カメラアイコンPhoto Recipe(フォトレシピ)

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影した鉄道の写真

春風景に鉄道を添えてみませんか?

写真家 山下 大祐

撮影・解説 : 写真家 山下 大祐

2025年3月公開

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

はじめに

春めく風景のなかで何か撮りたいと思っているOM SYSTEMユーザーのみなさん。今春は鉄道風景写真にチャレンジしてみませんか。
鉄道写真というと、シャッターのタイミングやピント合わせがむずかしそうと億劫になってしまうかもしれません。でも心配はいりません。このフォトレシピを読んでフィールドに出れば、鉄道写真でのシャッターやピント合わせは、場面によってまったくシビアでないということがわかるはずです。そして風景の中に鉄道が入ることによって、その風景に主役の存在と旅情が生まれ、素敵な風景がより生き生きとしてくるでしょう。
最初に春の鉄道風景の魅力をかたりつつ、あとに2点ほどテクニックもご紹介したいと思います。

春の鉄道風景の魅力

1.里野の梅

里野の風景にぴったりな花として梅の花があります。花自体が小さく密度もまちまちなので、暗めの背景と逆光線を使うと存在が際立ちます。桜が咲くまでは梅と鉄道を撮って春を感じるのがいいでしょう。AI被写体認識AF(鉄道)も機能するシーンですが、ロングショットなのでピント追従の必要性は低く、置きピン(マニュアルフォーカスでピント位置を固定)して待ち構えても問題ありません。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
114mm相当*
Mモード F2.8 1/400秒 ISO 200

2.桜と菜の花

花見の名勝でなくても、枝ぶりの良い桜の木が一本あれば絵づくりは可能です。もし付近に菜の花の群生が少しでもあれば、その黄色を少し頂いてより華やかな画面にすることができるでしょう。列車は基本的に、前面が見える場合はヘッドライトの点いた先頭側を撮るようにします。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
128mm相当*
Mモード F5.0 1/800秒 ISO 400

3.菜の花のベール

こちらは菜の花の群生にレンズを近付けて、ライブND機能を使って流し撮りしたものです。前ボケとなった黄色い花が大きくブレて、まるでベールをかけたように描写されています。かなり尖った例ですが、こうした色表現も春は楽しめます。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II
375mm相当*
Mモード F16 1/4秒 ISO 200
ライブND(ND32)

4.山と桜と新幹線

新幹線が伊吹山の麓をいく滋賀県での写真です。OM SYSTEMならではの小型軽量な望遠画角で伊吹山をそびえ立つ背景として演出しています。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II
150mm相当*
Mモード F5.6 1/2000秒 ISO 800

5.ビビットな主張 芝桜

4月末ごろから芝桜もねらえます。整備された観光用でなければなかなか撮りづらいので、有名どころで撮りましょう。この作品は北海道木古内町の個人庭園で咲かせている芝桜で、近所の人たちで協力して観光客への対応もしている素敵な場所です。撮影地での会話もハートウォーミングな楽しみです。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
26mm相当*
Mモード F5.6 1/1600秒 ISO 400

6.新緑のころ

新芽が芽吹く5月上旬頃までが春の風景。締めくくりは山形の名峰月山と山形新幹線つばさのイメージです。実はこの規模の雪形と若葉が撮影できるのは、2,000m級の高山がある東日本に限られます。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Mモード F4.0 1/3200秒 ISO 400

撮影テクニック

1.鉄道車両より風景を大きくしましょう

初心者に陥りやすいのが、写真のなかを占める列車の面積が大きくなってしまうことです。鉄道を意識するあまり、被写体に近づき過ぎたり、より撮影倍率の高い望遠レンズを選択したりすることが原因です。こうなるとまわりにどんな春の風景が広がっていても写真を見る人にはその広さが伝わりません。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
146mm相当*
Mモード F8.0 1/1000秒 ISO 800

画面内で列車を小さく扱うには、線路からの距離を取りカメラに近いところに春の風景を配置してあげることがもっとも簡単です。こうすることで上の写真のように、桜と列車における実物の大きさに関わらず、画面上では桜のボリューム感を演出することができます。つまり線路脇ばかりに目を向けていると絶好の撮影ポイントを見逃す可能性があるということです。乗っている列車の車窓から桜の木や菜の花畑などが見えたなら、その花側に回り込んで小さくても線路が見えるかどうかを確認してみましょう。
画面上での列車の大きさについては、かなり小さくなっても構いません。風景の美しい限りそちらを大胆に取り込んでしまって、列車は思い切り小さくしてみることも大事です。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
26mm相当*
Mモード F5.6 1/1600秒 ISO 400

