Photo Recipe(フォトレシピ)

春の訪れを探しに出かけよう

撮影・解説 : 写真家 清家 道子
2025年3月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
長い冬が終わり待ち焦がれた春が来ると、軽やかなカメラを持って出かけたくなります。
マクロをはじめとした様々なレンズを使って、春の花たちを切り取りましょう。
接写をしたり、広角で撮ったり、小型軽量のOM SYSTEMのレンズなら、思い通りに撮影することができます。ぜひみなさんの春の撮影の参考にされてください。

春一番の桜は河津桜です。艶やかなピンクの色を見ると心まで暖かくなります。それでも全体的に撮るには少し早いかな?と思う時はマクロレンズで切り取ってみましょう。
少しふんわりと仕上がるように背景の色を考えながら少しずつ立ち位置を変えて撮ります。ここでは桜の後ろにあるミモザの花の黄色を背景色にし、パステル調でまとめてみました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
180mm相当*
Mモード F3.5 1/400秒 ISO 100

蝋梅(ろうばい)は1月頃から2月にかけて咲く花です。花の質感が蝋に似ていることから蝋梅という名前が付けられています。まだ春が遠い1月下旬くらいから九州の里山のあちらこちらの庭先や畦道なので見かける花ですが、この黄色い花を見ると「春はもうすぐだな」と感じます。
蝋梅の花はまばらに咲き、密集していないので撮りにくい花でもありますが、私の場合は太陽の光条を入れて華やかさを演出するようにしています。また蝋梅の花びらは半透明なので逆光にすることで蝋梅の色を表現できます。この場合は太陽の光がギリギリ半分隠れるように、手持ちで微妙にカメラの位置を変えながら光条が綺麗に見えるように絞り値とポジションを調整しました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO
34mm相当*
Aモード F11 1/800秒 ISO 64 -1.3EV

春になり、暖かくなると朝露が楽しめる時期になります。少し早起きして草原や里山を散策してみましょう。太陽が登り気温が上がってくると足元の草にキラキラと露がついて輝いてきます。
太陽を逆光の位置にし、思い切りカメラポジションを低くして手持ちで撮影します。ピントは遠くの菜の花に合わせています。レンズのすぐ前には無数の朝露があり、レンズに水滴が付くか付かないか、の距離まで接写しています。絞り値を一番小さく(開放に)して遠くにピントを合わせることで朝露の丸ぼけを最大限に演出できます。夜はまだ寒く、日中は暖かいこの季節に撮れる被写体です。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
80mm相当*
Aモード F2.8 1/1250秒 ISO 100 -0.3EV

菜の花は春になるとあちらこちらで群生し、黄色い色を楽しませてくれます。ただ菜の花だけを撮ってもまとまりにくく、どうしても平凡な印象の写真になってしまいますし、黄色という色はとても強い色なのでどのように切り取って良いのか迷ってしまうことも多々あります。
一つの方法としては、菜の花の黄色をアクセントカラーにして少量使うという方法です。ここでは林のシルエットを主題にして背後に少しだけ菜の花の黄色を添えています。望遠ズームレンズを使うことで切り取りやすくなります。デザイン的に構図を決めることで落ち着いた雰囲気になりますね。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
400mm相当*
Mモード F7.1 1/80秒 ISO 200

2月下旬から3月中旬にはミツマタの花も楽しみの一つです。
ミツマタは群生して一斉に花を咲かせ、春の杉林を華やかに彩ります。花は濃い黄色で、丸い手毬のような形が可愛い印象です。様々な撮り方がありますので標準レンズから望遠レンズまで幅広く使ってレンズワークを楽しんでみましょう。
まずは望遠ズームレンズで一番綺麗な花にフォーカスし背景の杉林の木漏れ日を丸ぼけにさせます。まだ咲きはじめで全体に開花していない場合などはこういう撮影で綺麗に撮ることができます。
M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II
218mm相当*
Mモード F5.2 1/160秒 ISO 250

明るいズームレンズを使って前ボケさせると、また違ったミツマタの表情になります。ズームの望遠端にレンズを伸ばし、ピントは一番遠くの杉に合わせます。絞り値を一番小さく(開放に)設定して手前のミツマタをふんわりと表現します。ミツマタは見頃を過ぎると白っぽく変色しますが、こういう時は前ボケにさせて撮影するのも良いでしょう。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
80mm相当*
Aモード F2.8 1/100秒 ISO 64 -0.7EV

