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夏。ささやかな、いのちの物語

写真家 林 幸恵

撮影・解説 : 写真家 林 幸恵

Facebook:林 幸恵
Instagram:Yukie Hayashi phtography

2025年7月公開

カメラアイコン 記事内で使用した
レンズをご紹介

はじめに

夏は様々なささやかないのちが色彩豊かな草花と一緒にいのちを謳歌しています。
ポイントとなる被写体や前景・背景などの要素を考慮し、物語性を感じるとっておきの物語を楽しみましょう。

撮影における注意点

  1. 撮影地を歩く際は必ず「何かいるかもしれない!」と辺りを観察しましょう 。
  2. 被写体は自身の身長より低いことが多いです。その為膝当てなど準備し、いつでも無理なく素早く低い姿勢で撮影出来るようにしましょう。
  3. 被写体の仕草やそのものの美しさをポイントに、雰囲気ある前景・背景に語らせるような表現をしましょう 。
  4. 被写体を見つけたらフレーミングが完成され、必要な機能が思いつけるようにしましょう。素早くシャッターを切る事が出来て、撮り逃がさない確率が上がるでしょう。
  5. 撮影しながら・終わったら、自然環境を記憶しておきましょう。
    (植生や周りの状況例田んぼで撮影 近くに川・林 何が生えているか太陽の位置など)
  6. 特に水辺での撮影は不安定だったりするので、足元に気をつけましょう。
    また雨の日・翌日などは 増水具合を考慮し、数日後にするなど検討しましょう。
  7. 折角なのでタイトルも考えてみましょう。被写体がいきものなので、擬人化も出来、意外とタイトルが浮かびやすいでしょう 。ふふっと笑顔になるような想像力を膨らませ広げてもらえるようなタイトルを考えると良いでしょう。

かえる

退屈な昼下がり

夏の水辺でみかけるのはカエル。このカエルはモリアオガエル。山間で見かける場合が多いです。特にカエルは人間のような仕草を感じるものが多いですから、その姿を撮り逃がさないよう出来るかぎり目を離さずじっくり観察してください。ふわふわ花園の中でなんだかのんびり退屈そうに見えたので、お花ボケをバランス良く入れました。丁度頭の上にきた時の半目?の表情と頭上のカメムシとの対比が微笑ましかった場面です。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROMC-20
600mm相当*
Aモード 1/100秒 F5.6 ISO1000

やあ、元気かい

アガパンサスの花園でじっーとごちそうを待っていたのは里山で見掛ける場合が多いアマガエル。アガパンサスは沢山の花の集合体です。お花を沢山入れすぎるとピントの合う場所も増えてカエルの表情や仕草が目立たなくなります。このような場合、お花は全部入れなくて良いのでカエルの姿が目立つように絞り値は開放か開放近くでバランス良く切り取ります。目が合った瞬間、ごあいさつが聴こえたように思いました。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROMC-14
420mm相当*
Aモード 1/250秒 F4.0 ISO1250

み~つけた!

昼顔の中にちょこんとおさまっていたアマガエル。90mmF3.5 Macro IS PROにテレコンバーター(MC-20)を付けて撮影。ボケ味がやわらかなレンズは花びら上部や花の下草が煩雑にならないよいうに綺麗にボカすことが出来ます。このような場面はなかなか出逢えませんので、慎重に真上から。角度も大切で、ちょっぴり見える黒目を入れられる角度だとかわいく見えます。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
180mm相当*
Aモード 1/400秒 F3.5 ISO320

とんぼ

パトロール

蓮の間を行き来するシオカラトンボを40-150mmF2.8 PROにテレコンバーター(MC-14)を装着し撮影しました。被写体を背景と共によく観察し手持ちで背景に蓮の花が来る処で連写モードを使用しています。特に飛ぶ被写体はトンボでも蝶でも動きや飛ぶパターンが微妙に違うので、はじめの観察が大切です。撮り逃がさないようにC-AFや連写撮影、プロキャプチャーモードなどなど、成功の確率を上げる設定や機能を最大限に使用し作品を作り上げることが出来ると良いでしょう。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROMC-14
320mm相当*
Aモード 1/400秒 F4.0 ISO1000

やさしい光

水から出た草にハグロトンボが休んでいます。儚げで夢の中にいるようなハグロトンボ感を出したくて、羽の色を出し、背景は明るく薄く表現しています。
適正露出・明るめ・暗め。露出は明暗だけではなく濃いめ・薄めの表現もあるのです。その場で感じ思い描いたイメージで露出を調整し決めても良いですし、AEブラケット撮影で異なる露出を複数枚撮影して、後から選ぶことも出来ます。時には適正露出ではなく、イメージを優先し表現することも楽しいでしょう。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード 1/640秒 F2.8 ISO800

