Photo Recipe(フォトレシピ)
表現・パターン別!野鳥撮影とレンズの選び方
撮影・解説 : 写真家 菅原 貴徳
Official Home Page:Field Photo Gallery
instagram:@takanori_sugawara_pg
2026年1月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
鳥たちは様々な環境に暮らしています。種類が異なれば暮らしぶりも変わり、撮りたいシーンも変わってくるものです。また、ご自身のバードウォッチングのスタイルによっても、ちょうどよいサイズは異なるでしょう。今回は異なるレンズで撮影した作品をご覧いただきながら、ご自身のレンズ選びに役立てていただければと思います。
基本の超望遠:600~1000mm相当
野鳥撮影をはじめるのなら、最低限35mm判換算で600mm相当、できれば800~1000mm相当の超望遠レンズは欲しいものです。
一般的には“特殊”と思われがちな望遠域ですが、多くの鳥たちは思い通りに近づくことができないので、800mmや1000mm相当といった超望遠域をカバーするレンズを基本装備とする必要があります。時折、「初心者なので300mmくらいではじめたい」という相談を受けることがありますが、超望遠レンズを使いこなすこと以上に、鳥に近づくことは経験値が必要なので、初心者の方ほど、最初に十分な長さのレンズを手に入れることをお勧めしています。マイクロフォーサーズ規格のOM SYSTEMのレンズなら、レンズの表記の2倍相当の望遠効果が得られるので、手頃なサイズ・重量感で超望遠システムを組めるメリットがあります。
超望遠レンズの特性としては
- 望遠効果が大きいこと
- 被写界深度が浅く、背景がボケやすいこと
- 画角が狭いため、背景に映る範囲が狭いこと
- 圧縮効果が大きいこと
が挙げられます。作品をご覧いただきながら解説します。
カワセミのように、小さな鳥の撮影では800~1000mmといった超望遠域があると便利。望遠効果で大きく鮮明に写せるほか、無闇に近づきすぎずに撮影することで、鳥へのストレスも軽減できる可能性がある。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*, Mモード, 1/3200秒, F5.6, ISO 1600
林内の倒木でさえずるミソサザイ。日本最小クラスの鳥も、1000mm相当で撮影すれば驚かさずに理想的な大きさに撮影できる。超望遠レンズは画角が狭いため、背景を整理しやすいメリットがある。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*, Mモード, 1/640秒, F5.6, ISO 800
干潟に休むズグロカモメを撮影していると、後方をアオアシシギが通過していった。実際には、2羽の間には10mほど距離があるが、超望遠レンズの圧縮効果で互いが近くにいるように写った。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*, Mモード, 1/640秒, F6.3, ISO 400
街中の鳥や”鳥のいる風景“の撮影に:200~600mm相当
200~600mm相当ほどをカバーする中望遠レンズは、主に2パターンでの使用が想定されます。ひとつは、街中など、鳥との距離が近い状況での使用です。特に、水鳥のような大型の鳥であれば、十分に大きく撮影できるチャンスがあります。
都会の水辺で越冬していたヨシガモ。すぐ横を通行人が通っても気にしていなかったので、400mm相当でも十分な大きさに撮影できた。より自然度の高いところでは警戒心が強くなるので、もう少し長いレンズが欲しくなるが、都会の水鳥には便利な選択肢になる。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO
400mm相当*, Mモード, 1/5000秒, F2.8, ISO 400
もう一つのパターンは、鳥の生息環境や、群れの全体を写すようなシーンでの使用です。
超望遠レンズと比べると、中望遠レンズには、
- 被写界深度が深く、背景がボケにくいこと
- 画角が広いため、背景に映る範囲が広いこと
- 圧縮効果が小さいこと
が挙げられます。超望遠レンズは、背景の整理が比較的容易だった一方、単純になりすぎてしまい、条件によっては、臨場感が削がれてしまう側面もあります。それぞれの特性を理解して使用することで、作品のバリエーションを増やすことができます。また、ズームレンズであれば、ズームを引くことでも同様の効果を得られるので、実際にどのような写り方の違いが生じるのか試してみるのも良いでしょう。
波打ち際を飛ぶミユビシギの群れ。被写界深度が深いため、F値は開放絞りだが、鳥と波の両方にピントが合っている。写り込む背景も広くなるので、群れの形に加え、波頭や水平線の高さなどにも気を配って撮影した。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO
400mm相当*, Mモード, 1/12800秒, F2.8, ISO 200
コハクチョウの群れが近づいてきたので、ズームを広角側へ引いて撮影した。画角が広いため、雲の様子も広く写っている。同じ大きさになるように望遠端で撮影すると、背景がより単純化される。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
300mm相当*, Mモード, 1/3200秒, F4.5, ISO 200
テレコンバーターの活用
M.ZUIKOレンズにテレコンバーターを使用することで、更なる望遠効果を得ることもできます。警戒心が強い鳥を離れて撮影する際や、地形的に鳥に近づけないシーンなどで使うと便利です。また、M.ZUIKOレンズは総じて最短撮影距離が短いため、“超望遠マクロ”として使用することもできます。鳥の造形を画面いっぱいに捉えることで、細部の構造の美しさに気づける、といった使い方がイメージできます。
