Photo Recipe(フォトレシピ)
身近な紅葉を鮮やかに撮影しよう
撮影・解説 : 写真家 クキモト ノリコ
2025年11月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
暑かった夏が過ぎ、そろそろ紅葉シーズンとなってきました。紅葉も山岳地帯の自然風景から近所の公園など、さまざまなシチュエーションが考えられますが、今回は日常で登山などはしていない筆者が、比較的身近な場所(すべて電車・バスといった公共交通機関で行けます)で撮影した写真をもとにOM SYSTEMカメラでの紅葉の撮り方をご紹介します。
1. 晴れた日は逆光を利用する
真っ青な空の下、赤やオレンジ色の紅葉が広がるさまは目を楽しませてくれる景観ですが、いざ、葉をクローズアップして撮ろうとすると……あれ?思ったほど綺麗じゃない!そんな経験のある方も多いのではないでしょうか。そんな時はぜひ、葉の表面からではなく、葉の裏側から逆光になる向きにレンズを向けて透過光で撮影してみてください。また、夏の暑さや雨量など、さまざまな要因で色づき具合がイマイチな年もありますが、そんな時でもこの透過光での撮影がおすすめです。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
24mm相当*, Aモード, 1/160秒, F8.0, ISO 200
WB:5400K
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Aモード, 1/160秒, F16, ISO 400
WB:5600K
こちらの2枚の写真、1枚目は順光となる位置から池の向こう側、正面の赤いモミジの木を撮影。その後、遊歩道をぐるりと回り込んで反対側の逆光となる場所へ移動して2枚目を撮影しました。同じ紅葉でも葉の色の印象が異なることがおわかりいただけるのではないでしょうか。またせっかく晴れた日だったので逆光時にはF16まで絞り、葉の隙間から光条を出してみました。
背景が影になる場所でスポットライトのように逆光となる光が当たっている葉を選び、露出をぐんと下げることで暗い(黒い)背景に透き通った印象を残しつつもしっかりと赤い紅葉が浮かび上がる1枚となりました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
300mm相当*, Aモード, 1/1250秒, F4.0, ISO 200
WB:5800K
天候や時間帯にもよりますが、逆光で露出を上げたこと、またホワイトバランス(色温度)を下げたことでふんわりしつつ爽やかな「朝の紅葉」といった印象の1枚となりました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*, Aモード, 1/1000秒, F2.8, ISO 200
WB:3950K
晴れた日の強い光とモミジの可愛らしい形を利用して、敢えて影で紅葉を表現してみました。青モミジではなく赤く色づいた葉であることを伝えるために赤い葉も脇役として画面の端に少し配置しています。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*, Aモード, 1/5000秒, F1.8, ISO 200
WB:4800K
2. 雨の日の紅葉
雨の日の紅葉は、晴れた日とはまた違った表情を見せてくれます。強い光がない分、余計な陰影がつきにくいため、しっとりとした雰囲気を楽しむことができます。昨今のOM SYSTEMのカメラやレンズには防塵・防滴性能を備えたものが増えていますので、ぜひ雨の日にも出掛けてみることをおすすめします。
バスで行くことができる、神戸の六甲山にある植物園へ雨の日に出かけました。山の上ということもあってか、この日は園内全体が霧に包まれてとても幻想的でした。
真っ赤に色づいたモミジと、霧で白みがかった緑の背景との対比がとても綺麗でした。露出を上げて全体的に明るい雰囲気に。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 II
64mm相当*, Aモード, 1/30秒, F2.8, ISO 1000
WB:5300K
赤・黄・緑のバランスがとても綺麗だったのですが、曇天の下だからこそのしっとり感が感じられます。ピクチャーモードをVividにすると赤色がベタっと絵の具を塗ったような色になる気がした為、Naturalを選択。色が飽和してしまわないように注意しましょう。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 II
56mm相当*, Aモード, 1/30秒, F2.8, ISO 1250
WB:5300K
池への写り込みを意識して撮った1枚ですが、霧というフィルター越しのため、ピクチャーモードはVividにして赤色を強調しました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 II
46mm相当*, Aモード, 1/40秒, F2.8, ISO 1000
WB:6000K
ピクチャーモード:Vivid
3. 紅葉撮影のレンズ選び
