Photo Recipe(フォトレシピ)

中望遠レンズで何を撮る
(風景スナップ・ポートレート編)

撮影・解説 : 写真家 木村 琢磨
2025年8月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8(以下75mm F1.8)とM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8(以下45mm F1.8)の中望遠・望遠レンズについて、前編では日常から風景スナップの作例を解説させて頂きました。見ていない方は是非、記事末尾にリンクがありますので、チェックしてみてください。後編の本記事では、花や都市などの風景スナップからポートレート撮影まで、2つのレンズを作例とあわせて解説いたします。
望遠レンズで風景スナップを楽しむ

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*
Mモード 1/400秒 F1.8 ISO200
アートフィルター:ポップアートI (+ソフトフォーカス効果)
このギュッとした圧縮感は望遠レンズの醍醐味ですね。藤棚の撮影は広角や標準レンズで撮影すると隙間が目立ちやすい被写体なのですが望遠レンズで圧縮することで隙間が目立たなくなり画面いっぱいに藤の花を写すことができます。広角レンズでパースを生かしてダイナミックに写すのも楽しいですが、望遠レンズで画面いっぱいに写して抽象的な表現もおすすめです。藤の花は桜と同じくピークが短い花であり、ピークを逃すと枯れて色が抜けてしまった花が目立ってきます。
そうなってしまうと広角レンズで撮影することが難しくなってくるのでそういう場合は望遠レンズで元気な藤が密集している部分だけ切り取るというのもいいでしょう。実際にこの作品も少しピークが過ぎた頃に撮影をしているので枯れて色が抜けてしまった花が目立っていたのですが75mmF1.8で撮影することでまだまだ元気な藤の花を画面いっぱいに収めることができました。さらにアートフィルターのポップアートを組み合わせることで紫色の藤の花を強調しています。藤の花の紫色が強調されたことによって上下二分割の構図がさらに際立ちました。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*
Mモード 1/1600秒 F1.8 ISO200
カラークリエーター
75mm F1.8を使って花を撮影するときはポートレートを撮影する様な気持ちで撮影します。縦横は好みの話になってきますが私の場合は縦位置で撮影することが多いです。横よりも縦位置の方が背景の情報を省きやすいのでより主役の花に注目してもらいやすくなります。
望遠レンズでF値を開放にするから背景はそれなりに適当でいいよね?と思っている人ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、背景がぼけるからといって背景をおろそかにしてはいけません。「ぼけ」にも情報があり、主役を引き立てたり、見る人の想像を掻き立てたりする重要な役割があります。ぼけるからこそ不要なものが目立ってしまうこともあるのでぼかすにしてもフレーミングは慎重に。この作品では背景に菜の花のぼけを意図的に画面上部に配置しています。そしてなるべく主役の菜の花と背景の黄色いぼけが重ならない様にフレーミングをしています。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*
Mモード 1/640秒 F8.0 ISO400
アートフィルター:ポップアートI
バリアングルモニターを使って超ローアングルから撮影した一枚です。F値を開放で撮影すると茎がぼけ過ぎてしまうので今回はF8.0まで絞って撮影しています。望遠レンズで撮影しているのでF8.0まで絞っても完全にはピントが来ていませんが茎がわかる程度にピントが来ているのでOKです。ローアングルで撮影することで背景を完全に空にして逆光気味に撮影しているので花びらが透けて黄色が明るく写っています。さらにアートフィルターのポップアートを使うことでさらに色味を強調しています。逆光条件で花に適正露出を合わせているので露出としては少しオーバー寄りになっています。その結果、空の色は青色よりも水色に写っています。露出をもう少しアンダーにすると空の色はより青色に近づきますが花が暗くシルエットの様になってくるので今回は花を優先して露出の決定をしています。構図は右下に花を配置して空の面積を広く確保しました。空の青と花の黄色、これは「補色」とよばれる関係にあります。青の反対は黄色なので色のコントラストが強調された状態になっています。望遠レンズでの撮影は背景がぼけやすいので背景をディテールとしてではなく色として捉えることも多いです。被写体と背景の色の関係性にも注目してフレーミングをしてみるといいでしょう。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*
