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写真を重ねて作品を作る『多重露出』で表現する幻想的な世界

写真家 市ノ川 倫子

撮影・解説 : 写真家 市ノ川 倫子

市ノ川 倫子 オフィシャルサイト

Instagram : @tomocco.12

2025年8月公開

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レンズをご紹介

はじめに

普段お使いのOM SYSTEMのカメラを使って、カメラの中で写真を重ねて作品を作る「多重露出」で世界を表現してみませんか。多重露出は多重露光ともいわれ、フィルムカメラの時代からある表現方法の一つです。写真を重ねることで1枚の写真で表現するのとはまた違う、新しい世界が現れます。OM SYSTEMカメラの中にある機能で簡単に操作することができます。今回は多重露出の作品を作るポイントをお伝えします。

多重露出の撮影方法

OM SYSTEMのカメラでの多重露出の機能は3つあります。1つは撮影時の多重露出、そして2つ目は再生時の画像合成、3つ目のCPボタンを使用した多重露出の撮影方法はOM-3やOM-5 Mark II等に搭載されている機能です。お持ちのカメラの機種を確認しながら、お好みの方法で撮影してみてください。

撮影時の多重露出

MENU画面から多重露出(新旧メニュー共に、カメラ2のマークから選択可能です。)
※設定が分からない場合は、取扱説明書から「多重露出」で検索

再生画像から多重露出

① MENUの多重露出撮影から、再生画+多重を選択、使用する画像を選択します。 ※RAW画像のみ選択可能です。

ここでは例として、カラスの写真を選択します

2枚目の写真として、青空を組み合わせてみます。カメラの液晶やファインダー上には、青空を背景に①で選択したカラスのシュルエットが同時に映ります。この時、カメラの向きを変える、ズームレンズで画角を調整するなどして、カラスの輪郭にあわせて雲の形などを調整する事も可能です。

撮影を行うと2枚の写真が合成され、青空とカラスの写真が出来上がります。

CPボタンからの呼び出し

OM SYSTEM OM-3 多重露出撮影

写真を組み合わせてみよう

多重露出は複数枚の写真の組み合わせなので、組み合わせる写真の露出(明るさ)がポイントになります。
組み合わせれば組み合わせるほど露出が上がってハイキーになっていくので、初めて多重露出を撮る方は明るい写真同士の組み合わせより、標準的な露出、もしくは暗めの写真同士を重ねる方が仕上がりのイメージがつきやすいかと思います。
暗い部分には重ねた画像が現れ、明るい部分にはあまり鮮明に像が出てこないので、その特性を活かして組み合わせを考えてみましょう。
1枚1枚は現実を映しているのに、重ね合わせることで非現実の世界が浮かび上がってきます。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
多重露出(2コマ)

どの写真を重ねていいかわからない、選ぶのが難しい、と思う場合はピントが合っている写真に、ピントをわざと外したアウトフォーカスの写真を重ねてみましょう。ピントの外し方は人それぞれ、まるで合っていない写真や、少し合っているように見える写真など試行錯誤してみるのもよいです。すると、ピントが合っている写真と比べて、多重露出で撮影した写真は、ふんわりした風合いが加わり、優しい雰囲気の写真になります。
初夏の明るい日差しを感じる柔らかい光が印象的なイメージになりました。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
多重露出(2コマ)

重ねる組み合わせは自由です。例えば、好みの色で組み合わせを重ねてみるのもそのひとつ。
イエロー・ブルー・ピンクの3色をパレットに色を載せるように組み合わせて。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
多重露出(3コマ)

また、あえて写真のピントを合わせない写真たち同士を重ねても幻想的な雰囲気が表現できます。
アウトフォーカスの写真を重ねて絵画のように、滲み出る色合いが印象的な作品に。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
多重露出(2コマ)

だんだんと多重露出の撮影の感覚がつかめてきたら、明るい写真同士の組み合わせにも挑戦して、仕上がりの好みを見つけていきましょう。
光に包まれるような雰囲気の写真は多幸感溢れる作品になりました。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO
多重露出(2コマ)

色や形の組み合わせの他、テクスチャーの重ね合わせ、例えば植物と石など…意外な組み合わせが思いもよらない表現につながることもあります。
記憶の底をのぞき込むような、何層にも重なったイメージを拾い集めるような世界に。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
多重露出(2コマ)

写真を3枚以上重ねると奥行きのある世界も表現することができます。
多重露出に正解はありません。2枚でも、3枚以上でも、自分の好きな表現を見つけてみてください。
山を歩いている中で出会った自然の風景を重ねて、生命の息吹を感じる一枚に。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
多重露出(3コマ)

おわりに

どの写真を重ね合わせるかで現れる世界は変わっていきます。多重露出で表現できる世界はあなたが撮った写真の数だけあります。

真っ白なキャンバスにあなただけの絵を描くように、自由に楽しみながら写真を重ね合わせていきましょう。多重露出は写真表現の一つの手段です。いろいろな手段を知ることでイメージしている世界をどのように表していけるのか、そのヒントとなればと思います。

*35mm判換算値

市ノ川 倫子

市ノ川 倫子

2013年より写真を撮り始める。どこかで見たことのある遠い記憶、子供の頃の空想や絵本のページの中の世界など、心の中を写真で映し出すように作品を制作している。主な個展、"Even if the sky cracks and lies drop”(2024年、Sony Imaging Gallery)、「遠い聲」(2024年、金柑画廊、目黒)、“blurs.”(2022年、金柑画廊、目黒)、“JARDIN”(2021年、ナインギャラリー、外苑前)、“PRESAGE”(2020年、ギャラリー子の星、代官山)、「しのぶれど」(2020年、OM SYSTEM PLAZA[旧オリンパスプラザ東京]、新宿)等。

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