Photo Recipe(フォトレシピ)
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季節の花をマクロで撮ろう ~秋編~
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撮影・解説 : 写真家 くにまさ ひろし
2024年10月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
暑い夏が終わって過ごしやすくなる秋は、じっくりと撮影に取り組むのに最適な季節。
でも、春や夏と比べて花の種類も数も少なく感じるかもしれませんね。
確かに桜やひまわりのように華やかで目立つ「スター」のような花は少ないですが、フィールドに出てよ~く観察してみると、案外たくさんの花たちが咲いているのを見つけることができますよ。
派手さはないけど個性的な花も多いこの季節。マクロレンズでクローズアップしたり、ボケを活かしたり、そんなひと味違う作品づくりを楽しみましょう!
1 絞り開放の大きなボケを活かそう
秋のバラは春とはまた違った趣があります。小ぶりですがしっとり大人の雰囲気を漂わせているようです。
そんなバラが一番美しいのは、咲き始めのころ。花びらが少しずつ開きかけた姿に生命力を感じます。
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開きかけた花びらの渦の中に一粒の雫を見つけ、ピントを合わせました。絞りを開放にして花びらのラインを大きくボカし、雫に視線を集めることを狙っています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/250秒 ISO 200 +1.0EV
2 心惹かれた部分をクローズアップしよう
花の写真は、花全体の姿を写して何の花かわかるように撮らないといけないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
でもそんなことは全く気にする必要ありません。面白いなと感じたり、かわいいなと感じたり、なんとなく心にひっかかったり。そんな部分を見つけたら、遠慮なくその部分だけをクローズアップで切り撮りましょう。
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バラの花に近づいて見ると、花びらの隙間からシベが覗いていました。一番背が高いひとつのシベを主役に選び、花びらを前ボケにして他のシベを隠しています。
シベが遠くの空を仰いで羽ばたいていきたいと思っているような、そんなイメージで撮影しました。背後の花びらのラインが空に向かって伸びていくようにボケて、よりイメージが強調されています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/160秒 ISO 200 +1.0EV
ここまでクローズアップすると何の花なのかわからなくなりますが、それでよいのです。心を動かされ、見せたい、伝えたいと思ったのは、「◯◯の花」ではなく「ちょこんと顔を出した可愛らしいシベ」なのですから。
3 大きなボケで幻想的なイメージを
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こちらも一見すると何を撮ったのかわからないかもしれませんね。正解はバラの花びらです。花びらのカーブが描くラインが美しく感じたので、そこだけをクローズアップで切り取りました。
しかしラインをはっきり写してもなんだか面白くありません。ここは大きなボケを活かしてちょっと不思議なイメージで撮りたいと思いました。M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROならではの浅い被写界深度の効果で、花びらが大きくふわりとボケて幻想的な雰囲気に仕上がりました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
180mm相当*
Aモード F3.5 1/400秒 ISO 200 +1.7EV
4 前ボケを活かして撮ろう
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すらっと伸びたシベが特徴的な彼岸花ですが、くるんと丸まった花びらもかわいいものです。
その「かわいい」と感じた部分だけをクローズアップしました。
彼岸花の花びらの一枚を、軽やかに踊っているようなイメージで撮影。周囲の花びらを前ボケにして余計な部分を隠し、カーブを描いた一枚の花びらだけがパッと目に入るように構成しました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
180mm相当*
Aモード F3.5 1/250秒 ISO 400 ±0.0EV
5 いろいろな角度から見てみよう
花の特徴を捉えて撮ることは大切ですが、いつも同じように撮っていてはマンネリになってしまいます。
一つの花をいろいろな角度から観察することを意識してみましょう。いつもの見方を少し変えると、また違った姿が見えてきますよ。
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コスモスの花の下に蕾が隠れているのを見つけました。
その蕾がかわいらしくて花よりも魅力を感じたので、蕾を主役に選んで花は脇役になってもらいます。
真上のアングルから見下ろして撮影。前ボケにした花びらの合間から蕾だけを見せることで、主役の蕾に視線を集めることを狙いました。お母さんの後ろからそっと顔を出した人見知りの蕾ちゃん。そんなイメージで撮っています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/250秒 ISO 200 +0.7EV
6 雨の日は撮影日和
雨降りの日は撮影に出かけるのも億劫になりますよね。でも、実は雨の日こそ撮影日和!僕は雨が降ったらルンルン気分で出かけています。体とカメラバッグはしっかりレインウエアで雨を防御しますが、カメラはそのまま。雨に濡れても気にせず手持ちでガンガン撮影します。
「濡れたらカメラが故障するのでは……?」と心配になるかもしれませんが、そこはOM SYSTEM。全てではありませんが、OM SYSTEMのカメラとレンズには強力な防塵・防滴性能が搭載されていますので、多少の雨の中での撮影もへっちゃらです。
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雨の日、ニッコウキスゲのシベにたくさんの雫がぶら下がりました。
よく見ると雫の中に後ろの花が写り込んでいます。その写り込んだ花にピントを合わせて撮影しました。雫の中の写り込みは角度によって見え方が変わるので、いろいろな角度からよく観察してしっかりと写り込むポジションを探しましょう。
M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
180mm相当*
Aモード F5.0 1/160秒 ISO 400 ±0.0EV
なお、雨に濡れたカメラやレンズは後でしっかり水分を拭き取って乾燥させましょう。防塵・防滴性能とはいえ、カメラ内部に水分が入ってしまうと故障の原因になります。撮影中にカメラが濡れるのがどうしても気になる方は、カメラの上にタオルを掛けてあげるだけでもぜんぜん違いますよ。
7 ユーモラスな虫たちも絶好の被写体
この時期はいろいろな虫たちとの出合いもあります。虫を見つけたら慌てて動かず「何も危害は加えませんよ~」とアピールしましょう!