Mモード 1/800秒 F1.8 ISO200
アートフィルター:ポップアートII
75mm F1.8のぼけの大きさを生かして背景の複雑なディテールの麦畑を抽象化しました。強烈にぼかすことで面白い模様のような背景に変化したので一輪の花が映える一枚になりました。ぼける事で大きく表情が変化する背景がありますので75mm F1.8では積極的に絞り開放で撮影してみるのもいいでしょう。この日は小雨が降っていたので雨の滴もいいアクセントになりました。レンズの解像度が非常に高いので絞り開放でもしっかりと雨粒が描写されていますね。小雨が降るどんよりとした天候だったのでアートフィルターのポップアートIIを使って発色をビビッドにしつつも少しシックな仕上がりになっています。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
多重露出(2コマ)
月が浮かぶ夜の砂丘……ではありません。今まで望遠レンズで撮影した作品をいくつか見ていただきましたが、この作品はどうしても一枚撮りでは不可能な結果になっています。
どこが不可能かというと、砂丘と月の両方にピントが合っています。F値を絞って撮影すればある程度ピントは合いますがここまでシャープなピントは得られません。
これは多重露出という技法を使って仕上げている一枚で、砂丘の写真と月を写した写真の2枚を重ねて1枚に仕上げています。OM SYSTEMのカメラはこの多重露出がカメラのなかで可能なのでPCに写真を取り込んで画像処理のアプリケーションを使って…という必要は全くありません。さらに良いところは重ねたい画像を半透明な状態でモニターに表示したまま撮影が可能なので厳密な一合わせが可能です。今回は多重露出をカメラの中で行い、カメラの中でRAW現像をして仕上げています。多重露出は2枚の写真を重ね合わせるわけなので、例えば1枚目と2枚目の写真の焦点距離を変えてということもできます。月の写真をもっと望遠で撮影して重ねると、より巨大な月が浮かぶ風景写真になりますがやはり違和感が生じます。私が月や太陽を多重露出するときにポイントとしているのは焦点距離を変えないことです。この作品も砂丘と月の写真どちらも75mm F1.8で撮影しています。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
多重露出(2コマ)
アートフィルター:クロスプロセスII
こちらも多重露出で仕上げた作品です。今回はアートフィルターのクロスプロセスIIを使ってフィクション感を演出しています。この作品も砂丘と月を同じ75mm F1.8で撮影して違和感を最小限に抑えています。無理に月を大きくしなくても何もない空に月が浮かんでいるとよく目立ちますよね。クロスプロセスIIの効果で地上の人物がシルエットになり、より一層月明かりで撮影した様な雰囲気になっていますね。多重露出のTipsとして撮影後に複数枚の写真を重ねることができることを逆手にとって太陽や月の重ねる用の写真を撮影で使うSDカードに入れておくといろんな風景に月や太陽を重ねることが出来ます。一度に最大3枚まで重ねることができるので、月や太陽に加えて前ボケの素材や色被りの素材などアイデア次第で自由度の高い作品に仕上げることが出来ます。特にぼけ素材は望遠レンズだと簡単に撮影できるので少しでも興味を持たれた方は是非多重露出にも挑戦してみてください。
展望台で望遠レンズを楽しむ
観光地に行くと展望台に登る人は多いと思います。かくいう私も観光地に行くとついつい展望台に登ってしまいます。
展望台から撮影となると超広角レンズで壮大な景色を…と思ってしまいますよね。ですが展望台で使って楽しいのが望遠レンズです。見通しの良い環境を望遠レンズで一部分だけ切り取る行為は、展望台によく設置されている硬貨を入れたら一定時間使える双眼鏡を除いているあの楽しさに通じるものがあります。
展望台から望遠で撮る場合は「目を引いた建物」をどんどん撮影してみましょう。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/200秒 F5.6 ISO200
モノクロプロファイルコントロール
この日は天気があまりよくなかったのでコントラスト強めのモノクロプロファイルコントロールで撮影をしています。
目を引いたのは一目瞭然、このねじれたビルです。ビルの顔が「右向き」だったので画面の右側に空間を作る様にフレーミングしています。ちょっとした細かいポイントですが構図を作るときに切れてもいい建物と切れてはいけない建物を考えて構図を組み立ててみましょう。今回の場合はねじれたビルの左手前の建物と右下のビルがフレームアウトしない様にバランスをとっています。単焦点レンズなので焦点距離が変えられないのでどうしようもないシーンもありますが画面の中の要素の優先順位を決めて組み立てていきます。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/125秒 F5.6 ISO200