紅葉撮影に連れて行くレンズは、何をどう撮りたいかにもよりますが風景写真として広く切り取りたい場合を除くと望遠レンズをよく使っている、という方も多いのではないでしょうか。私自身、望遠側で撮ることが多いのですが、あまり画角が狭いとどんな場所で撮影したのかが全く伝わらない写真にもなるため、広角〜標準域のレンズも鞄には入れておきたいものです。
望遠レンズの大きな特徴のひとつがやはり大きなボケを得られることでしょう。F値を小さくして絞りを大きく開くとボケは大きくなりますが、同じレンズで設定を変えてみるとその違いがよくわかります。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROの望遠側(300mm相当※)、左から F2.8、F5.0、F8.0で撮影
望遠レンズのもうひとつの大きな特徴に「圧縮効果」があります。遠近感が縮まってぎゅっと詰まった印象となるものですが、これにより画面いっぱいに紅葉が詰まった印象の写真とすることができるため、並木道など奥行きのある場面で有効活用したい効果です。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
150mm相当*, Aモード, 1/60秒, F6.3, ISO 800
WB:6000K
単焦点レンズの中でもM.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 はとろけるようなボケが特徴のレンズです。最短撮影距離が0.84mと被写体にあまり近寄れない面もありますが、むしろ少し距離のある被写体を狙うことも多い紅葉撮影にはとてもオススメのレンズです。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*, Aモード, 1/800秒, F1.8, ISO 400
WB:5300K
“被写体に近づくことができ、また被写体を大きく撮るためのレンズ”という印象の強いマクロレンズですが、シンプルにその焦点距離の単焦点レンズとして使うことも可能です。今回は60mmのマクロレンズを、中望遠の単焦点レンズとして使いました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*, Aモード, 1/640秒, F2.8, ISO 400
WB:5300K
思い切って広い画角で撮ることでスケール感を出したい場合や、バリエーションを持たせて同じような写真ばかりにしないためには、やはり広角側のレンズも必要です。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Aモード, 1/1600秒, F4.0, ISO 400
WB:5600K
4. 紅葉撮影時におすすめの仕上がり設定
鮮やかな紅葉を目にすると気分も高揚し、目の前の鮮やかな色をそのまま写真で再現したくなるのは自然な心理だと思います。そこでカメラの設定も「Vivid」にした結果……「何か違う」と違和感を覚える方も多いように思います。被写体自体にしっかり色がある場合はむしろ「Natural」で十分その発色が伝わることも多く、Vividにすることで色の彩度が高くなり過ぎ、絵の具をベタっと塗ったような仕上がりとなって違和感を覚えたり、見ていて疲れる写真になってしまったりします。逆に紅葉の色付きがイマイチだなと感じる場合や、雨で霧が掛かっているような場合にVividで「少し色を盛る(強調する)」、そんな使い方がオススメです。(上記「雨の日」参照)
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Aモード, 1/125秒, F8.0, ISO 400
WB:5800K
ピクチャーモード:Vivid
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Aモード, 1/125秒, F8.0, ISO 400
WB:5771K
ピクチャーモード:Natural
OM SYSTEMカメラの大きな特徴である機能「アートフィルター」での撮影もおすすめの撮り方です。「ファンタジックフォーカス」のやわらかい雰囲気や、「トイフォト」や「ヴィンテージ」のレトロな仕上がりも紅葉撮影に合うフィルターだと思いますが、いずれかのアートフィルターを選んでおしまい、ではなくもうひと工夫、明るさやホワイトバランスを変えてみることをおすすめします。これにより、思いがけない仕上がりの発見があるかもしれません。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
200mm相当*, Aモード, 1/200秒, F2.8, ISO 200
WB:5300K(Auto)
ピクチャーモード:Natural
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
200mm相当*, Aモード, 1/200秒, F2.8, ISO 200
WB:5300K(Auto)
ピクチャーモード:アートフィルター(デイドリームII)
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
200mm相当*, Aモード, 1/200秒, F2.8, ISO 200
WB:3950K(蛍光灯)
ピクチャーモード:アートフィルター(デイドリームII)
