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ハスやスイレンを大きく撮影しよう!

写真家 吉住 志穂

撮影・解説 : 写真家 吉住 志穂

2025年7月公開

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レンズをご紹介

はじめに

夏は水辺を彩る花々が多く見られる季節。その代表的な花といえばハスやスイレンが思い浮かびます。どちらも花の形が似ているので混同されがちですが、ハスは水面から上へ葉を伸ばす挺水植物で花も高いところで花を咲かせています。一方、スイレンは葉を水面に広げる浮葉性植物で、水面に浮かぶように花を広げていますよね。同じスイレンでも、アフリカ原産の熱帯スイレンは色鮮やかで、茎を高く伸ばす特徴があり、日本では温室などで見られます。

そんな水辺の花を撮るときに悩ましいのが花との距離です。通常であればもっと大きく撮りたいと思えば近づくことでクローズアップできますが、水生植物となると水が邪魔して近づけません。そんなときは望遠レンズがあると便利ですね。

望遠レンズの特徴は遠くのものを大きく写せること。そのため、近づきにくい水辺の花もアップで写すことができます。また、背景をぼかすことも容易にできるので、ふんわりとした花写真に仕上げることができます。OM SYSTEMには多様な望遠レンズが用意され、35mm判換算値で、600mm、800mm、1200mm相当など、多くの選択肢があります。焦点距離の違いや、解放絞りの明るさ、接写能力など、レンズごとにさまざまな特徴を持っています。作品の撮り方の解説とともに望遠レンズの魅力も合わせてご紹介したいと思います。

花の撮影においてOM SYSTEMは画像を重ねる機能が充実しており、多重露出や画像合成を使うと一回露光では不可能な幻想的な世界を創り出すことができます。この写真はハスの写真、木漏れ日のボケ、波紋の3画像を重ねています。使用したM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO はボケが美しく、焦点距離もほどよく、私の相棒と言えるレンズです。ボケ画像を重ねるため、綺麗にボケるレンズはこのようなシーンでも有用ですね。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
多重露出(3コマ)

望遠ズームレンズを使ってハス畑を切り取りました。群生している場所の中でも偏りなく咲いている場所を狙うとバランスが良くなります。朝の6時に撮影しているので、また太陽の位置が低く、逆光で花が輝いたように見えます。夏といえども、この時間帯なら暑さを避けながら撮影できますね

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード 1/320秒 F4.0 ISO200

黒の中でハスの花びらが引き立ちます。薄陽が差し込む明るい花と日が当たらない陰の背景とに明暗差が生じるので背景がこのように黒く写るのです。肉眼では黒くは見えないのでどのくらいの明るさの差があれば黒く写るのかは実際に撮影して確認しましょう。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード 1/160秒 F2.8 ISO200

マクロレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroを使ってハスの花びらの先端に付いた水滴を狙いました。マクロレンズは通常のレンズより被写体に近づいてもピントが合うのでクローズアップできるのです。OM SYSTEMのマクロレンズは30mm、60mm、90mmと3種類あり、焦点距離が長いほど背景のボケが大きくなり、被写体との距離を離しても大きく写すことができます。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード 1/250秒 F2.8 ISO200

奥のハスにピントを合わせて、手前の花をぼかしました。このような手前側のボケを“前ボケ”と呼んでいます。形がわかる程度のボケ具合にしているので、前後にハスがあることがわかり、奥行き感が出ます。M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROを使ったのですが、35mm判換算値で600mm相当の焦点距離の長さを生かせば、近づけないハス畑の、さらに奥側にある花も主役にすることができます。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
600mm相当※ Aモード 1/640秒 F4.0 ISO200

前の作品と同じ前ボケを取り入れていますが、こちらは輪郭がはっきりしないほど大きくぼかしています。主役とぼかす花が離れていることはもちろん、手前側のぼかした方のハスにピントが合わないくらいに近づいてしまえば、より大きくぼかすことができます。主役の花が前ボケと重なり、ソフト感が生まれました。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
600mm相当※ Aモード 1/1000秒 F4.0 ISO200