杉林とミツマタを俯瞰して撮ると森全体の雰囲気が伝わってきます。
杉の常緑樹の緑とミツマタの黄色は春から夏への季節を思わせます。
広角域で撮影すると少し見頃を過ぎてしまったミツマタもまた彩りを取り戻し遠くまで続く群生の勢いを感じます。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
80mm相当*
Aモード F8.0 1/6秒 ISO 64 -2.0EV

開きはじめた可憐な梅の花。星を狙って行ったのですが残念ながら薄雲が広がりはじめました。
OM SYSTEMの優れた機能のひとつである、カメラ内で比較明合成ができるライブコンポジット機能を使い、筋状の雲が流れる様子と星の流れをうまく捉えることが出来ました。真っ暗で梅の姿が消えてしまうため時々LEDを照らしながら撮影しています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
28mm相当*
Mモード F2.8 15秒 ISO 800 ライブコンポジット撮影

ライトアップされた枝垂れ桜はまるで夢のように美しいです。
撮影する時のポイントは、完全に暗くなる前の薄暮の時間帯「ブルーモーメント」を狙う事。
ライトアップされたばかりの瞬間はまだ空の青さが残り、桜の色との調和も美しいです。真っ暗になってしまうとライトの光が目立ち過ぎて全体のコントラストが強くなります。ライトアップを撮る時は少し早い時間からスタンバイして一番良い時間帯で撮ることをお勧めします。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
32mm相当*
Aモード F8.0 1.6秒 ISO 320 -0.7EV

桜の写真表現は様々なものがありますが、雰囲気だけ撮ることもまた楽しいですね。絞り値を一番小さく(開放に)設定してハイキー気味にして撮影しました。手前には無数の桜の枝が前ボケになっています。遠くの空は夕焼けになりかけていて暖色系の色合いがふんわりした描写をさらに演出しています。桜の気配だけ感じさせる一枚に仕上げています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
80mm相当*
Mモード F2.8 1/80秒 ISO 64

春の名残。
花筏は春の終わりを告げる魅力的な被写体です。桜は散ってしまってもまだ私たちの目を楽しませてくれます。桜並木の下に流れる川に落ちた花びらをスローシャッターで描きました。よく見ると花びら一つ一つに光が当たって光の筋も出来ています。このように花筏と光を撮影する場合は太陽の光が逆光で花筏に当たる場所を探して撮影するといいですよ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
46mm相当*
Mモード F16 1.3秒 ISO 100

オオアラセイトウとムラサキハナナは2月頃から咲く春の花です。九州では林道や里山のあちらこちらで群生しているのを見かけますが色が美しく春を代表する花の一つです。
花の色合いを最大限に美しく見せたいときは立ち位置を工夫して逆光撮影してみましょう。光が当たった花の花びらが透過光になり紫の色がより鮮やかになります。そして影になっている花とのグラデーションとが一枚の写真に立体感を与えています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
38mm相当*
Mモード F5.6 1/100秒 ISO 200
終わりに
OM SYSTEMの軽いカメラとレンズだからこそ撮れるものも多くあります。
「ちょっとそこまで出かけてみようかな」という気軽な気持ちで撮影できるのもOM SYSTEMの魅力です。どのレンズも軽いので数本バックに入れて持ち歩いても負担にはなりません。色とりどりの春の花を自分らしい視点でぜひ撮ってみてくださいね。
*35mm判換算値

写真家 清家 道子
福岡生まれ。カラーコーディネーターを経て風景写真家となり、九州を中心に撮影活動している。現在企業カレンダーを手がける他写真雑誌への寄稿、カメラメーカーでの講演、撮影会などを行っている。
写真展
2016年「またまの宇宙」をリコーイメージングスクエア
2020年「純色風景」ソニーストア
2022年「光の記憶」ソニーストア
2024年「水の惑星」OMシステムギャラリー
写真集
2016年「またまの宇宙」(日本写真企画)
2017年「TheGiftOfRanunculus」(風景写真出版)
著書
「美しい風景写真のマイルール」 インプレス
「極上の風景写真フィルターブック 日本写真企画
2020年よりYouTube 清家道子チャンネルで風景写真、風景ショートムービーなどを配信中。
OM SYSTEM seminars Speakers
JPS日本写真家教会会員