モノクロプロファイルコントロール
これは目を引くような注目する建物がパッと見ありませんが、このシーンは特定の建物ではなく道路の形状と建物の向き・連なりに注目して撮影しています。
画面中央手前から奥に向かって「S字」を描く様に建物と道路が連なっていますね。ここを画面のセンターに配置して左右のバランスはフレーミングで微調整しています。
先ほどの作品の様に切れて良い建物と切れて欲しくない建物を決めて構図を調整しています。今回の場合は画面左にある高さのあるビルは切れて欲しくなかったのでそこを特に意識して構図を組み立てています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/125秒 F5.6 ISO200
モノクロプロファイルコントロール
これは注目したポイントがわかりやすいと思います。楕円形のトラックに注目して撮影しました。モノクロプロファイルコントロールの設定項目の1つ、カラーフィルター効果のシアンを選択してトラックが濃くなる様に調整しています。
画面の中でトラックの濃度が一番濃くなるため、画面に対して右下に配置をしています。白は軽く、黒は重く感じるので重たいものが下側にある方が自然に視線の誘導ができ全体のバランスも良くなります。本当はトラックに人物がいてくれたらもっと面白い一枚になったのですがこれに関しては100%運要素ですね。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/100秒 F5.6 ISO200
モノクロプロファイルコントロール
こちらもわかりやすく、交差点に注目してみました。日の丸構図で交差点の十字を強調して撮影しています。
45mm F1.8で撮影すると画角が狭すぎると思うかもしれませんが、その画角の狭さがより見せたいものを注目させる効果に繋がります。同じ45mmの焦点距離を使うのでもズームと単焦点とでは全く感覚が変わってきますので単焦点レンズでストイックに撮影してみるのもいつもと違う結果を得られて自分のなかの引き出しが必ず増えます。
展望台の双眼鏡で景色を見ている時って特別不自由に感じたことってあまりないと思います。ついついあれもこれも画面に納めたくなってきますが、要素を最小限に絞ることで見えてくる景色もあります。
望遠レンズの本領発揮?ポートレートと望遠レンズの関係性
中望遠~望遠レンズの出番が多い撮影ジャンルといえばポートレートが真っ先に思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか?
ポートレートで中望遠や望遠レンズが好まれる理由としては背景がボケることで人物が引き立つことやパースがつかないので顔の歪み(デフォルメ)が少ないため違和感のない写りになるからです。また圧縮効果で背景を大きく引き寄せ被写体を引き立てやすいという理由もあります。
今回はOM-3に45mm F1.8、75mm F1.8の2本を持ってモデルの友人と撮影に出掛けてみました。45mmと75mmとどちらも焦点距離が長いので基本的にはロケーションよりも人物にスポットを当てる撮り方になってきます。
この2本のレンズのいいところは「普通に撮影」しても雰囲気のある写真が撮影できることでしょう。特にいままでキットレンズなどF値がそこまで明るくないレンズを使用していた人ほど感動が大きいでしょう。私も初めて望遠単焦点レンズを使って開放で撮影した時のぼけの大きさに感動したのを今でも覚えています。
注意が必要なのは「ぼけ=写真が上手い」ではないのでどんなシーンでもF値開放でというのは危険です。今回のように「ポートレート作品」として撮影するのであればぼけを演出や表現として効果的に使えますが、記録写真など思い出として撮影する写真はあまりボケすぎていると「どこで撮影したのかわからない」という事態になってしまうので撮影する内容や目的に応じて適切なF値をセレクトしましょう。
中望遠・望遠単焦点レンズを手に入れたら最初は思いっきりぼけを楽しんで、レンズに慣れてきたらF値を色々試してピントのバリエーションも楽しんでみてほしいと思っています。
● モデル:羽原なおこ

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/320秒 F5.6 ISO200

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/3200秒 F1.8 ISO200
同じシーンをF値違いで撮影してみました。
まず1枚目からみていきましょう。これはF5.6のF値で撮影しています。このF値はキットレンズなどの望遠側でよくあるF値ですね。F5.6なので被写界深度が深くなりやすいF値ですが焦点距離が45mmということもありぼけていますね。中望遠レンズなのでピントが画面全体似合うパンフォーカスとまではいきませんが背景がなんとなくわかるくらいのピントの深さですね。これでも十分ぼけているわけですが、ポートレート撮影ではもっとピントが浅い写真が人気でピントが浅くなることでより人物が引き立ってきます。