ピクチャーモード「Natural」(ホワイトバランスはオート)から、そのままアートフィルター「デイドリームⅡ」へ。この変更だけでも悪くはないのですが、明るさを少し上げるとともにホワイトバランスを「蛍光灯」に変えると背景に青みが増すことで背景の青とモミジの赤の対比が印象的な1枚となりました。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
250mm相当*, Aモード, 1/80秒, F2.8, ISO 640
WB:5300K(Auto)
ピクチャーモード:Natural
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
250mm相当*, Aモード, 1/80秒, F2.8, ISO 640
WB:5300K(Auto)
ピクチャーモード:アートフィルター(クロスプロセスI)
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
250mm相当*, Aモード, 1/80秒, F2.8, ISO 640
WB:4000K(蛍光灯)
ピクチャーモード:アートフィルター(クロスプロセスI)
なかなか使いどころが難しいクロスプロセスですが、紅葉との相性は悪くないように思います。背景が緑になるあたり、多少シチュエーションを選ぶ場面もあるため好みが分かれるとは思いますが、背景の緑が赤や黄色の葉を引き立ててくれるので、ぜひ試してみていただきたい設定です。ここでも通常撮影からクロスプロセスに変更した後、更にホワイトバランスを下げるために「蛍光灯」を選択することで、全体の黄色っぽさを減らしています。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
80mm相当*, Aモード, 1/250秒, F2.8, ISO 400
WB:5300K
ピクチャーモード:Natural
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
80mm相当*, Aモード, 1/250秒, F2.8, ISO 400
WB:5300K
ピクチャーモード:カラークリエーター
もうひとつ、OM SYSTEM機ならではの機能、カラークリエイターも紅葉撮影にぜひ試していただきたい撮り方です。天候など光の状況にもよりますが、カラーフィルターをあれこれ取り替えるように設定を変える中でぴったりの設定が見つかるかもしれません。
5. 紅葉+α
人工的なものをできるだけ入れずに紅葉のみを切り取る撮り方ももちろんよいのですが、あえて+αを加えてスナップ的に撮影するのも紅葉の時期の撮り方・楽しみ方です。
建物や街灯などを入れることで、大自然の中ではなく身近なシチュエーションで撮影したであろうことが推察できる写真となります。特別遠くまで出かけなくとも、案外身近な場所によい撮影スポットがあるかもしれません。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*, Aモード, 1/500秒, F4.0, ISO 400
WB:5000K
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*, Aモード, 1/125秒, F2.8, ISO 640
WB:6000K
人物を入れる際に、それがどんな人かという情報ではなく、写真に人の気配やストーリー性を持たせてみたり、スケール感を感じさせたい場合には後ろ姿やシルエットを入れてみたりすることで、それらを感じられる写真となります。人の多い場所でどうしても人が写り込んでしまうような場面も、捉え方・撮り方次第で作品にプラスとなるはずです。
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
46mm相当*, Aモード, 1/160秒, F4.0, ISO 400
WB:6000K
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
80mm相当*, Aモード, 1/40秒, F5.6, ISO 400
WB:6000K
ピクチャーモード:Vivid
おわりに
本格的な登山や車がないと行けないような場所以外でも、電車やバスで行ける範囲、またはもっと身近な公園などでも紅葉撮影は楽しめます。山の方では紅葉の当たり年とも言われるこの秋、身近な紅葉にも期待しつつ、ぜひOM SYSTEMならではの機能もうまく活用して紅葉撮影を楽しんでいただけたらと思います。
*35mm判換算値
クキモト ノリコ
学生時代に旅と写真に興味を持ち、一眼レフカメラを手に入れる。主にひとり旅で国内外を回り、旅や日々のささやかな出来事をSNS等で発信している。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在は『たのしく、わかりやすい』をモットーに、OMシステムゼミのほか様々な写真セミナーの講師を務める。また、地方自治体による写真コンテストの審査員や、写真雑誌・WEBマガジンでの執筆も行っている。
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員
神戸出身・在住。晴れ女
