カメラアイコン Photo Recipe(フォトレシピ)

野鳥撮影のはじめ方と上達のステップ

写真家 菅原 貴徳

撮影・解説 : 写真家 菅原 貴徳

Official Home Page:Field Photo Gallery
instagram:@takanori_sugawara_pg

2025年12月公開

カメラアイコン 記事内で使用した
レンズをご紹介

はじめに

日本にはさまざまな鳥たちが暮らしています。

地域による差はありますが、例えば東京都や大阪府のような大都市の緑地公園でも、1年を通せば80から150種類程度もの鳥たちに出会える可能性があります。それだけ様々な暮らしをしている鳥たちですから、鳥によって撮り方のアプローチや難しさ、最適な機材も変わってきます。

本記事では、鳥たちへの理解を深めながら、野鳥撮影のレベルアップに繋げる方法を紹介したいと思います。

冬、本州の河川敷で出会えるベニマシコ。草陰に隠れていることも多い鳥だが、観察経験を重ねれば、撮影のチャンスも増えてくる。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/160秒, F4.5, ISO 1600

まずは水辺の公園へ

野鳥撮影の初心者におすすめなのが、湖や池のある緑地公園です。

このような場所には、水面に休むカモ類や、岸に佇むサギ類の姿があります。これらの鳥は、姿が大きく、肉眼でも見つけやすいという特徴があります。また、開けた環境なので、AFターゲットの枠を「オールターゲット」のような大きい枠にしてもAFが迷いにくく、かつ太陽の光がたくさん届き、速いシャッタースピードを確保しやすいので、鮮明な写真を残しやすいといった撮影上の利点もあります。加えて、公園では人の姿を見慣れた鳥も多いので、鳥たちを驚かせることなく撮影できる機会も豊富です。このような場所で、野鳥撮影における基本的なカメラ設定や、超望遠レンズの画角に慣れていきましょう。
連写設定はこちらのフォトレシピをご覧ください。

公園の池を泳いでいたコガモ。特に冬は、北国から多種のカモ類が渡ってくるので、賑やかで楽しい。この写真は、午後に順光で写している。光の向きによって写り方が変わるので、美しく見える時間帯や向きを探る練習にもなる。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/2500秒, F4.5, ISO 400

次に目を向けるのは、岸沿いに潜む鳥たちです。

ヒントとなるのは声で、意識すると、思いの外いろいろな声が耳に入ってくるものです。目では向いている方向からの情報しか拾えませんが、耳を使えば、360度どの方向にいる鳥も気配を掴むことができます。
声のした方向がわかったら、双眼鏡を活用して姿を見つけましょう。両眼で覗くことができ、視野が広く、ピント合わせも容易な双眼鏡を上手に使うと、葉陰を動く鳥や、横枝に静止して背景と一体化しているようなカワセミの姿も見えてきます。撮影には難しい、藪の中を動く鳥や、遠方にいる鳥であっても、双眼鏡を通して見れば十分に観察を楽しむことができます。

岸辺の横枝には、カワセミがよく止まって水中を覗き込んでいる。「チーッ」という鋭い声がしたら、声のした辺りを双眼鏡でじっくりと探してみよう。この時は上空を警戒する仕草を見せたので、空を見るとハイタカが旋回していた。鳥の視線にも注意して見てみよう。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*, Aモード, 1/80秒, F5.6, ISO 400

野鳥撮影が上達する上で、最も重要なことは、1羽でも多くの鳥に出会うこと。
たくさん出会い、観察を積み重ねるうちに、撮りやすい鳥に出会う機会がやってきます。次に、少しでも早く鳥の姿を見つけられるようになること。そうすることで、鳥が近づいてきた時に、焦らずレンズを向ける余裕が生まれてきます。

その両方の能力を鍛える上で、双眼鏡は最適な道具です。おすすめは、8から10倍ほどの倍率で、対物レンズの口径が25~32mmほどのもの。口径が大きいほど、明るく見えますが、重量も増すので、バランスを見て選ぶと良いでしょう。防水仕様だとなお安心です。

OM SYSTEM 8×25WP II 8倍、防塵防滴仕様のスタンダードモデル

森の中での撮影に挑戦

カメラと双眼鏡の扱いに慣れてきたら、森の中での鳥探しにも挑戦してみましょう。

森の中は、水辺に比べ光の量も限られるため、ISO感度を高めに設定しておきます。また、葉陰の鳥にAFが迷わないよう、AFターゲットの枠を「スモール」などの小さめに設定するのも有効です。

