Photo Recipe(フォトレシピ)
人生にもっと写真を ~第二回/写真の選び方~
2022年10月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
第一回では、よりアクティブな姿勢で写真に取り組むことによって、人生をもっと豊かにしていくことをお勧めし、その最初の手がかりとしてテーマを持つことが大切であることをお伝えしました。
第二回では、テーマに則って撮影した写真をどのようにして選んでいくのか、選ぶ基準は何か、などについて話を進めていきます。第一回に目をお通しではない場合、ぜひご一読ののち、本稿をお読みいただくと、より内容が掴みやすくなると思います。
さて、写真コンテストに挑戦する、フォトブックを制作する、写真展に挑戦する、そのためにテーマを念頭において撮影を続けているとします。では「写真を選ぶ」というセレクトの作業は、どのタイミングで行えばよいのでしょうか。
私はセレクトには大きくわけて2つの段階があると思っています。1回目は粗選り、2回目はいわゆるセレクトです。粗選りとは、本格的なセレクトの前に行う大ざっぱに選び出す作業です。簡単により分けておいて、今現在、どの段階まで撮影できているかを確認したり、自分の表現にはどんなクセがあるのかなどを見極めて、テーマを達成するためには何が足りないのかを把握するための段階です。その作業を定期的に繰り返し、最終段階として目前に迫った目標のための厳密なセレクトを行う、そんな流れです。
これはあくまでも1つの考え方ですし、もっと言えば、ここでお話をしているのは、初めて目標を持って写真に取り組む方へ向けた内容なので、取り組みやすさも考慮しています。とは言え、しっかりした結果を出すためには必要な考え方でもあるので、真摯に向き合っていただければ、セレクトはできるようになります。
さて、2つの段階の1つ目をもう少し詳しくお話しします。1回目の粗選りですが、これはある程度撮影が進んだところで行えばよいと思います。撮影の度に毎回毎回行えれば、それはそれでよいかもしれませんが、ハードルが高くなってしまいかねません。毎回の作業に飽きてしまったり、ハードルの高さを感じてしまうことは避けたいものです。
例えば目標を1年後にフォトブックを制作する、と過程した場合の話としてみましょう。その場合、週末ごとに撮影をしたとしたら、粗選りはひと月に1回のペースでよいでしょう。風景写真の場合はひと月ごとに季節感が変化するので、それを区切りとするイメージです。
例を上げましょう。昨年撮影した裏磐梯檜原湖の朝景は、明け方から撮影を開始し、別の場所へ移動するまでに約170カットの撮影をしていますが、粗選りした結果、14カットへと絞り込みました。12カットにつき1カット程度の絞り込みですが、最初の段階ではこの程度でよいと思います。むしろ厳密にセレクトしないことをお勧めします。フォトブックの場合は、見開きを作るとき、相性のよい写真同士を並べることになりますが、その際に選択の範囲が広いほうが、作業がしやすいからです。
「OM Workspace」で作業をしています。粗選りした画像には「カラーマーク」を使ってしるしを付け、わかりやすく表示をさせることにしています。「レーティング」機能を使うことも可能ですが、この段階ではあまり絞り込まなくてもよいと思います。その日その日の気持ちの変化によって順位付けも変わりますし、具体的な作業の前に絞り込んでしまうと、あとからの対応がしづらくなることもあります。ある程度の順位付けをしておくことは問題ありませんが、候補から削ってしまうことはやめておきましょう。
この2枚は、かなり印象が似ているので、類似カットと考えて良いと思いますが、雲の色づき具合、画面左の森のあるなしなど異なる点も多々あります。どちらも気に入っているなら、この段階では残すという判断は正しいと思います。
それでは2回目のセレクトのことをお話しします。ここは写真を確定する段階ですから、それまでに全体の粗選りを終えておきます。