風のぶらんこ

早朝2匹のハグロトンボがゆらゆらと揺れている葛(くず)のツルに留まっていました。背景の光ボケとツルが風に吹かれてナナメになったときにシャッターを切り、風で揺れている雰囲気を感じていただけるように表現しました。この作品は川に入って撮影しています。夏とはいえ早朝の川の水は冷たいので、濡れても冷えないような服装(私は沢に入る際の服装で撮影)と滑らないような足元にしましょう。カメラ機材を入れるザックなどは、誤って水面に触れた際に濡れないよう中にビニールなどに機材を入れて防水しています。また雨が降った後は増水し危険が伴うので、無理はせず数日撮影は止めたりしています。水辺での撮影は特に気をつけていただければと思います。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROMC-14
280mm相当*
Aモード 1/160秒 F4.0 ISO800

ひとやすみ

超望遠、150-600mmF5.0-6.3 ISで狙ったトンボです。超望遠で狙うとマクロレンズで狙うより、近寄らなくても遠くから狙え、被写体が逃げる前に撮影出来る確率が上がるでしょう。ロープや高い木など近寄れない場所で活躍します。超望遠というと、野鳥撮影などに使用するイメージがありますが、風景や昆虫、草花にももちろん使用出来ます。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS
600mm相当*
Aモード 1/160秒 F7.1 ISO640

蒼に染まる

90mmF3.5 Macro IS PROのマクロレンズならではの、やわらかなボケ味での撮影です。朝顔の白から蒼のグラデーションが美しくイトトンボの尾の青もポイントになりました。神経質な被写体でしたが、2倍のテレコンバーターを使用する事で、少し離れた位置から逃げられることなく撮影する事が出来ました。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROMC-20
360mm相当*
Aモード 1/15秒 F7.1 ISO500

しずく

ひとしずく

小さな被写体を主役にする際は、主役を強調しつつ雰囲気づくりが出来るよう前景や背景をボカすと良いでしょう。この作品はカタツムリが移動する動きを観察し、花に付いた水滴を身体に集めていって下に進んで行けば顔に水滴が集まることを予測してシャッターを切っています。もちろんフレーミングは花のボケのバランスを考え最初に決めました。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROMC-14
420mm相当*
Aモード 1/80秒 F4.0 ISO500

そーっとそーっと

露の付いたワレモコウの葉っぱを歩くアリです。小さな被写体ですから、フレーミングでは葉っぱの大きさとアリのバランスとしずくを何処まで入れるかを考慮しています。思わず心の中で思ったのが、しずくが落ちませんようにで、そーっとそーっと歩いてね。タイトルを付ける際はその場で感じた想いをそのまま付けても楽しんでもらえると思います。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード 1/640秒 F3.5 ISO500

朝露の絨毯

朝露をまとった蜘蛛の巣にバッタがいました。まだ蜘蛛のごちそうにはなっていないようです。主人公と周り・触覚の水滴の美しさを表現しつつ、煩雑にならないよう表現しようと思い目にピントを置きつつ絞り値は開放のF2.8を選択し、深度合成機能で撮影をしました。おかげで、立体的な蜘蛛の巣が煩雑にならず狙い通りの表現が出来ました。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード 1/1600秒 F2.8 ISO250

宝玉

体長は約2cm日本一小さなトンボのハッチョウトンボが被写体です。寒暖差が大きい風のない日の湿地での撮影です。夏の湿地は寒暖差が大きく、風が弱ければ沢山の朝露が降ります。そんな湿地の木道で被写体を探していると木道から数メートル離れた処に沢山の朝露をまとったハッチョウトンボが留まっていました。木道に寝転んで手持ち撮影であった為40-150mmF2.8 PROにテレコンバーター(MC-20)を装着し撮影しました。朝日が当たり始め、トンボは朝日が当たる前より少し体の角度を変えました。背景の玉ボケが見え始めたので絞り値は開放、フォーカスブラケット撮影を使用しピント位置の異なる写真から、宝石玉ように輝く水滴が美しく見えイメージに合ったものを選びました。状況の変化で表現も変化していきます。特に日が差し込む瞬間・前後は数秒・数分で判断しなければならないので、変化に柔軟に対応出来るようにしましょう。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROMC-20
600mm相当*
Aモード 1/80秒 F5.6 ISO320

