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写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

春爛漫。彩り鮮やかな桜を写す

写真家 福田健太郎

撮影・解説 : 写真家 福田健太郎

2024年4月公開

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

はじめに

春といえば桜。季節のうつろいを感じ、心に触れる花としてたくさんの人に愛されています。桜の花を前にすると、写真を撮りたい気持ちが自然と芽生えるもので、その姿は天候や時間帯などで大きく変わります。明るく生き生きとした、春の喜びを誘うのはやはり晴天のとき。たっぷり日差しを浴びた桜になるでしょう。今回は「彩り鮮やかな桜を写す」をテーマに、基本的な撮り方を紹介したいと思います。一般的に綺麗と言われる写真を完成させるポイントを解説しますので、みなさんにとって桜撮影のヒントになれば幸いです。

青空バックで清々しい桜を撮る

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

青空の下の桜は清々しく、なんとも気持ちよい春の風景です。 撮影する際のポイントは、まずは順光に近い光線状態を選びます。日差しを浴びた明るい桜で影が目立たなく、澄んだ青空と組み合わすことができるポジションを探してみましょう。桜に近寄ることで背景に青空を入れやすくなり、広角域の焦点距離では垂れ下がる桜の動きを強めることができます。この写真の撮影にはPLフィルターを用いました。大気中のチリやホコリによる乱反射をカットすることで青空は濃くなり、色のコントラストを高めています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
24mm相当*
Mモード F8 1/320秒 ISO 200 PLフィルター使用

満開の桜に包まれた、華やかな桜風景を届けたい

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

ついつい、美しい桜に近寄りたくなりますが、意識的に離れてもみましょう。桜の佇まいを捉えやすいのです。レンズの焦点距離を自在に変えられるズームレンズがオススメで、たくさんの桜が咲いている状況でしたら、手前や奥など、周囲の桜をうまくアクセントとして取り入れます。桜の花は重なり合うことで密度感を増し、画面内に桜をうまく配置することで華やかさを誘うことができるのです。撮影のポイントはポジションを吟味し、レンズの力で印象的な桜を引き出すことです。この写真では絞り値F4.0を選択しています。手前の桜をフワッとぼかすことで、ピントを合わせた桜の存在感を高め、優しい雰囲気も届けることができました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
184mm相当*
Mモード F4.0 1/2500秒 ISO 200

広々としたスケール感を伝える桜風景

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

ご近所で探すのは難しいかもしれませんが、風光明媚な景色を眺めるのは気分がよいものです。桜巡る旅を計画し、山や海など、スケールの大きな風景との組み合わせを探すのはいかがでしょう。この写真は土手の上に整備された道から、彩り鮮やかな桜並木と残雪の山を組み合わせてみました。距離の離れている風景ですが、中望遠から望遠域のレンズ特性である圧縮効果が働き、実際よりも距離が縮まっているように映り、どちらも主張することが叶いました。画面中央、手前の桜にピントを合わせて絞り値をF11に設定。画面全体をシャープに写し出すことで、現実感のある写真へと仕上げています。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
76mm相当*
Mモード F11 1/250秒 ISO 200

ライブGND機能を使い、印象度をアップ

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

OM-1 Mark Ⅱに搭載されているコンピュテーショナル フォトグラフィの新機能「ライブGND」は桜の撮影でも効果的です。 朝日、夕日と絡めた風景ではとくにですが、通常の撮影では見た目に近い再現が難しい状況が存在します。この写真はまさにそうで、朝の光が当たり始めの薄暗い桜並木と霞む山並みと空は、明暗差が大きく、この差を埋めて美しく再現してくれるのがライブGNDとなります。境界位置は桜並木の少し上に置き、自然な感じに仕上げたい意図があったのと、現場状況に合わせてGND段数は「GND4(2EV)」、フィルタータイプは「Medium(ミディアム)」を選択しました。効果をしっかりファインダーで確認しながら自在に操作できるのは扱いやすく、見た目に近い仕上がりを得ることが簡単にできました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
260mm相当*
Mモード F8.0 1/20秒 ISO 200 ライブGND(ND4/Medium)