2枚目は45mm F1.8の開放F値であるF1.8で撮影してみました。同じレンズでもF値が違うと随分と背景の雰囲気が変わりますね。単焦点レンズやF値の明るい大口径レンズが人気なのはなんと言ってもこの大きなボケ味。大口径レンズは絞ってヨシ、開けてヨシのレンズなので焦点距離の自由度よりも被写界深度の自由度を優先したい人は単焦点レンズを選びましょう。私のおすすめはレンズキットで1本ズームレンズを入手して、2本目のレンズに一眼ならではのぼけを楽しめる中望遠~望遠の単焦点レンズをチョイスというのがベストではないかなと思っています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/6400秒 F1.8 ISO200
アートフィルター:ネオノスタルジー

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*
Mモード 1/6400秒 F1.8 ISO200
アートフィルター:ネオノスタルジー
今回は撮影地が神戸だったのでここではアートフィルターのネオノスタルジーを使って雰囲気を演出しています。モデル撮影の場合アートフィルターを使って撮影というのがなかなか難しいですが今回使用しているネオノスタルジーをはじめ、ライトトーンやファンタジックフォーカスなど使いやすいアートフィルターもあるので是非試してみてください。
同じシーンで45mm F1.8と75mm F1.8を撮り比べてみました。どちらも焦点距離が通常よりも長いレンズですが45mmと75mmとでは背景の写り方が全然変わってきます。75mmの写真を見た後だと45mmがすごく広いレンズに感じるかもしれません。
人物の背景の段差を見てもらうと圧縮効果の差がよくわかると思います。どちらも圧縮されてはいますが75mm F1.8の方は壁が迫ってくるような迫力がありますね。また75mmの方が写っている範囲がより狭くなっているので背景に余裕がない時は焦点距離を長くして背景を整理するのにも役立ちます。ただ注意しなくてはいけないことがあり、特にこのように全身を入れて撮影する場合は焦点距離が伸びるほど人物とカメラの距離がどんどん離れていくので撮影スペースに余裕がないと難しいですね。撮りたいイメージと撮影環境が撮りたいイメージの条件に適しているのかもしっかり考えて使うレンズをセレクトする必要があります。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/3200秒 F1.8 ISO400
撮影の合間のお昼休憩に撮影した一枚です。パスタを食べるモデルさんを撮らせていただきました。
45mm F1.8で撮影していますが小さい席だと近すぎる焦点距離になりますが大きなテーブル席や椅子を少し引いても良さそうな環境であれば今回のようにバストアップで撮影することができます。お店で人物を撮影する場合は席選びも大切なのですが、特にポイントとして押さえておきたいのは光の入り方です。今回撮影した場所はモデルさんに対して横から光が差し込んでいる席だったので全体的に立体感が生まれています。光が横から当たると立体感が増し、後ろや正面から光が当たると立体感は弱くなります。この日は曇りの天気だったので光が柔らかく女性を撮影するのに適した光でしたが、これが晴天で直射日光が入るシチュエーションだったらコントラストも高く影が真っ黒に…なんてことも十分にあり得ますのでカメラやレンズなど機材だけでなく光を知ることも大切です。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/1250秒 F1.8 ISO400
アートフィルター:ポップアートII
モデルさんが注文したパスタを撮影させていただきました。
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8だと料理をクローズアップで撮影するのにちょうど良い距離感です。ただ最短撮影距離が0.5mなのであまり小さな料理や小物をクローズアップで写すのは難しいので、ある程度のサイズのお皿に盛り付けられた料理を撮るというイメージです。45mm F1.8の開放で撮影すると被写界深度が浅いのでそれだけで雰囲気が出ますし今回のように横からの光「サイド光」で撮影するとぼけが生み出す立体感と光が生み出す立体感の相乗効果を得られます。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*
Mモード 1/800秒 F1.8 ISO200
35mm判換算150mmなので全身を入れた撮影をしようとするとかなり引きが必要になります。撮影するのは大変ですが広角や標準レンズとは全くアプローチの違う写真を撮影することができます。個人的には焦点距離が長くなるほど被写体から距離をとって「標準レンズのように写す」のが好きです。この一枚も標準レンズで撮るようなフレーミングをあえて望遠レンズで撮影しています。背景が大胆に圧縮されることでどことなく非現実的な雰囲気を感じますね。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
