Photo Recipe(フォトレシピ)
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雨の日だからこそお花を撮ろう
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撮影・解説 : Junko Sato
instagram: @junk_april
2024年6月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
「雨の日には屋外でお花の撮影ができない」と思っていませんか?
でも、雨の日だからこそ撮れる写真があるのです。
OM SYSTEMのカメラやレンズには防滴仕様のものも多く、雨粒を気にすることなく持ち出すことができます。さらにシステムの特徴としてたいへん小型軽量ですから、片手で保持できるカメラとレンズを選べば、傘を差しながらの撮影も苦になりません。
このフォトレシピでは、雨(水)×花の写真とともに、撮影のポイントなどをお伝えします。
*私の考える雨(水)×花フォトの魅力とは*
①彩度アップ効果・・雨の日は花の色が鮮やかになる
②鮮度アップ効果・・雨は植物を生き生きとさせる
③水滴の玉ボケ・・水滴や水面の反射がキラキラ玉ボケになる
④艶感アップ効果・・水は植物にツヤを与える
⑤水による質感の変化・・濡れることで質感が変わる花もある
⑥水の接着剤効果・・軽い被写体も水分で貼り付くことで固定される
⑦花と水滴のコラボを楽しむ
などです。
今回は上記7つの「雨の日の利点」を、実際の写真とともにお伝えしていきます。
1 紫陽花 <①彩度アップ効果+④艶感アップ効果>
雨と相性がいい花といえば、何といっても紫陽花です。
淡いトーンの紫陽花も、雨に濡れると色が深まり、水の光沢をまとって艶やかになります。また、紫陽花の花は雨粒に打たれてもヘタることが少なく、しっかりと枝に付いていて風の影響も受けにくいので、お天気の悪い日に適した被写体だと言えます。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroレンズを使い、Aモード(絞り優先モード)の絞り開放(F値を一番小さくする)で撮ったことで、紫陽花の枝部分が程よくぼけ、奥行きが出ました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/160秒 ISO 200 ±0.0EV
2 紫陽花 <②鮮度アップ効果+⑦花と水滴のコラボを楽しむ>
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これも紫陽花です。雨粒の付いた花がみずみずしく、背景の緑も雨を浴びて生き返っています。水滴をクリアに撮るために露出(明るさの測定)はスポット測光にし、さらに測光をAFターゲットに連動させています。これでピントの箇所に合わせた明るさで撮ることができ、明るい水滴が白飛びすることなく立体的に写ります。
スポット測光は白っぽい花を撮るときなどにも有効です。ESP測光ではうまく再現できなかった白い花びらの微妙なニュアンスなどを写し取れます。ただし全体的に暗くなる場合があるので、そのときは画像編集で明るさを足したりします。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/640秒 ISO 200 ±0.0EV
3 タンポポの綿毛 <③水滴のキラキラ玉ボケ+⑥水の接着剤効果>
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朝露が残る時間帯に、草の上で止まったタンポポの綿毛を撮りました。露出はこちらも綿毛に合わせたスポット測光です。
綿毛が飛び立つ瞬間のように見えますが、実は水滴の「接着剤効果」によって右端の綿毛が草に貼りついており、しばらくこのままの状態だったので苦労なく撮れました。
いちばん左の綿毛の背景が暗くなるアングルを選んだため、フワフワの冠毛とその下の白い柄が際立ち、これが綿毛であることがはっきりします。バリアングル液晶モニターを活用して下からあおり気味に撮ることで、草に残る朝露たちがキラキラの玉ボケになりました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/400秒 ISO 200 +0.3EV
4 紫陽花の葉 <④艶感アップ効果+⑥水の接着剤効果>
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紫陽花の花びらに見える部分は、実際には「装飾花」と呼ばれるガク片で、本当の花はガク片に隠れるように小さく咲いています。その小さな小さな「本当の花びら」が葉っぱの上に落ちていました。横にある水色の糸のようなものは紫陽花の雄しべです。
