかけているようなら注目して目で追ってみましょう。一方の雌たちも、一見どれも茶色で地味に見えますが、1枚1枚の羽に浮かぶ縞模様が美しく、つい見入ってしまいます。
同じカモ類でも、山奥のダムや自然度の高い河川に暮らすものは、遠くに人の姿を見るだけで飛び去ってしまうほど警戒心が強いのですが、都会に近い池や川につどう個体は比較的人との距離が近いものが多く、撮影の入門にも適していると言えます。
複数種が同時にいることも多いので、見分ける練習にもよいでしょう。大きさや色の見え方、体型の違いを意識することも大切ですが、行動の違いにも注目すると良いと思います。例えば、餌の取り方や、泳ぐ時の首の振り方、飛び立つ際の助走のとり方などが浮かびます。写真にはなかなか写らない識別のポイントだけに、現場で見る意義と楽しみがあると言えるでしょう。
休息していたカモ類が首を上げ、せわしなく鳴き始めるのは、天敵が現れたサインです。上空を飛ぶタカ類や、湖畔にネコやキツネなどの姿を探してみましょう。この警戒の仕草は、人に対しても見られます。撮影者の接近が原因と考えられる時は、粘っても警戒する姿や、逃げ去る姿しか写せません。接近をやめ、鳴き止む位置まで引き返すのが良いでしょう。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したヨシガモの写真

ヨシガモ

ヨシガモの雄(左)と雌。カモ類の雌は他の種類との見分けが難しいですが、一緒にいる雄を目安にすると調べやすいでしょう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*
Mモード F5.6 1/1250秒 ISO 250 ±0.0EV

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影したハシビロガモの写真

ハシビロガモ

ハシビロガモは、前方が広がった特殊なくちばしを巧みに使い、水面付近のプランクトンを濾しとって食べます。その際にできる印象的な波紋を取り込むため、ズームレンズで画角を調整して撮影しました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
250mm相当*
Aモード F2.8 1/800秒 ISO 400 -0.3EV

冬の小鳥の探し方

水辺に比べて発見の難易度が高い林内の小鳥ですが、木々の葉が落ち、見通しが良くなる冬は、姿を見つけやすくなる時期です。「地鳴き」と呼ばれる短い声が聞こえたら、梢枝や植え込みを双眼鏡で探ってみましょう。
鳥を見つけやすいということは、鳥たちから撮影者の姿が見つかりやすいということにも留意しましょう。常緑の植え込みや、木の幹、テトラポッドなどをうまく使い、半身でも体を隠しながら観察することで、鳥を驚かせないように心がけると、鳥の方から近づいてきてくれます。そうすれば、無理に追いかけるよりも近くで、そしてゆっくり撮影できるチャンスが増えます。
ジョウビタキやモズのように、冬の間は単独で縄張りを構える鳥もいますが、アトリ類やレンジャク類などのように、大きな群れを作って行動するものも多くいます。このような時は、1羽を驚かせてしまうと、緊張感が群全体に伝わってしまいます。逆に、近くにいる1羽が安心していると、他の個体が後に続いて近づいてくれることがあります。焦らず、全体に気を配りながら撮影しましょう。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したツグミの写真

ツグミ

木の上から声がしたので、そっと見上げると梢枝で休む姿が見えました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*
Aモード F5.6 1/1600秒 ISO 250 -1.0 EV

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISで撮影したシメの写真

シメ

雑木林の斜面で種子を探していたシメ。鳥の進行方向に切り株があったので、その陰にしゃがんで待つと、だんだん近くにきました。鳥の後ろが陰になる瞬間に撮影することで、同系色の背景から鳥を浮かび上がらせる工夫をしました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
800mm相当*
Aモード F6.3 1/400秒 ISO 800 -0.7EV

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したジョウビタキの写真

ジョウビタキ

冬の間、単独で構えた縄張りの中で生活します。地上から0.5~1.5mほどの高さの小枝や杭に止まり、地面に降り立って昆虫類を捕らえることを繰り返します。お気に入りの枝には必ず戻ってくるので、隠れて待ってみるといいでしょう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
918mm相当*
Aモード F5.6 1/160秒 ISO 400 -0.7EV

冬らしさを活かした撮影のコツ

冬らしさと聞いて連想されるものは人によって様々ですが、例えば雪を写し込むことができれば、多くの人が思う「冬」のイメージを表現できます。

また、冬は鳥の生活リズムがある程度決まっているので、意識して観察することで、朝日と鳥を絡めた作品が撮りやすくなる季節です。例えば、ハクチョウ類やツル類などは、毎朝同じ時間にねぐらを発ち、ほぼ決まった時間に餌場から戻ってくることがわかります。天候などが原因と思える多少の前後はあるものの、撮影のスケジュールを立てやすい時期です。前日の観察結果をもとに、太陽の位置や光線状態、撮りたいイメージに合わせて立ち位置を調整することで、作品の完成度を高めていくことができます。日の出の前後は寒さも厳しいものですが、澄んだ空気のおかげで、撮影にも向いていると言えます。狙ったイメージ通りに1枚が撮れた時の達成感は格別です。ぜひ、通って挑戦してみてください。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROで撮影したベニヒワの写真

ベニヒワ

雪の存在感を目立たせるために、背景の一部が暗くなる位置取りをしました。鳥の動きだけでなく、雪の降り方に合わせて適宜ISO感度を上げ、シャッター速度を上げることで、雪が流れ過ぎないように注意すると良いでしょう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
600mm相当*
Aモード F4.0 1/400秒 ISO 320 ±0.0 EV

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したマナヅルの写真

マナヅル

日の出の時間帯に飛び立つマナヅル。前日までの観察で、飛ぶルートと日の出の位置を確認していたので、この日は両方を写し込める位置で朝を迎えることにしました。焦らないよう、待ち時間に露出を調整しておくのもポイントです。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*
Mモード F7.1 1/2500秒 ISO 400 ±0.0 EV

※35mm判換算焦点距離

写真家 菅原 貴徳

写真家 菅原 貴徳(すがわら たかのり)

1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。様々な景色に調和した鳥たちの暮らしを追って、国内外を旅する。近著に『木々と見る夢』(青菁社)、『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100』(山と渓谷社、写真担当)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。日本自然科学写真協会(SSP)会員。

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カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

野鳥撮影のマナー

野鳥撮影時の注意点

  1. 撮影のために餌付けなどの環境の改変をしたり、録音した野鳥の声を流して誘引することはやめましょう。
    野鳥たちの自然な行動や生活を妨げてしまいます。
  2. 営巣中の野鳥たちはとても敏感です。
    大勢で巣を囲むことや、巣やひな、巣立ち直後の幼鳥などの写真の撮影・公開は控えましょう。
  3. 撮影地周辺の住民や、他の公園利用者への気遣いも忘れないようにしましょう。
  4. 撮影地の情報の取り扱いは慎重に行いましょう。特に巣やねぐらのように、逃げ場がない状況では注意が必要です。
    (画像に付加されたGPS情報は、OM Workspace で現像時に削除することが可能です。)
  5. 野鳥たちは自然の中で暮らす生き物です。彼らの生活を邪魔しないよう、ゆとりをもって撮影しましょう。
    また、双眼鏡などを使ってよく観察することが、よりよい撮影に繋がります。
  6. 野鳥撮影でフラッシュを使用すると、野鳥たちを驚かせてしまいます。
    暗い場所では、フラッシュ使用を避けて、ISO感度を上げて撮影しましょう。

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