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野鳥写真を「作品」にする要素とステップ

写真家 菅原 貴徳

撮影・解説 : 写真家 菅原 貴徳

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2026年3月公開

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レンズをご紹介

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はじめに

機材の扱いに慣れ、基本的な撮影ができるようになったら、構図や撮り方を工夫して、自分だけの作品づくりをしてみましょう。野鳥写真を撮り始めてはじめのうちはどうしても行き当たりばったり、いた鳥を撮るので精一杯になりがちですが、少しの工夫を重ねることで、鳥たちをより魅力的に見せることができる場合があります。

作品づくりにおいては、同じ鳥をじっくりと観察する、同じ場所に何度も通う、といった反復によって、少しずつ観察を深め、作品の質に反映していくことも大切です。そのため、身近な場所にひとつ、よく通うフィールドを持つと良いと思います。その場所は、今回紹介するハクセキレイのように、特別な場所、鳥である必要はありません。

意図を持って撮影する一連から得られる経験値は、今後ずっと役に立つ「引き出し」になっていきます。今回の記事では、作品づくりの過程に注目しながら、作品を紹介していきたいと思います。

作品の印象に影響する要素

超望遠レンズを使った野鳥写真の印象に影響を与える要素のうち、基本的、かつ重要なものを4点紹介します。

1. 鳥のポーズ・表情

鳥の向きや、ポーズ、表情は、鳥そのものの印象を決めます。鳥の動きの中から、どの瞬間を切り出すか、よく観察して見極めましょう。また、プロキャプチャーモードを使用すれば、早すぎて見逃してしまうような瞬間を狙って記録することもできます。

森の中で実を食べていたウソ。嘴に食べかすをたくさんつけている様子が愛らしく思え、そのシーンを撮影することにした。頭が黒い鳥なので、目に光が入るタイミングでシャッターを切った。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*, Mモード, 1/250秒, F5.6, ISO 400

2. 背景

超望遠レンズは画角が狭いため、少し立ち位置を変えるだけでも背景が大きく変わり、写真の印象に影響を与えます。しゃがむなどしてカメラの高さを変えることでも、印象の違う写真を残すことができます。

雪の日に撮影した雄のアオジ。雪の日、地面が露出した轍を歩き、種子を拾って食べていた。中腰で撮影すると、地面の色が暗く、アオジの輪郭も周囲に同化してしまった。

近づいてくるのを待つうちにカメラ位置を下げ撮影したもの。脚は見えなくなったが、アオジの鮮やかな黄色と、表情にフォーカスした写真になった。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/640秒, F4.5, ISO 400

3. 光

写真の印象に影響を与える要素としては、「光」も欠かせません。例えば、晴れの日は、順光で撮影すれば、鳥の羽色が鮮やかに表現されやすい一方、逆光からは鳥のシルエットが強調された絵になりやすい特徴があり、時間帯による光の色味の変化も顕著です。曇りの日はしっとりとした光で、どの向きで撮影しても影が出にくい特徴があります。

コガモの雄。カワセミやカモ類などの鳥が持つ構造色の羽は、晴天の順光から見ると輝いて見える。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/2000秒, F4.5, ISO 400

4. カメラ設定

絞り、シャッタースピード、ISO感度の組み合わせで、写真の明るさが決まります。特に、シャッタースピードは見た目の印象に大きく影響を与えます。

浅瀬に降り立とうとするハマシギ。飛翔をしっかりと写し止めるには、高速なシャッタースピードが必要。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/5000秒, F4.5, ISO 500

これらを組み合わせることが、「作品づくりのステップ」になります。大切なことは、それぞれの特性を理解し、どのように変化するのかを経験しておくこと。それが引き出しになります。そして、日頃から鳥をよく観察し、表現したい「鳥の魅力」はどこにあるのか、を見つけておくことです。

作品づくりの実践例

ステップ1 鳥を見つけ、観察する

まずは鳥を探してみましょう。川原や池などの開けた水辺は、鳥を探しやすいスポットです。今回は、流れの中にある石にハクセキレイを見つけました。その場で観察をすると、この石を拠点に、飛び回って空中の虫を捕らえてはまた戻る、を繰り返していることがわかりました。