「シー」という地鳴きを頼りに見つけたコサメビタキ。込み入った場所では「スモール」など狭めのAFターゲット枠を使うとAFが迷いにくくなる。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROMC-20
800mm相当*, Aモード, 1/200秒, F5.6, ISO 800

同じような大きさの身近な小鳥でも、開けた環境でじっとしていることが多いスズメと、葉陰をちょこちょこ動き回るシジュウカラでは、撮影の難易度は異なります。
また、シジュウカラを見ていても、木の枝先を動き回っているタイミングと、囀っているタイミングでは撮影の難しさが異なります。難しい環境なだけに、鳥の行動をよく見て、撮りやすいタイミングを逃さないようにしたいものです。

採餌中は忙しいシジュウカラも、枝先で休む時や、囀る時は比較的長く同じ場所に留まり、撮影しやすい。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Aモード, 1/640秒, F4.5, ISO 800

上の2つは同じ時に撮影したアオゲラです。左のように葉が被っているような時は、撮影難易度が高くなります。AFターゲットの枠を狭めることでピントを合わせることもできますが、アオゲラは幹を上へと移動するので、移動した先で全身が見えるタイミングが来ることを見越して待てば、苦労せずに撮影できます。鳥の動きをよく観察することで、撮影難易度を下げられる例です。

飛び方と撮影難易度

ある程度、撮影に慣れてきたら、次に撮りたいのが飛翔シーンでしょう。ただ、一口に飛翔と言っても、鳥の種類や、タイミングによって難易度が変わってきます。

初心者でも比較的撮りやすいのが、大型の水鳥の飛翔シーン。特にサギ類はゆっくりと飛ぶので、ファインダーで追いながら写す練習に最適です。上述の通り、光量が潤沢な点も速いシャッタースピードを確保する上で有利です。

土手を歩いていると、川の上流からコサギが飛んできた。川に沿ってまっすぐ、ゆっくりと飛んできたので、追従するのも容易だった。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROMC-20
800mm相当*, Mモード, 1/4000秒, F5.6, ISO 800

一般に、鳥は小型になるほど飛ぶのが速く、ファインダーで追うのが困難になります。
加えて、ファインダーの中での鳥の大きさも小さくなりがちなことも、ピント合わせが困難になる要因になります。そのため、同じ環境に暮らす鳥であっても、カワセミのように小さな鳥では撮影の難易度は段違いに上がります。

カワセミの飛翔シーンに憧れる人は多いが、最初に狙う対象としては難易度が高い。特に、レンズを振って姿を追いながら写すのは難しい。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*, Mモード, 1/4000秒, F6.3, ISO 800

しかし、そんな小鳥でも、羽ばたく瞬間を比較的容易に撮影する方法があります。それがプロキャプチャーモードを使用する方法で、「飛んでいる最中」の姿を追いかけながら写すのではなく、画面は固定で「飛び立つ」瞬間を写し止めるものです。
この方法は、カメラを鳥の動きに合わせて振る必要がないので、適切なシーンで使用すれば、かなりの確率で撮影できる点がポイントです。但し、最低でも1/3200以上の高速シャッターを必要とするので、明るい時間帯にチャレンジすると良いでしょう。

連写設定はこちらのフォトレシピをご覧ください。

枝先から飛び立つヒレンジャクを「プロキャプチャーモード(SH2)」モードで撮影した。時間を遡って記録できるので、一瞬の動作も比較的簡単に記録できる。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*, Mモード, 1/4000秒, F4.5, ISO 800

まとめ

以上を整理すると

  • ・暗い場所よりも、明るい場所
  • ・込み入った場所よりも、開けた場所
  • ・小さな鳥よりも、大きな鳥
  • ・「飛翔の最中」よりも「飛び立ちの瞬間」

の方が、撮影難易度が低く、より初心者向きであると言えます。

撮影シーン別のより具体的な撮影テクニックについては、オンラインの動画も是非参考にしてみて下さい。

野鳥撮影を「難しい!」と決めつけてしまう前に、なぜ「難しい」と感じてしまうのかを整理して、ひとつずつステップを登っていきましょう。

*35mm判換算値

菅原 貴徳

菅原 貴徳

1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。鳥たちの暮らしを追って、旅することをライフワークとする。野鳥観察・撮影に関するセミナーも多数開催。著書に写真集『木々と見る夢』 (青菁社)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。2025年、OM SYSTEM GALLERYにて写真展【ひかりをはこぶ Birds carrying the sky】を開催。

Official Home Page:Field Photo Gallery
instagram:@takanori_sugawara_pg

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

カメラアイコン合わせて読みたい:
フォトレシピ・インタビュー