写真家・福田健太郎がOLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIIで紡ぐ
森の5つの物語 <後編>

PART Ⅳ
OM-D E-M1 MarkIIIで描く、光の色

森に入って時が経つうちに日常はすっかり遠ざかり、
今は気持ちも身体もすっぽりと自然に包み込まれている。
この世界に生きる者の一員として見つめる光。
大きな時間の流れを想い、今日も撮影を続ける。

撮影の成果をその場で確認できる有り難さ
心おきなく撮影に集中できる唯一無二のカメラ

OM-D E-M1 MarkIIIは、身体によく馴染む。自然の中で鋭さを増した感覚に的確に応えてくれるその速写性は、もはや私の身体の一部のようなもの。ライブコンポジットやライブND、ライブバルブなど、その場での印象をすぐに確認して仕上げ画像を得られる数々の機能のおかげで、思いを残すことなく撮影に集中できる。今ここで見ている光の色を、そのままカメラに閉じ込めたい。写真家のそんな欲求を、このカメラは十分に受け止めてくれる。

強い逆光でもクリアな空気感を再現する信頼のPROレンズ

丘の上に立ち並んだ防風林の向こうから朝日が昇る。林の奥から差し込む逆光と、浮かび上がる繊細なシルエット。目覚めの朝の清々しさと一日の始まりの躍動感を捉えたいと考えた。
カラマツの横並び感を強調するため、画面のアスペクト比を16:9に変更。M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROで木立の一部を切り取り、刻々と昇る朝日を5000万画素手持ちハイレゾショットで写し止める。逆光耐性に優れ、ゴースト、フレアを抑えてクリアに描写できるPROレンズは頼もしい。光を透かした枝先のエッジも自然かつシャープで、思いのままに写すことができた。

明暗差で再現の難しい場面も、カメラ内設定で思いのままに

水面も染まるほどの燃えるような朝焼けに遭遇。冬の訪れととも飛来したハクチョウがちょうど羽を休めている。逆光で輝度差が激しく、空と水面の明るさも異なっている。
露出を空に合わせると水面が暗くなってしまうため、「ハイライト&シャドウコントロール」を用いてシャドウを持ち上げ輝度差を埋めると、肉眼で見たままの世界を写すことができた。さらに見た通りの印象を再現するため、「彩度」を+1として鮮やかさを強めた。設定はファインダー上でリアルに確認でき、イメージを確認してから撮影ができる。
「ハイライト&シャドウコントロール」は、トーンカーブをカメラ内で動かし、つぶしたくない暗部だけを持ち上げたり、白飛びさせたくないハイライト部だけを暗くすることができる機能。階調再現をその場でコントロールすることができる。

ライブNDで水のざわつきを消し去り、滑らかな黄金色を再現

水面が黄金色に染まっているのは、日陰の渓流に日向の黄葉が映り込んでいるから。明暗差を生かせる状況だったため、光にも濃淡が生まれ、輝く色が際立っていた。
この場面では自分が色に引かれていることを意識して、水の凹凸感をなるべく消すことを優先させた。この黄金色の美しさを、写真を見てくれる人に届けるため、可能な限りシャッター速度を遅くしたかった。そのためライブND32を選択。画面構成もできる限りシンプルに、黒く濡れたかたちのいい岩をポイントにした。20秒のシャッター速度は意図した通り流れを滑らかにし、色を際立たせてくれた。

ライブコンポジットは自然の壮大なスケールを可視化する

幸いにしてまったく雲のない星空に恵まれた。人間の存在など圧倒してしまう星空のスケール感を伝えるため、星の軌跡を肉眼では見えない線で表すことにした。
対岸のキャンプ場の灯りはバルブだと明るく写りすぎてしまうのでライブコンポジットを作動。無風だったため、湖面にも星空が映ると予測しフレーミングを決めた。星の軌跡が合成されていく様子は、モニターでリアルタイムに確認できる。40秒のカットを16枚重ねた。
ライブコンポジットは動いている光の部分だけを露光するため、長秒露光では白飛びしてしまう明部をほどよい明るさに描写でき、全体の雰囲気を損ねない。大きな自然の中の人間の営みを描写することができた。