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写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

美しいイルミネーション撮影に挑戦しよう!

写真家 斎藤 巧一郎

撮影・解説 : 写真家 斎藤 巧一郎

2024年11月公開

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

はじめに

冬の初めになり、街はイルミネーションに美しく飾られます。
パーティーに出かけるような楽しいムードで、カメラを持って出かけましょう。
そんな街を美しく撮るためのテクニックをみてみます。

1 ホワイトバランス(色味の設定)

標準の設定のままでも十分にきれいに撮れるのですが、WB(以下ホワイトバランス)の設定で色合いを変えることができます。見た目に近い正しい色合いを再現することも大切ですが、その場で感じた色をカメラで表現するのもいいです。

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

WBオートで、カメラに任せた色合いは目に見えるものに近い色合いで撮れています。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
34mm相当*
Aモード F1.8 1/6秒 ISO 100 -0.7EV
WB:オート

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

WBを日陰(7500K)に設定すると赤みが強まり、暖かな印象の色合いになります。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
34mm相当*
Aモード F1.8 1/6秒 ISO 100 -0.7EV
WB:日陰(7500K)

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

WBを電球(3000K)に設定すると青みが強まり、寒々しい印象の色合いになります。その場所の印象を色合いで表現してみるといいです。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
34mm相当*
Aモード F1.8 1/6秒 ISO 100 -0.7EV
WB:電球(3000K)

2 シャッタースピード

本来、シャッタースピードは撮影モードをSモードやMモードに設定して値を変更しますが、今回はAモード(絞り優先)で撮影した場合のシャッタースピードの値に注目します。夜ですのでシャッタースピードが遅くなり手ぶれが起こりがちになるので、ISO感度を上げて手ぶれしないように対応します。

ただ早すぎるシャッタースピードでは、フリッカー現象といわれる写真が部分的に暗くなることが起こる場合があります。カメラの機構上の問題ですが、照明の種類によっても起こるシャッタースピードが異なりますが、1/125秒以下の遅いシャッタースピードに設定すると、フリッカー現象は起こりにくいです。

撮影して再生確認をしながら撮影をしてみてください。拡大することも忘れずに。

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

1/400秒と早めのシャッタースピードのため、写真左上が暗くなってしまうフリッカー現象が起こっています。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Aモード F1.8 1/400秒 ISO 6400 +1.0EV
WB:電球(3000K)

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

こちらは1/3秒と遅めのシャッタースピードで正常に写っています。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Aモード F22 1/3秒 ISO 6400 +1.0EV
WB:電球(3000K)

イルミネーション撮影では、少し遅めのシャッタースピードがおすすめです。というのもイルミネーションのイベントが催される会場には多くの来場者があり、顔がはっきりと写っているのはあまり良くありません。SNSなどに写真をアップする際に肖像権が気になるところです。OM SYSTEMのカメラは強力な手ぶれ補正のおかげで、遅めのシャッタースピードでも、手ぶれを気にせずに撮影する事ができますね。

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

歩いている人なら遅めのシャッタースピードで、動きによる被写体ブレがおこり顔ははっきり写らず人影として写り、いい雰囲気になります。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Aモード F1.8 1/8秒 ISO 100 +0.3EV
WB:電球(3000K)

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

また遅めのシャッタースピードでは車のライトが軌跡として写るのも面白いです。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
34mm相当*
Aモード F14 2秒 ISO 800 +0.3EV
WB:電球(3000K)

3 絞り値(F値)の設定

本来、絞り値の変更は撮影モードをAモードやMモードに設定して値を変更しますが、今回はAモード(絞り優先)で撮影する場合についてご紹介いたします。絞り値によってボケ量が変わりますが、絞り値を開放に近くする(小さくする)ほどボケて背景の玉ボケも大きくなります。一方、絞りの数値を大きくするほどピントが合って見える幅も広がり、背景にある点光源(イルミネーションの電球など)の周りには光芒(光条)が起こります。この光芒はレンズ内にある絞り羽に光が回り込む現象ですが、これもイルミネーション撮影において有効な表現の1つです。ただAモードに設定して絞りの数値を大きくする、絞った設定ではシャッタースピードが遅めになるので、そうならないようにISO感度を上げて対応します。

