屋久島撮影ルート
月に35日も雨が降ると言われるほど、屋久島の降水量はすさまじい。精密機器であるカメラなんて、半日で壊れるんじゃないかと不安になる。自然界の撮影はカメラにとって最悪なコンディションばかりだ。雨、湿気、埃、衝撃。故障の原因はどこにでもある。人間の注意力も要因の一つ。時間が経つにつれ「まあ、いいか」と扱いが雑になる。だから、カメラを丸一年壊さないでいるのはなかなかに難しい。
レインウェアのポケットから、今回テストするTG-810を取り出す。すでに屋久島らしい大雨に降られ、何もかもが濡れてしまっている。ふやけた手で恐る恐る電源を押す。問題なく作動。プレビュー画面を映し出したまま、足元の水に浸してみたが壊れる様子はない。試しに地面に叩きつけてみようかと思ったが、前後の登山客の目を気にして断念。そこまですることもないだろう。
何度かポケットから出し入れするうち、開閉式のレンズ保護シャッターが意外に便利だと知った。レンズが小さくなるほどに、ゴミが付着すると画像に大きく写り込んでしまいやすいが、レンズそのものを保護してくれるおかげで、ポケット内のゴミが付着しにくいのだ。レンズ周辺のプロテクト構造も、撮影中の雨水の付着を抑えているようだ。防水や耐衝撃に特化したコンパクトカメラだが、こうした細かなポイントも自然撮影でのストレスを大幅に軽減させてくれる。何よりも、ポケットに入れて歩ける自由度が最高だ。重い機材を守り、運ぶという宿命からの開放感を味わった。
どしゃ降りの中を夢中で歩き続け、川と化した登山道を写してみようと電源を入れてみる。故障なし。持ち主が寒さで凍えても、それをあざ笑うように動き続けるカメラである。