ハスのつぼみをクローズアップしました。夕暮れの逆光なのでプラス側へ2EVの大幅な露出補正をかけ、つぼみの手前側が暗くならないように調整すると、周囲の葉はより明るく、本来緑色をしているのに黄色味を帯びた明るい色に写りました。ピンク色の花のボケも綺麗ですが、明るく写せば葉のボケも綺麗ですね。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
600mm相当※ Aモード 1/250秒 F4.0 ISO320

1枚目の作品と同様に、こちらも多重露出を使っています。1回目の露光ではシンプルな背景にしてハスを写し、2回目の露光では近くの花畑をぼかした画像を重ねました。ハスの周囲はハスの花か葉しかないので、このようなボケを重ねられるシーンはなかなかないのですが、多重露出を使えば、イメージをどんどんと膨らませることができますよ。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
多重露出(2コマ)

温室の熱帯スイレンをクローズアップ。本来であれば茎が上に伸びているのですが、茎が寝て花が水面についていました。しかし、ちょうど花と重なるように波紋が広がり、タイミングよくシャッターを切りました。ホワイトバランスを調整し、水の色が茶色く見えないように青みを加えています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当※ Aモード 1/320秒 F2.8 ISO800

岸からM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROでスイレンを狙いました。普段は同じ焦点距離であるF2.8の望遠ズームを使うことがおおいのですが、このレンズは絞りが一段違うぶん、かなりコンパクトな作りになっているので、気軽に持ち歩きたい方におすすめです。アートフィルターのトイフォトを使い、周囲を暗く落とすことで、より花の白さを際立たせるのもおすすめです。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
300mm相当※ Aモード 1/500秒 F5.6 ISO200

スイレンの葉は光を反射する特性があり、特に逆光で撮ると白く反射します。PLフィルターを使えば、ある程度の反射を軽減することができるのでいつもは使用していますが、ここではあえて反射を強調し、日の当たらない花をシルエット気味にしています。葉の周囲が表面張力でよりキラキラと反射していて、丸いボケが生じています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
270mm相当※ Aモード 1/500秒 F2.8 ISO200

雨が降る中で撮影したので、水面に雨が打ちつけているのがわかると思います。M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROは防塵・防滴性能が高いので、雨の中でも安心して撮影できます。カメラも雨対策が施されている機種を選べば雨の日でも撮影に集中できます。全体的にソフトかがっているのはこちらも多重露出をつかっているため。シャープに写した画像とぼかした画像を重ねています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
多重露出(2コマ)

まるで鏡のように花が映る様子を撮ることができました。可動式のライブビュー画面を見ながら、水面ギリギリのアングルで撮影しています。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS IIの最望遠側400mmで撮影したので35mm判換算では800mm相当となります。岸辺の水面に近いところなので当然手持ちでの撮影でしたが、手ぶれ補正が働いてくれているのでシャープに撮ることができました。暗めの露出とホワイトバランスやアートフィルターで青みを加えたことで月夜のイメージにしています。

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当※ Aモード 1/1600秒 F6.3 ISO200
アートフィルター:ポップアート(II)

最後に

今回はハスとスイレンをモチーフにお話ししましたが、近づけない場所での花撮影はいろいろなシーンでありますよね。そんなときでも望遠系のレンズがあると、遠くの花が引き寄せられ、大きく写すことができます。また近くに咲いている花でも、あえて望遠レンズを使うことで、大きなボケを生み出すことができます。ぜひシーンに合わせて、望遠レンズを選んで使ってみてください。

*35mm判換算値

吉住 志穂

吉住 志穂

1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、花のクローズアップ作品を中心に撮影している。女性ならではの視点で捉えた作品が多く、2022年にはOMシステムギャラリーにて写真展「Rainbow」を開催。また、写真誌での執筆や撮影講座の講師を務める。
日本写真家協会(JPS)会員
日本自然科学写真協会(SSP)会員
写真展「Heartful Flowers」「Ants」「Yin&Yang」「花時間」など

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