150mm相当*
Mモード 1/1250秒 F1.8 ISO200
アートフィルター:ポップアートI
こちらも75mm F1.8を使って全身を写す撮り方をしています。この作品のポイントは超ローアングルから撮影して足元に生えている植物を前ぼけとして使っているところです。ぼけが大きいのでレンズの前にある植物はディテールが消失し「色」の情報のみになっています。さらに今回はアートフィルターのポップアートを使ってさらに色を強調し、OM Workspaceという画像編集ソフトを使ってファインチューンを適用して紙に印刷したような「マット調」で仕上げています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/1600秒 F1.8 ISO200
アートフィルター:ポップアートII
シロツメクサの群生を見つけたのでモデルさんに寝転がっていただきました。カメラのアングルを下げてF値を開放で撮影することでシロツメクサが手前から奥にかけてグラデーションを描くようなぼけになり立体感が生まれました。カメラを少し傾けることでぼけが左下から右奥にかけて動きが出るようにしています。今回は特にシチュエーションも生かしたかったのでモデルさんも真ん中を外して右下に配置する構図にすることでシロツメクサの入る面積を確保しています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Mモード 1/4000秒 F1.8 ISO200
アートフィルター:ポップアートII
先ほどのシロツメクサの群生に寝転がってもらったシチュエーションを真上から撮影してみました。F値は開放のF1.8で瞳(まつ毛)にピントを合わせて撮影しています。ピントはレンズと平行の「面」に合う性質があるため瞳と同じ面の口や鼻はピントが来ていますがその面から外れた手や服、耳などは程よくぼけています。ローアングルから撮影した時ほどのぼけは生まれませんがそれでも立体感は十分に出ていますね。私にとって、このシャープさと立体感が45mm F1.8を使って撮影する理由になっています。
まとめ
中望遠・望遠単焦点レンズって難しそう…撮影するものが限られるよね?と思っている人、多いと思います。私もカメラを始めたばかりの頃は標準ズームや高倍率ズームがあれば要らないのでは?と思っていたこともあります。
もちろん自分が撮影しているジャンルや被写体によって必要なレンズは違ってきますが、私の場合はあえて中望遠・望遠レンズだけ持って撮影に出掛けてみることもよくあります。
本来であれば私の場合はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROやM.ZUIKO DIGITALED 8-25mm F4.0 PROが一番適しているのですが最近は自分の引き出しを増やすために単焦点レンズを積極的に使っています。カメラマンになりたての頃にスタジオの先輩に言われた「なんでも単焦点レンズで撮れ」という言葉を思い出しながら撮影しています。普段見ていないものを見ることで新しい発見と出会いがあります。人によって単焦点レンズは不便だと思うかもしれませんが、その不便さが見せてくれる世界があります。
どんなシチュエーションでもこのレンズでしか撮れない瞬間が必ずあるわけなのでカメラとレンズと共にその瞬間を探しながら撮影をしています。
なにより、初めて単焦点レンズを使う人は被写界深度の自由度の高さに驚くでしょうし、単焦点レンズならではのキレの良さやヌケの良さに感動すると思います。
特にM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8とM.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8はぼけを楽しむには最適なレンズですしどちらもコンパクトなレンズなので標準ズームのお供にもちょうど良いです。
次の撮影日はこの気軽さを持ち出して普段とは違う世界をのぞいてみませんか?
*35mm判換算値

木村 琢磨
広告写真・動画制作会社 はち株式会社代表。岡山県在住。
地元岡山県の広告写真スタジオに12年勤めたのち2018年にフリーランスフォトグラファーとして独立。
2020年はち株式会社設立。広告写真業の傍ら写真作家としても活動。
「写真」の言葉にとらわれず独自の世界観を追求し続けている。
雑誌への寄稿、イベントやカメラメーカー主催のセミナーで講師としての登壇も多数。
デジタルカメラマガジン2024年11月号まで「図解で分かる名所の撮り方 Season2」執筆。
主な著書に『図解で分かる名所の撮り方』(インプレス)『風景写真の7ピース 撮影イメージがひらめくアイデアノート』(インプレス)など。