使用にあたっては、テレコンバーターMC-20であればF値が2段分低下するので、ブレに気をつけることに留意しましょう。ISO感度を上げるほか、静音シャッターを使うこともブレの軽減に役立ちます。もう一つ、遠くの鳥を撮影する際には、レンズと鳥の間にある空気の揺らぎの影響でボヤけて写って見えることもあります。雨上がりや夏の日中など、陽炎が発生しやすい状況で顕著なので、そのようなシーンや時間帯を避けることで影響を軽減できる可能性があることを覚えておきましょう。
干潟上空を飛ぶチュウシャクシギをアップで捉えた。焦点距離を稼ぐためには、テレコンバーターを使用する方法もある。レンズの明るさに注意しながら活用したい。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO + MC-20
800mm相当*, Mモード, 1/5000秒, F7.1, ISO 1600
南西諸島に生息しているカンムリワシ。餌探しを邪魔しないよう、距離を置いて撮影することにした。陽炎の収まった夕方に撮影した。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO + MC-20
2000mm相当*, Mモード, 1/200秒, F11, ISO 800
鳥との距離が近い時にテレコンバーターを使うと、鳥の羽毛を大きく拡大して写すことができる。最短撮影距離の短い、M.ZUIKOレンズシリーズならではの表現と言える。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO + MC-20
2000mm相当*, Mモード, 1/80秒, F11, ISO 800
24~50mm:表現の幅が広がる広角レンズ
さらに広く写すためには、広角レンズを使用する方法もあります。特に、鳥が大型な場合や、群れの規模が大きい時には、広々とした画角で生息環境を加えつつ、全体を写すことが効果的なことがあります。ガン類やツル類など、薄暮の時間帯に飛び立つ鳥も多いので、そのような鳥たちを写すのであれば、同じ焦点距離でもより明るいレンズが重宝するでしょう。
朝方、ねぐらから飛び立つナベヅル・マナヅルの群れ。広角レンズを使用したことで、編隊を組み飛ぶ様子を見せつつ、生息環境を写し込んだ。鳥が少しでも近くを飛んでくれるよう、柵に隠れるように待ち伏せた。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
24mm相当*, Mモード, 1/1600秒, F3.5, ISO 800
最初の一本はどう選ぶ?
M.ZUIKOレンズシリーズを見渡すと、最もスタンダードと言えるのがM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS IIです。野鳥撮影をはじめるにあたり、最初の1本としておすすめするならこのレンズで、野鳥撮影で最低限欲しい800mm相当の超望遠域をカバーしながら、いつでも持ち運べる軽さとのバランスが魅力です。
身近な鳥の代表格、ハクセキレイを公園の芝生で撮影した。小鳥の撮影では、最低限800mm相当の望遠は欲しい。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*, Aモード, 1/500秒, F6.3, ISO 3200
このレンズを基準として、よく行くフィールドが干潟や草原など、鳥との距離があることが多いのであれば、より望遠効果の高いM.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 ISが重宝します。画質やAFの高速性、明るさを重要視するのであれば、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROや、M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROといったハイエンドなレンズが選択肢に入ってきます。明るいことのメリットとしては、高速シャッターを切りやすい点が挙げられます。薄暗い時間帯・環境下での撮影のほか、飛翔などのシーンでは明るいレンズが重宝するので、そのような撮影状況が多い場合に比較対象となるでしょう。また、テレコンバーターの使用も選択肢に入れれば、M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROも候補になるでしょう。
加えて、生息環境を加えた表現や、群れのダイナミックな動きを写し込むことにもチャレンズするなら、中望遠や広角レンズも欲しくなります。ガン類やツル類など、薄暮の時間帯に飛び立つ鳥も多いので、そのような鳥たちを写すのであれば、同じ焦点距離でもより明るいレンズが重宝するでしょう。
まとめ
はじめ、どの機材を買ったらいいのかがわからない場合は、一旦双眼鏡だけを持ってバードウォッチングに出かけるのもおすすめです。自分のフィールドにはどんな鳥がいて、どのようなシーンを主に撮影をしたいのか。鳥との距離はどのくらいかなどといったイメージを膨らませてから、目的に合うレンズを選ぶのもひとつの手です。焦らず、後悔のない選択をしていきましょう。
*35mm判換算値
菅原 貴徳
1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。鳥たちの暮らしを追って、旅することをライフワークとする。野鳥観察・撮影に関するセミナーも多数開催。著書に写真集『木々と見る夢』 (青菁社)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。2025年、OM SYSTEM GALLERYにて写真展【ひかりをはこぶ Birds carrying the sky】を開催。
Official Home Page:Field Photo Gallery
instagram:@takanori_sugawara_pg