Photo Recipe(フォトレシピ)
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野鳥の表情を撮影してみよう
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撮影・解説 : 中村 利和
2024年12月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
以前、私の写真を見て鳥にも表情があることがわかったと言ってくれた人がいました。私は常々、鳥たちにはできるだけプレッシャーをかけないよう、鳥たちのリラックスした自然な表情や仕草を撮影したいと考えているので、その言葉は自分の撮ってきた野鳥写真が少しでも見てくれる人に伝わっているのかと、とても嬉しく思えました。
そしてもう一つ、その鳥の一番その鳥らしい場面や行動ということを考えながら撮影をしています。その鳥らしさは自然な表情や仕草につながります。鳥にプレッシャーをかけず、自然に振る舞ってもらうということが、鳥たちのためでもあり、良い写真を撮影するコツでもあるのです。
それでは鳥たちの自然な表情や仕草を撮影するには、どうしたらよいのでしょうか。
こちらの存在に気付かれないように撮影する
撮影していることを気付かれないようにする、こちらの気配を極力消して撮影するには、ブラインドという小さなテントに入って鳥たちが来るのを待つ方法や、ブラインドの代わりに車の中から撮影するといった、こちらの姿を完全に隠して撮影することが考えられます。
ブラインドや車での撮影では、あらかじめ目的の鳥が来る場所の目星をつけておく必要があるので、事前の観察が重要になってきます。フィールドによっては観察小屋や観察舎、観察するための窓のある壁が設置されている場所もあります。そのような施設を利用するのもいいでしょう。
こちらには気が付いていても無視してもらう
別の記事(海岸、干潟の野鳥を撮影してみよう)でも触れていますが、鳥にはここまでは近づいても大丈夫という、安心できる距離があり、その距離の外にいる人間にはあまり警戒しないで、リラックスした様子を見せてくれます。ただし大きな声で話をしたり、大きく速い動きをしたりすると、その距離はずっと長くなってしまいます。
野鳥に向き合っているときは、できるだけ静かに、動きもゆっくりと、そして自分のシルエットをより小さく見せるように、立って撮影するよりは座るなど工夫すると少しだけ近くに寄らせてくれるかもしれません。撮影中も、その鳥が警戒していないかを注意しながら撮影するようにしましょう。
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オオマシコ
雪の上に落ちているイタドリの種を夢中で食べているオオマシコはあまりこちらを警戒することもなく、雪の上を歩き回っていました。こちらも警戒されないように雪の上に座り、できるだけ低い位置から撮影しました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Aモード F4.5 1/1600秒 ISO 800 +1.0EV
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カイツブリ
冬の早朝の公園で出会ったカイツブリを水面ギリギリまで下げた位置から撮影。背面のモニターを見ながらフォーカスはAI被写体認識AF(鳥)に任せて、私はフレーミングに専念することができました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Aモード F4.5 1/1600秒 ISO 800 ±0.0EV
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ツグミ
芝の上で採食するツグミを見つけたので、ツグミらしい胸を張った姿勢を狙って温かい日差しの中で捉えました。普段からその鳥らしいポーズというのも考えて撮影しています。あえて芝の前ボケを入れふんわりとした雰囲気を狙いました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
713mm相当*
Aモード F4.5 1/500秒 ISO 400 +1.0EV
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ヒドリガモ
晩秋の黄色く色づいた木々を背景と水面に写し、画面全体が黄色くなる場所を探し、ヒドリガモがそこに泳いでくるのを待って撮影。水面ギリギリまでカメラ位置を下げられる場所はそれほど多くないので、普段から周りの状況を気にしていて、黄色く色づいた頃を見計らっての撮影です。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Aモード F4.5 1/200秒 ISO 800 +2.0EV
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ミソサザイ
早春のまだまだ寒い頃からさえずり始めるミソサザイ。頻繁にさえずるソングポストを見つけ、早朝に逆光で背景が明るくならない場所で待つと、白い息を吐きながら元気に囀る姿を撮影することができました。ブラインドを使って撮影しています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
700mm相当*
Aモード F4.5 1/125秒 ISO 800 -0.7EV
追うのでは無く、待つということ
野鳥の観察・撮影を始めたばかりの人は、鳥にどのくらいまで近づけるのかがわからない人が多いのではないでしょうか。これはたくさんの鳥を見て、経験値を積み上げることで、だんだんわかってくることでもあります。鳥たちが自然に振る舞ってくれる距離を考えつつ、「追う」のではなく「待つ」ということを意識して鳥たちに対峙すれば、鳥たちも生き生きとした表情を見せてくれると思います。
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マキノセンニュウ
虫のような声はよく聞こえるけどなかなか姿が見られない鳥、マキノセンニュウ。前日の夕方この場所で見かけたので、翌日の早朝から待っていると、狙い通りその可愛らしい姿を現してくれました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*
Aモード F5.6 1/640秒 ISO 400 -0.3EV
内蔵テレコンON
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ベニマシコ
ベニマシコが数ペア飛び回っていた場所近くに車を停めて静かに待っていると、すぐ横のハマナスに綺麗なオスがとまりました。驚かせないようにゆっくりと窓枠にレンズを乗せて撮影を始めると、何か下を気にする仕草が見られました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
527mm相当*
Aモード F4.5 1/200秒 ISO 800 +0.3EV
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シマエナガ
シマエナガの群れが餌を探しながら賑やかに移動していたので、向かう方向に先回りして待っていると、だんだん近づいてきました。光も柔らかめな逆光でシマエナガの輪郭をふんわり浮き上がらせてくれました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Aモード F4.5 1/1600秒 ISO 640 +0.3EV
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コチョウゲンボウ
コチョウゲンボウの休息する場所がわかったので、近くに車を停めてブラインドがわりにして撮影。地形の関係で思ったより近い場所にしか停められなかったが、車にはあまり警戒しないようで彼は目の前に飛んでくるとのんびり休み、うとうと眠り込む姿まで見せてくれました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO + MC-14
840mm相当*
Aモード F5.6 1/500秒 ISO 400 +0.3EV
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メジロ
高原にある水場でブラインドを設置してのんびりと水浴びにくる鳥たちを待っていると、賑やかな声と共にメジロの群れがやってきました。ブラインドに入っていると思いがけず鳥が近くに来ることがあるので、鳥を驚かせない静音シャッターが有効です。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
713mm相当*
Aモード F4.5 1/1000秒 ISO 800 -1.3EV
まとめ
いかがでしたでしょうか。
単に被写体として野鳥を見るのではなく、撮らせてもらっているという意識を持って楽しく観察・撮影をしていれば、きっと素晴らしい出会いが待っていることでしょう。
*35mm判換算値
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写真家 中村 利和
神奈川県生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、アシスタントを経てフリーランス のフォトグラファーとして活動。高校生の頃、野鳥の観察、撮影を始めて以来、身近な野鳥を中心にその自然な表情、仕草を記録。「光」にこだわり、鳥たちの暮らす環境、その空気感を大切に撮影を続けている。著書に写真集「BIRD CALL」青菁社 「鳥の骨格標本図鑑」文一総合出版(共著) 写真集「鳥の肖像」がある。日本野鳥の会 日本自然科学写真協会(SSP)会員