フォトコンテストを目指す
応募要項には応募できる枚数が記されているので、それに則って選びます。余裕があれば限度枚数を選びましょう。入選の確率が上がります。では、「この一枚」はどう選ぶのか?まずは自分が気に入っている写真がそれです。そうでない写真を選んで落選すると後悔しますから。次にコンテストの傾向や審査員の好みなどを研究し、それに相応しい写真を選びます。またコンテストの場合、仮に10枚を応募すると決めたとしたら、類似の写真は外すことも、無駄を省く意味で大事な選び方です。
では、この2枚ならどちらを選んだらよいでしょうか。とても迷う絵柄だと思いますが、私なら【左の写真】を選びます。その理由は左右の木のシルエットと暗雲に挟まれた太陽の存在感が強いことです。太陽の輪郭も見て取れるため、ひと目で太陽の強さが感じられます。一方の【右の写真】は全体の風景としては、手前の笹、木々の並び、太陽の位置、暗雲の量などバランスはよいものの、それぞれが均等の存在感を持ってしまったため、インパクトが弱い印象を受けます。これらの理由から、どちらかを選ぶなら【左の写真】という判断になります。
フォトブックを目指す
フォトブックを作りたい場合は、テーマに沿って粗選りした写真をL判程度でよいのでプリントします。もしも100枚ほど粗選りしたなら、100枚プリントすることが理想です。風景写真の代表的な並べ方の一例として、四季を追って順番に並べる方法がありますが、仮にフォトブックをそのように作ると決めた場合、そのプリントを春夏秋冬別にわけます。そして起承転結を意識しながら、扉となる最初の1枚を決めます。これはテーマを一言で表すような写真がよいでしょう。その次からは見開きごとに並べていきますが、このとき、左右に並ぶ写真は相性のよいものを選びます。強い印象の写真ばかりではなく、強弱をつけたり、抑揚を意識するように並べるようにすると比較的進めやすいかもしれません。
見開きの例1
桜の作品を使いインパクトの強い見開きを作ることを想定してみます。【左の写真】には闇夜に浮かぶ桜、【右の写真】には白い空を背景にした桜。【左の写真】は黒バックに桜を小さく見せ、【右の写真】は白バック全体に桜を配しています。左右がまったく異なるイメージを持つことで、印象的なページになっています。強い印象を与えるためのセレクトと言えるでしょう。
見開きの例2
同じく桜を使った見開きのページですが、この2作品は桜が脇役に回っています。桜の陰に隠れて目立たない花に心を寄せて表現した作品同志を並べたわけですが、この見開きの前後に桜が主役のページがある場合、抑揚が生まれ、見る人を飽きさせない効果が出てきます。こういった写真も、フォトブックの展開を考えたときは重要な意味を持つことがあるので、セレクトの対象として考えておきましょう。この見開きは上の<見開きの例1>とは対照的に、やさしい印象を持つセレクトといえます。
写真展を目指す
写真展は一方通行で見ていくことを前提に写真を選ぶので、フォトブックと考え方は近いものがあります。フォトブックの基本は見開き構成にあるのに対して、写真展は全体の流れがあり、加えて1枚1枚の力を必要とし、さらに前後の関係を意識することが必要です。とは言え、写真展を考えるときも、粗選りした写真をプリントすることをお勧めするのは同じ。そのうえでフォトブックと同じように四季を意識して並べるなら、季節と季節がうまく繋がることを考えなくてはなりません。むしろ季節のピークを並べているときよりも、季節のはざまを展開していくときの方が、時間がかかるでしょう。
今回は、写真を選ぶことについてお話しました。完全な形でお話しすることはスペースの関係もあるので、なかなか難しいことなので、ざっくりと全体像がつかめるような内容としています。実際に自分で取り組む場合は、この話をベースにしてトライをし、あれこれ経験し、つまずきながらも一歩一歩進んで行けば、必ず目標は達成できると思います。
大事なのは、トライしてみることです。
※35mm判換算焦点距離