Photo Recipe(フォトレシピ)
ワンランク上の星景撮影を実現する5つのコツ
2023年8月公開
本記事限定特別セット
本記事で紹介されている「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」と「スターリーナイト プロソフトン」の特別セットをご案内!
※本セットは予告なく終了する場合がございます
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この記事について
みなさん、こんにちは。星景写真家の北山です。OM フォトライフでは、星景写真の季節ごとの撮影ポイントなどの記事を執筆しておりますが、今回は星景写真を撮影したことがあるけれど、うまく撮影できず悩んでいる方や、もっと上達したいという方向けに、機材の扱い方や私が普段意識している撮影の5つのコツをお伝えしたいと思います。ぜひみなさんの星景写真撮影にお役立てください。
1.星景写真で難しい”星のピント合わせ”と”構図の確認”を克服する
満天の星を撮影しようとすると空が暗いところで撮影することになりますが、暗い中での機材の操作やセッティングは思っている以上に難しいです。初めのうちはどこに何のボタンがあるか分からず、その都度ライトでカメラを照らして確認をしていたという方も多いことでしょう。周囲に人がいなければ気にすることも少ないライトの灯りも、人気の撮影地で周りにたくさんの人がいるときは、ライトをつけるのが憚られます。わたしは機材の扱いに慣れるまでは蓄光素材の丸型のテープをボタンに貼り付けたりしていましたが、加えてカメラの各ボタンに機能を割り当てられる機種の場合は、よく使用する機能に変更しておくことで使い勝手を飛躍的に向上させることができます。特に「ナイトビュー」機能は星景写真撮影で必ず使う機能になりますので、自分が押しやすいカスタムボタンに割り振っておくのがいいでしょう。
星景写真の撮影で苦手意識を持たれている方が多いのは「ピント合わせ」です。星景写真では一般的に星にピントを合わせるのが基本ですが、従来はモニターに写る星を拡大表示してマニュアルフォーカスでピントを合わせるのが基本でした。OM-D E-M1 Mark III以降では、オートフォーカスでピントを合わせることができる「星空AF」機能が搭載されたため、よりスムーズに撮影を行うことができます。星空AF機能使用時のポイントは「できるだけ明るい星でピントを合わせること」なので、カメラの十字ボタンやマルチセレクターを使ってAFターゲット枠を任意の場所に選択するやり方をあらかじめ習得しておくようにしましょう。
OM-1などに搭載されている「ナイトビュー」機能は星景写真の構図合わせをする際に必須の機能です。周囲が暗い中での撮影では、モニター上で構図を確認しようにも暗くて何が写っているのかよくわかりません。そのような時にナイトビュー機能をオンにすると、それまで見えなかった風景がフワッと明るくなり見えるようになります。あとは水準器機能も併用しながら水平を合わせれば試し撮りすることなく構図を決めることができます。ちなみに、絞りF値が明るいレンズを使えば、ナイトビューモードで天の川も見つけることができるため、ぜひ試してみてください。
2.星景写真の作品表現
ここからは星景写真の作例をお見せしながら、作品表現についてお話ししていきたいと思います。星景写真のセオリーは「満天の星と風景を一枚の写真で表現すること」ですが、それには「月の満ち欠け」を意識しながら撮影することが重要になります。月は地球の周りをおよそ29.5日かけながら一周しますが、1日ごとに月の出入りの時間や方角、さらには形や明るさも異なります。満天の星を撮影したいと思った時には、月明かりがないタイミングに撮影する必要がありますので、新月前後が最も撮影に適していることになりますが、星景写真の作品には「月明かりを借りなければ撮れない作品」も数多くあります。例えば、強い月明かりが空気中の水蒸気に当たることで生まれる「ムーンボウ(月虹)」などは顕著な例です。また、月自体を被写体に撮影する星景写真も面白く、特に月の出入りの瞬間は地平線(または水平線)から空までのグラデーションが美しく、印象的な作品を残すことができます。