立ったままの姿勢で、やや見下ろし気味に撮影したのがこちらの写真。水辺という生息環境がわかってよいのですが、背景の水の流れがやや目立ち、鳥が背景に紛れてしまうように感じました。

ステップ2 背景を意識しながら撮影位置を決める

対岸を見ると、コンクリートの護岸の奥に緑の植生があるのが見えました。鳥との位置関係を意識しながら、ゆっくりと水際へ近づくことにします。このハクセキレイは、見つけた時点で「採餌」をしていることを観察していたので、その自然な行動を妨げない距離を保ち、決して逃げ去ってしまわないように意識を配ることが大切です。
水面近くまで視線を下げると、背景に緑が加わりました。虫を目で追い、見上げたポーズが可愛らしかったので、縦位置に持ち替えて目線の先に空間を作り撮影したのがこちら。視線を下げたことで背景もぼけて、ハクセキレイのポートレートが撮れました。鳥が静止したこのようなシーンでは、被写体ブレの恐れは少ないので、画質を優先してISO感度を低めに設定しています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*, Mモード, 1/640秒, F5.6, ISO 400

ステップ3 瞬間を切り取る

私のことを気にせず、変わらず採餌を繰り返していたので、今度はプロキャプチャーモードを使い、飛び立ちのシーンを狙ってみることにします。この時のカメラ設定では、十分な高速シャッターを切ることを最優先とするため、絞りは開放に設定。シャッタースピードは、最低でも1/3200より速くするのが目安ですが、今回は鳥が近く、かつ「採餌」するために通常の飛翔より機敏に動くので、1/6400に設定し、この時に十分な明るさに写るISO感度に設定します。何度か挑戦するうちに、よい翼の広がりで撮影できました。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/6400秒, F4.5, ISO 1600

ステップ4 更にイメージを膨らませる

更に、この作品を撮影しながら、私の頭の中には、「あと2週間したら背景の緑に菜の花の黄色が混じるかな。」とか、「明るい青空の日であれば水面も青く綺麗で、ISO感度も抑えられるな。」「夕日はどちらに沈むだろう?太陽の方角を確認しておこう。」というアイディアがありました。そのようにイメージを膨らませ、別日に再訪し、夕方の逆光で撮影したのがこちらです。

逆光で撮影したことで、輪郭が強調され、ハクセキレイの「形」にフォーカスした作品になりました。この日は水量が多く、見張り場は隣の石に変わっていたのですが、同じ行動パターンだったので、初日の観察を生かして撮影することができました。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/640秒, F4.5, ISO 800

また、水量が多かったことで、普段よりも水面が波打って見えました。そこで、ライブND機能を起動し、スローシャッターで撮影したのがこちらです。野鳥撮影ではあまり使用する機会の多い機能ではありませんが、使い方を知っておくと、いざという時「引き出し」として使うことができます。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/4秒, F9.0, ISO 200
ライブND(ND32)

まとめ

このように、背景やフレーミング、そして鳥の行動に合わせた撮り方、という風に、考えていくと、ひとつのシーンからも色々な作品が撮れることがお分かりいただけると思います。こうした一連の繰り返しで、少しずつ引き出しを増やしていきましょう。
もうひとつ、このように設定を変えながら様々なシーンを撮影するためには、鳥が撮影者を警戒せず、逃げ出さない状況を保つことが重要です。適切な距離感やアプローチを心がけることは、鳥の暮らしを守る上だけでなく、作品作りにおいても役に立つのです。

ひとつひとつのステップを組み合わせ、自分だけの作品づくりを楽しんでいきましょう。

*35mm判換算値

菅原 貴徳

菅原 貴徳

1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。鳥たちの暮らしを追って、旅することをライフワークとする。野鳥観察・撮影に関するセミナーも多数開催。著書に写真集『木々と見る夢』 (青菁社)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。2025年、OM SYSTEM GALLERYにて写真展【ひかりをはこぶ Birds carrying the sky】を開催。

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