共にいきる

ほっと一息

150-600mmF5.0-6.3 IS超望遠で撮る小さな蝶にチャレンジ。超望遠は野鳥撮影が多いと思います。しかし風景写真や昆虫・草花などにも使用することはもちろん可能です。この作品はホタルブクロの花先にヒメシジミがほっと一息しています。離れた場所で蝶が留まっている処を見つけてレンズを向けての撮影です。
超望遠の特徴、背景と被写体の距離感が圧縮されこの場合は蝶が際立ち、蝶とホタルブクロの全体にピントもある表現が出来ました。鳥以外のもっと小さな小さな被写体でも超望遠で作品づくりが可能です。超望遠の圧縮効果や寄らずに狙える利点を生かして作品づくりにチャレンジしてみましょう。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS
548mm相当*
Aモード 1/250秒 F5.8 ISO500

ないしょばなし

60mmF2.8 MACROの良さは小さくて軽くて雫や花芯等小さな被写体が手持ちで撮影できることです。私の場合、マクロ撮影のピント合わせはマニュアルで自分から寄ったり引いたりした方がピント合わせしやすいですが、不安があればMF アシスト機能を使用しても良いでしょう。速くて俊敏なアリなどのピント合わせをする際は、アリの行動を良く観察し、止まった瞬間を連写・プロキャプチャー、AFはC-AFを使用してみて下さい。色々試して自分・被写体に合った方法で確率を上げると良いでしょう。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード 1/640秒 F2.8 ISO800

コシタンタン

沢山のタカサゴユリの中で見つけたカマキリ。花に来る獲物(ごはん)を狙っているようです。はじめは横位置から作画しシャッターを切りつつ逃げそうにないのを確認し、正面からもフレーミング。正面からの方が狙っている表情を感じられ主人公の目に視線が注がれるよう絞り値は開放にしました。見つけた時に感じた印象を作品化する為には、被写体とレンズの位置関係、前景背景をどのくらい入れるか、意図を強調する為に絞り値をいくつにするかなど考えましょう。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード 1/160秒 F2.8 ISO200

おいしいかたち

ムシャムシャとおいしい部分を食べていたのは、オンブバッタ。オンブバッタと食痕の形がおもしろいのとどうだ、と言わんばかりの被写体の様子で、下の花びら部分はバランスを考えカットし食痕と被写体を強調しています。特に昆虫などの撮影の場合、魅せたいものを強調してフレーミングする為、花の全体像を入れなくても良い場合があります。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード 1/160秒 F2.8 ISO320

君はだあれ

ひまわりの花びらの後ろからひょっこりこちらに眺めていたオンブバッタ。昆虫の中でも正面の表情がおもしろいのがバッタ類です。主人公の表情をクローズアップする為、花びらで切り取って背景にひまわりの花ボケを配置して夏らしさを表現しています。特に昆虫などの撮影の場合、魅せたいものを強調してフレーミングする為、花の全体像を入れなくても良い場合があります。

レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROMC-14
420mm相当*
Aモード 1/125秒 F4.0 ISO640

最後に

ささやかないのちと対峙していると、細やかな視線で観察する力が養われ、色彩の美しさ、力強さ、儚さ、尊さ・・・など、間近で体感出来てドキドキという期待と不安の入り混じった感情やワクワクという、うれしさの感情で心躍る時間を楽しむことが出来るのです。観察・発見、作品にするという成功・失敗の経験のプロセスを沢山積み重ねていけば、次第に成功するプロセスが身に付き、瞬時に判断することが出来るようになるでしょう。そして被写体の大小に関わらず様々な被写体・撮影場面で役に立つことでしょう。

*35mm判換算値

林 幸恵

林 幸恵

三重県生まれ 関西で写真教室・セミナーを開催。
写真誌・雑誌等へ寄稿、カメラメーカーでの講演・撮影会を行っている。
自然が魅せる色彩の美しさ・大切さを写真で表現することが、自分が生きていく上のテーマとなる。
写真展
2007年「夢色の世界」富士フイルムフォトサロン
2016年「とっておきの時間」富士フイルムフォトサロン
写真集
2007年「夢色の世界」(風景写真出版)
2016年「のはら」 (風景写真出版)
活動
2007年よりフリーとして活動を開始
写真教室フォトスクールとっておき!を写真家米谷昌浩氏と共同主宰
のはらくらぶ主宰
カメラメーカー講師
ウェブサイト 夢色の世界 (fc2.com)

Facebook:林 幸恵
Instagram:Yukie Hayashi phtography

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