お花やモニュメントなどを撮影する際は月明かりを射光または順光で当てることで表情豊かに切り取ることができます。月明かりがあると写る星の量は少なくなるため、撮影する方向に一等星や惑星などの明るい星があるタイミングを事前に調べて撮影に行くのがよいでしょう。もしくは、カメラに搭載されている「ライブコンポジット」機能を使用して星を線像(光跡)にしてあげることで存在感を強調させるテクニックもよく使います。
ライブコンポジット機能の面白さは、星だけでなく地上での灯りの変化も光跡として合成されていくことです。蛍や花火はその顕著な例ですが、車、船、飛行機、国際宇宙ステーション、さらにはヘッドライトの灯りなどを被写体に、どのような軌跡が残るのかをイメージして撮影に臨むと星だけが主役にならないまた違った印象の作品を残すことができるでしょう。
星景写真撮影では天敵と言われる雲も、うまく利用すればとても良いアクセントになってくれます。特に夏場、日中蒸し暑かった日の夜などは雲が湧いてくることが多いですが、その日の夜に風が吹き抜ける高台に行くと目まぐるしく変化する雲と星空の面白い作品が撮れることが多いです。ちなみに私は快晴の日よりも少し天気が崩れている日の撮影のほうが、いつもと違った作品が撮れるのではとワクワクします。
3.星景写真の構図アドバイス
星景写真の構図は多くの方が悩まれているところですが、迷ったら「写真の代表的な構図パターン」を参照するのが良いでしょう。特に「三分割構図」はよく使われる構図パターンですが、星景写真でも星と風景をバランスよく配置することができます。例えば、海岸線の風景と水平線から昇る天の川を撮影する時に、メインである天の川を構図の中央に置いてしまうより、三分割構図の交点を意識しながら配置してあげる方が風景とのバランスはよくなります。この時、海岸線の風景も遠くまで写り込んできますので、どんな場所で撮影したのかが視聴者に伝わりやすくなる別の効果もあります。天の川だけでなく、星座や恒星を繋いで作る図形など、被写体となる星は数多くありますが、どれも共通して同じことが言えますので、一度構図の教本などで勉強するのが良いでしょう。私の場合、風景をこの角度からこの焦点距離で撮影したいというのを決めて、その後どの星空を絡めて撮るかをシミュレーターで考えるという流れで決めることが多いです。
4.OM Workspaceを使って星景写真のレタッチに挑戦
撮影をした写真はレタッチをしてより美しい写真に仕上げましょう。魅力的な作品にするためには「適正な明るさになっていること」「自然な色合いになっていること」「ノイズが少ないこと」という3つの要素が重要になりますが、撮影の時に完璧に仕上げることは難しいでしょう。私も撮影時にやるべきことと、レタッチすべきことは分けて考えるようにしています。基本的なレタッチは「OM Workspace」で行うことができます。撮影時にJPEGとRAWデータでも撮影しておき、まずはこのソフトでRAWデータのレタッチ(RAW現像)に挑戦してみましょう。
星景写真のレタッチでよく使われるパラメーターは「露出補正」「ホワイトバランス」「かすみ除去」「トーンカーブ」です。全体的な明るさ補正はヒストグラムを見ながら露出補正で行い、不自然な色被りをホワイトバランスで整え、全体的な彩度とコントラストの調整をかすみの除去で行い、部分的な明るさの補正をトーンカーブで行うという具合です。それぞれどれくらいパラメーターを操作するべきかの判断は写真によって異なるため一概に言えませんが、まずはレタッチ前と後の画像を比較しながら、色々と試してみるのがいいでしょう。もし、高感度撮影時のノイズが気になるような場合は、「AIノイズリダクション」をかけるのもよいでしょう。
※AIノイズリダクション:別途、OM Workspace の[ヘルプ] メニューの[AIノイズリダクションのダウンロード]より「プログラム」とカメラに応じた「データ」のダウンロードが必要です。また、実行可能なPCに制限があります。
5.星景写真をより魅力的に撮影するアイテム