線路からの距離が取れない場合はレンズの画角で大きさをコントロールしましょう。ここでも花などの実物大が小さいものは、やはりカメラに近いところに配置し列車よりも面積を取る必要があります。芝桜など地面に咲く野花なども同様の方法で収めることができるでしょう。必然的に空が入りやすくなるため曇天時はおすすめしません。
車両を小さく扱うことには技術上のメリットもあります。画面上での列車の移動速度が遅くなるため、シャッター速度の選択に余裕が出てくるということと、シャッタータイミングがそこまでシビアでなくなります。上の写真のような構図であれば、秒間10コマ程度の連写で撮れば、思ったところに写し止められます。私がOM-1 Mark IIを使っていてもデフォルト設定を静音連写にしているのはそのためです。また、列車が横を向いているケースでは、線路付近に置きピンして撮っても問題ありません。

2.鉄道写真というからには小さくても列車が主役

前段で列車の大きさを小さくすることを徹底していましたが、そこにはもう一つ必要な条件があります。それは、どんなに小さくても列車に目がいくように存在感を立たせることです。小さく写し込んだ列車を、写真を見る人が意識できなければただの風景写真になってしまいます。そうならないためにもっとも簡潔な方法は、鉄道以外の人工物を見せないことです。自然風景の中に唯一の人工物が入り込むことほど目立つ方法はありません。しかしこの方法は簡潔なだけで簡単ではありません。実際には家屋の家並みや鉄道自体の地上設備などがあって、そう都合よく排除できません。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
68mm相当*
Mモード F6.3 1/500秒 ISO 200

そこで鉄道車両自体の色に注目してみましょう。車体の色が白や黄色など比較的明るい場合は、自然風景のなかにおいても目立ちやすく撮りやすい列車といえるでしょう。明るい色の場合、光を手前から受けた順光状態では、特にその効果が出ます。上の写真では福島の名山である吾妻連邦とりんごの花を目一杯取り込んで、新幹線「つばさ」の登場を待ちました。

写真家 山下 大祐がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIで撮影した鉄道の写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
24mm相当*
Mモード F5.6 1/2000秒 ISO 1250

ほかには、抜けの良い背景に列車を配置する手もあります。築堤上や橋梁上に列車があればそれだけ背景との距離が開けやすく抜けが良くなります。そうすることで遠目にも列車が認識しやすいものになるのです。また構図の工夫も大切です。いわゆる目線誘導です。鉄道車両と風景のウエイトを対角線構図で置いてあげることで、列車を目立たせる効果が出てきます。上の写真は、岐阜県、飛騨一ノ宮にある臥龍桜の迫力と列車を収める空間を考慮して、バリアングル液晶を生かしたローアングル撮影をしています。こちらもピントは線路に置きピンです。

おわりに

いかがでしょう。動きものの印象が強い鉄道写真でありますが、風景との撮影となると意外とゆったりした写真が多かったのではないでしょうか。それは日本の風景、そのなかを走る鉄道の豊かな表情と旅情を伝えることが目的で、車両の迫力やカッコ良さに迫ったものではないからです。みなさんが日頃見ている素敵だと思える風景に、鉄道を小さく登場させることは、それほどむずかしくないと思えてきませんか。

最後に、撮影時の心がけについて短く触れます。
自分のいま立っている場所が誰かの私有地かどうかは、道路ひとつとっても厳密にはわかり得ません。心がけたいのは、クサリやロープ、三角コーンなどの何かしらの意思表示を跨いでいかないことです。立ち入り禁止の表示などは最たるものです。そして列車からの視点で不安を感じさせないこと。この目線で行動するだけで大きなトラブルは避けられるはずです。ほかの撮影者とはコミュニケーションをはかって、その場所にいる皆が最善の成果を撮って帰れるように善処することも大切だと思います。

*35mm判換算値

山下 大祐

山下 大祐

1987年兵庫県出身 日本大学芸術学部写真学科卒業
幼い頃からの鉄道好きがきっかけで写真と出会い、今度は写真作品制作の舞台として鉄道と関わるようになる。幾何学的な工業製品あるいは交通秩序としての鉄道を通して、人や自然の存在を表現しようと制作活動を行なっている。
カレンダー、CM撮影などに携わるほか、鉄道誌、カメラ誌等で撮影・執筆・講談を行う。

2018年 個展「SL保存場」富士フォトギャラリー銀座
2021年 個展「描く鉄道。」オリンパスギャラリー東京・南森町アートギャラリー

株式会社OfficeYAMASHITA代表
日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員

ウェブサイト:http://www.daisuke-yamashita.com
SNS:https://www.instagram.com/yamadai1987/

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

カメラアイコン鉄道写真ならOM SYSTEM 鉄道部

カメラアイコン合わせて読みたい:
フォトレシピ・インタビュー