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

絞り値を開放にする(小さくする)と、背景の電球などの点光源がボケて、光の玉のようにみえる玉ボケも綺麗に浮かび上がります。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Aモード F1.8 1/320秒 ISO 12800 +0.3EV
WB:オート

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

絞り値を大きくする事で、クリスマスオーナメントに反射した照明の点光源が光芒として現れます。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Aモード F22 1/4秒 ISO 12800 -0.3EV
WB:電球(3000K)

4 レンズ選び

背景などを綺麗にぼかした写真を撮影したい場合は、広角レンズよりも望遠レンズの方がボケる量が大きく、背景の玉ボケも望遠レンズの方が大きくなります。複数お持ちの方は、同じ構図でもレンズ交換をしたり、距離を変えたりして色々と試してみましょう。

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8の場合
左奥にある木が玉ボケのシュルエットとして浮かび上がります。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
34mm相当*
Aモード F1.8 1/30秒 ISO 100 -0.3EV
WB:電球(3000K)

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8の場合
奥にある木が近づいて見え、点光源の玉ボケも大きくなりました。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Aモード F1.8 1/40秒 ISO 100 ±0.0EV
WB:電球(3000K)

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

背景だけでなく前景に玉ボケを作るのもいいです。手前の電球も構図に入れ、遠くの被写体にピントを合わせると、手前の電球が玉ボケとして写り込みます。

M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
90mm相当*
Aモード F1.8 1/6秒 ISO 100 ±0.0EV
WB:電球(3000K)

5 多重露出撮影・アートフィルター撮影

イルミネーション撮影でよく使われる多重露出撮影。複数枚の写真を1枚にする手法なのですが、メニューから多重露出を設定し、ピント合わせをマニュアルフォーカスにします。
1枚目を大きくピントを外して全体がボケた写真を撮影し、2枚目にピントを合わせた撮影、2枚の写真が重なって一枚の写真になると、ピントを合わせたところの周りに玉ボケが重なって幻想的な写真が出来上がります。

1枚目

2枚目

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

2枚の写真を合成する事で、通常撮影よりも点光源がより強調され、幻想的な風景写真に仕上がりました。

M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
50mm相当*
Aモード ISO 100 -0.3EV
WB:曇天(6000K),多重露出(2枚)

OM SYSTEMのカメラには、アートフィルターという撮影モードがあります。その機能の中から「ファンタジックフォーカス」を選択してみます。

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8で撮影したイルミネーションの写真

簡単にふわっと柔らかな印象に。車のテールランプの軌跡を写し込むため、シャッター速度を遅くして(Aモードの場合は絞り値を小さく設定して)構図とタイミングを合わせて撮影しました。

M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
34mm相当*
Aモード F4.0 1秒 ISO 100 ±0.0EV
WB:曇天(6000K),アートフィルター(ファンタジックフォーカス)

まとめ

風景として広めにイルミネーションの街を撮影するなら、夜遅い時間よりも陽が沈んですぐの時間帯の方が、空の色も夕日のオレンジや青味がった空を写すこともできるのでおすすめです。イルミネーション撮影に出かける際には、寒さ対策に気をつけましょう。
またカメラは低温では暖かい場所よりも電池の減りが早くなります。スペアの電池を服のポケットなど体温が伝わるよう保温をしながら保持します。では準備を整えてイルミネーションを撮りに出かけてみましょう。

写真家 斎藤 巧一郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROで撮影したイルミネーションの写真

車のヘッドライトやテールライトの軌跡を撮影するために、ついつい映り込み具合を厳選してしまう事も。撮影に集中していると時間を忘れ、身体が冷えてしまうのもご注意ください。

M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*
Aモード F22 3.2秒 ISO 1600 +0.3EV
WB:電球(3000K)

*35mm判換算値

斎藤 巧一郎

写真家 斎藤 巧一郎

1968年鹿児島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。
広告写真業に携わり、人物、料理などを撮影している。1999年よりオリンパス(現 OMデジタルソリューションズ)カメラのPRに従事、以来カタログ、web広告の写真撮影を務める。旅に題材を求め、訪れた国は50を超えた。また日本の食を追うことをライフワークとしている。

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

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