最後に星景写真撮影で必須となる広角レンズと、関連機材をご紹介したいと思います。星景写真では天の川撮影や流星群撮影など、画角が広い広角レンズが必要になるシーンが多々あります。特に「M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO」や「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」などは開放絞り(F値)も明るく私も愛用しているレンズになりますが、「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」も星景撮影ではおすすめです。F4.0は星景写真では暗くないの?と思われる方もいるかもしれませんが、私がメインで使用しているOM-D E-M1 Mark IIIやOM-1は、高感度時でもノイズが少ないため、絞りF値が暗い分感度を上げて撮影を行なっています。それでも抑えきれないノイズに関しては、OM WorkspaceでAIノイズリダクションを行えばほとんど気にならなくなります。「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」は、先に挙げた2本のレンズでは行えないフィルターを装着した撮影が行えるのも大きなメリットでしょう。
続いてご紹介するのは「フィルター」です。星景写真を撮影するシチュエーションは周囲が開けていることが多いですが、そのような場所は遠くの街明かりによる光害(ひかりがい)を拾いやすい環境と言えます。光害とは直接的な明かりではなく、過剰な光が空に漏れ出してしまっている状態のことで、写真では赤っぽく色被りしてしまったように写ります。日本は狭い国土の中に多くの都市が存在していますので、どこで撮影しても都市がある方向を撮影すると大なり小なり光害が写ってきてしまいますが、光害カットフィルターを使うことである程度抑制して撮影することができます。光害カットフィルターを使って撮影すると、写真が青みがかって写るのと、フィルターを使わないで撮影した時よりも透過率がわずかに下がるので、露出を1/3段程度明るく撮影するのがポイントです。
光害カットフィルターを使いながらソフトフィルターも使いたいと思った時には、今までは2枚を重ねて使うしかありませんでしたが、そうするとケラレの問題が生じて超広角〜広角では使いにくいというのが現状でした。ですが、今回撮影に使用したKenkoの「スターリーナイト プロソフトン」は、光害カットフィルターとソフトフィルターが組み合わさったもので、ケラレの心配なく広角レンズでも安心して使用することができます。滲みの強弱は同社の「プロソフトンクリア」と同等で、星景写真の景色が過剰に滲んでしまうということはありませんでした。構図の中の明るい星と暗い星とにコントラストがつくだけで、星座などが際立って見えるようになりますので、星が主役の作品では必須のフィルターになるでしょう。
最後にご紹介するのは「ワイヤレスリモコン RM-WR1」です。対応するカメラ(OM-1/OM-5)との組み合わせではリモコンとカメラを無線(Bluetooth)接続することができ、カメラのシャッターボタンに触れずとも遠隔からシャッターを切ることができるのが特徴で、例えば、ローやハイアングルでの撮影などシャッターボタンを押しにくいシーンや、人や動物など動くものと一緒に星を撮影するシーン、さらには望遠レンズで月を撮影する時などリモコンが必要になるシーンは多々あります。無線接続でも安定して撮影を行えますが、付属のケーブルを使えば有線リモコンとしても使えるので安心です。
※RM-WR1使用可能カメラはこちらをご覧ください
まとめ
今回はワンランク上の星景写真を撮る5つのポイントについてご紹介しました。暗い中での撮影では昼間の撮影のように自由自在に機材を使えるようになるまで多くの経験が必要になりますが、まずは身近なところから徐々に撮影に慣れていくようにしましょう。また、様々な月明かりの中での撮影や、構図パターンの勉強、そして今回ご紹介した機材は作品のバリエーションを増やしていく上でどれもとても重要なものになりますので、ステップアップを目指す方はぜひ覚えておいてくださいね!星景写真家の北山輝泰でした。最後までお読みいただきありがとうございました。
※35mm判換算焦点距離
本記事限定特別セット
本記事で紹介されている「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」と「スターリーナイト プロソフトン」の特別セットをご案内!
※本セットは予告なく終了する場合がございます