通常撮影①:空と山並みの部分・露出オーバー

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

薄暗い桜並木が見た目に近い明るさで再現される露出で通常撮影したカット。暖色に染まる空と山並みは霞んで白っぽく、かなり明るめに再現されてしまいました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
260mm相当*
Mモード F8.0 1/20秒 ISO 200

通常撮影②:桜並木の部分・露出アンダー

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

このカットは、明るい空と山並みが見た目に近い明るさとなるよう露出を合わせたものです。通常の撮影を行った場合にはご覧の通り、桜並木はより暗く落ち込む結果に。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
260mm相当*
Mモード F8.0 1/60秒 ISO 200

輝きを放つ桜は逆光のライティング

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

光線状態によって桜から受ける印象はだいぶ変わります。この写真は画面内に太陽が写っていますから、逆光の光線状態というのがお分かりいただけるでしょう。眩い光で桜の花びらは透かされていっそうの輝きを放ち、透かされない幹や枝の部分は暗く落ち込みます。この画面内に明暗のメリハリができることで桜の花が強調されます。仕上がりの明るさは撮影者自身が調節すべきもので、暗部が引き締まって再現される露出で撮ることがポイントです。その逆、画面全体を見た目よりも明るく、ハイキー表現で淡い世界へと導くことも可能ですから、露出をコントロールすることはぜひとも覚えておきたいです。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
100mm相当*
Mモード F6.3 1/125秒 ISO 400

レンズの力で背景を大きくぼかしてみよう

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

朗らかな春の陽気に包まれ、桜並木の風景から軽やかな雰囲気を感じ取りました。光線状態は逆光を選び、明るめに仕上げることで透明感を引き出しています。そして、この場面では望遠ズームレンズを使い、絞り値F2.8の開放値で撮影しました。焦点距離の長い(数値の大きい)レンズほど、ぼかしやすい性質を持ち、ピントは手前の垂れ下がる桜に合わせ、ピントを合わせた桜から距離の離れた桜並木の様子を背景に組み込んでいます。肉眼で見た世界とは全く異なる、交換レンズによる写真ならではの描写で、写真を始められたばかりの方にとっては、とても新鮮に映ることでしょう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
170mm相当*
Mモード F2.8 1/1600秒 ISO 200

桜以外の彩りを添えてみよう

写真家 福田健太郎がM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROで撮影した桜の写真

爽やかな春の息吹を感じるのは多彩な色に包まれた風景に出合ったときでしょうか。ヤマザクラや八重桜など、若葉との共演を愛でることが叶う桜の種類やタイミングがあります。刻々と移りゆく自然の姿に触れる風景でもありますし、素直に、まばゆい彩りを感じてレンズを向けたのがこの一枚です。奈良県は吉野山で写したカットで、光線状態は逆光になります。透かされて輝く若葉と画面下には桜を配し、レンズは広角域を選択。隙間なく画面いっぱいのフレーミングが、躍動感に満ちる春の風景を届けられると考えました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
26mm相当*
Aモード F8 1/640秒 ISO 200 -0.7EV

まとめ

桜の撮影はとても楽しく、様々な感情を覚えやすいフォトジェニックな花です。今回は晴れた日の彩り鮮やかな桜を写す、基本的な撮り方をご紹介しましたがいかがでしたか。光線状態、ポジションとアングル、背景選び、レンズによる描写の効果、絞り値や露出のコントロールによって 印象が変わることなど、写真撮影の基本を活かすことをお話しして行きました。じっくりと心惹かれた桜との対話を重ね、自分の心で思い見ることをなによりも大切に、撮影を楽しんでいきましょう。

*35mm判換算焦点距離

写真家 福田健太郎

写真家 福田健太郎(ふくだけんたろう)

幼少期から自然や風景、その土地と人々の暮らしに憧れ、18歳のとき写真家を志す。写真家 竹内敏信氏の助手を経て、1997年より活動を開始。日本を主なフィールドに、自然にあふれる生命の姿を記録し続けている。写真集『泉の森』(風景写真出版)をはじめ著書多数。「春恋し -桜巡る旅」、「平成 桜 福島」など、毎年写真展を開催し、作品を発表し続けている。

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