そうやって安心させてあげると、ちょっと近づいても逃げずに撮らせてくれるようになりますよ。
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シロバナヒガンバナからひょっこり顔を出したバッタくん。まるでこちらを見つけて驚いているような表情をパチリと撮りました。虫を撮るコツは、表情や仕草がわかるようなアングルを探すこと。特に顔を真正面から見ると、ユーモラスな表情をしていることに気づくと思います。
M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
180mm相当*
Aモード F3.5 1/1250秒 ISO 400 ±0.3EV
8 人工物も工夫して活かそう
撮りたい主役があるのに、背景や手前に人工物があって邪魔……。そんな経験、きっとあるかと思います。
でも工夫次第ではうまく活用して絵作りに活かせることもありますよ。
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クレロデンドルムという、夏から秋にかけて咲く花です。花の形も特徴的ですが、やはり大きくカーブを描いたシベに心を惹かれます。
そのシベの形を強調するため、背景にある光のボケをシベのカーブに重ねました。数輪重なった花の手前の一つのシベだけにピントを合わせることで、花や長いシベがシルエットのようにボケて、面白いイメージを描き出してくれました。
実は背景の光は照明のライト。このように光っているものが背景にあれば大きくボカして撮ることで、主役を引き立てるいい小道具になってくれます。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/125秒 ISO 400 ±0.0EV
9 望遠ズームレンズで切り撮ろう
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紅葉した林が霧の中に浮かび上がる……。そんなイメージで撮影しましたが、実は公園の一角にある小さなコキアです。霧のようなものは手前に咲くコスモスの前ボケ。コスモスに日が当たって白っぽくなったことで、より雰囲気が強調されました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード F2.8 1/1000秒 ISO 200 +0.7EV
ここはマクロレンズではなく、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROの望遠ズームレンズを使っています。このズームレンズの望遠端、長い焦点距離(300mm相当*)を使うことで前ボケが大きく薄くなり、このように霧が広がったようなイメージになります。
望遠ズームレンズを使った理由はもうひとつ、コキアのすぐ上にあるベンチを画面に入れたくなかったからです。人工物が入ってしまうと一瞬にして現実感が出てイメージが変わってしまいますので、余計なものが入らないようギリギリのフレーミングをするために望遠ズームレンズを選びました。
10 逆光で紅葉を輝かせよう
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秋晴れの日、ふと頭上を見上げると、燦々と降り注ぐ陽射しに紅葉が揺れていました。たくさんの葉っぱの中からふと顔を出した一枚を主役に。
周囲の同色系の葉っぱに溶け込まないよう、空の白い部分が背景になるようなポジションを選びました。
陽射しが感じられるようにプラス補正の露出にして、ハイキー気味の絵にしています。主役の後ろに重なった葉の部分が濃い影となって、アクセントになりました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
180mm相当*
Aモード F3.5 1/320秒 ISO 200 +1.0EV
最後に
マクロレンズはなんと言っても近づいて大きくクローズアップ撮影できるところが魅力です。でもただ大きく撮るだけでは物足りなくなるもの。
近づくことで得られる大きなボケをうまく活かして、肉眼では見られない自分だけの世界を作れることが最大の面白さです。
夏から秋、そして初冬に移り変わるこの季節は、彩りがどんどん変化していきます。
そんな季節の変化を取り入れることも意識しながらマクロ撮影を楽しみましょう!
*35mm判換算値
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写真家 くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。
身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく撮影している。
写真展:2020年「花色の息吹」(富士フイルムフォトサロン 大阪)、2021年「花の鼓動~Life~」(富士フイルムイメージングプラザ大阪)、2022年「花色の息吹」(OM SYSTEM GALLERY)、2023年 「Nature Flowers〜OM SYSTEM で撮る花々〜」(OM SYSTEM PLAZA)、2024年 「Nature Flowers〜OM SYSTEM で撮る春の花々〜」(OM SYSTEM PLAZA) 写真集 「花色の息吹」(風景写真出版)
OM SYSTEM seminars Speakers
日本風景写真家協会(JSPA)会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)取得
クニさんの花マクロ写真塾 主宰
KuniphotoWorks:https://kuni-hiro.com/
ブログ:https://macro-daisuki.com/