雨に濡れたおかげで花びらと雄しべが葉っぱに貼りつき、風に飛ばされることなく被写体になってくれました。さらに水分で葉っぱがツヤツヤになっています。背景の水色は大きく咲く紫陽花の装飾花です。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/125秒 ISO800 ±0.0EV
5 ホタルブクロ <⑤水による質感の変化>
花が雨に濡れた時、まれに透明になることがあります。山野草のサンカヨウが「ガラスのように透明になる花」として有名ですが、身近な雑草であるホタルブクロも濡れることでガラス化する場合があるのです。
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私は近所のスーパーに行く際もカメラをバッグに入れているので、この、ちょっとした奇跡に遭遇したときもサッとしゃがみ込んで撮ることができました。小型軽量ゆえ日常的に持ち歩くことが可能なカメラとレンズのおかげです。この写真では透明感を強調するため、透けている花の奥側の花びらにピントを合わせています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/500秒 ISO 200 -0.3EV
6 アセビ <②鮮度アップ効果+⑦花と水滴のコラボを楽しむ>
道端のアセビが雨粒をまとってみずみずしさを増していました。大きな道路がすぐそばを通っていて土埃を浴びることも多い場所ですが、雨がホコリを洗い流してくれています。
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枝の先には小さな水滴が付いていたので、ここにピントを合わせました。
私はピント合わせの際に拡大枠AF機能を使っており、カメラ上面右上の露出補正ボタンに拡大枠AF機能を割り当てています(露出を補正する時はフロントダイヤルを使います)。ファインダーを覗くのではなく液晶を見て撮ることがほとんどなので、まずピントを合わせたい箇所の液晶をタッチします。すると緑色の拡大枠が表示されますから、そこでシャッターを半押しすると、ピッという音とともに枠内にピントが合います。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/125秒 ISO 640 -0.3EV
指をシャッターから離し露出補正ボタンを押すと枠内が拡大表示されるので、画像を確認してOKならば再度シャッターを半押しし、ピッという音がしてピントが合ったらシャッターを全押しします。文字にすると少々ややこしい動作ですが、実際にやってみると簡単です。
7 ハルジオンの蕾 <①彩度アップ効果+⑦花と水滴のコラボを楽しむ>
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開きかけたハルジオンの蕾に雨粒が乗っている様子が面白かったのでカメラを向けました。
ハルジオンの花びらは細く柔らかいので、開いた後で雨に濡れると萎れたような姿になりますが、蕾の間は水を弾き、晴れた日よりも色も濃く鮮やかに見えます。
ピントは左から2番目の雫に合わせています。目視した際にその雫がいちばん目立っていたからです。ここでも拡大枠AF機能が活躍しました。
雨粒だけでなく、咲こうとする花びらの様子もクリアに撮ることができ、マクロレンズの楽しさを再確認した写真です。
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/500秒 ISO 200 ±0.0EV
まとめ
今回ご紹介したのは全てM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroレンズで撮った写真です。
撮影場所は基本的に自宅の周囲ですし、被写体は身近な花です。撮影のために遠征しなくても、日々の生活の中で写真を楽しむことができるのは、このマクロレンズのおかげです。
見慣れた光景もマクロレンズを通すとまるで違ったものに見えます。
雨粒や花に限らず、例えばお野菜の断面なども、マクロレンズで見ると新しい美しさを発見できると思います。
いつもの日常に驚きと感動をくれるマクロレンズ。今では親友と呼べる存在です。
*35mm判換算焦点距離
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Junko Sato
神奈川県藤沢市で育ち、現在は横浜市の南端に夫と息子の3人で暮らす。
スマホで写真を撮ることの楽しさに目覚めたが、次第にスマホでは物足りなくなり、カメラを購入。人生初の一眼カメラはOLYMPUS PEN (E-PL7)。
主な撮影フィールドは自宅の周り、主な被写体は雑草の花。身近に咲くありふれた野の花の思いがけない美しさを撮るべく、道端にしゃがみ込む日々。