Photo Recipe(フォトレシピ)
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春を感じる⾵景を撮りに出かけよう
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撮影・解説 : 喜多 規子
2023年03月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
毎年、静岡県河津町の河津桜の開花のニュースを⾒て春の訪れを感じます。春は河津桜をはじめとして、梅や桜など様々な種類のお花が咲き始め、また芽吹いたばかりの新緑がとても美しく、カメラを持ってお出かけしたくなる季節ではないでしょうか。また桜前線を追いかけたり、早咲きの桜から遅咲きの桜まで種類が豊富なので、⻑い期間楽しむことができます。
今回は春に咲くお花や桜・新緑など、春を感じる⾵景を紹介していきます。
1. 海を背景に河津桜を
河津桜は静岡県河津町で発⾒された早咲きの桜ですが、近年は全国各地で鑑賞することができ、お花が⼤きめで濃いピンク⾊が特徴です。
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河津桜を主役として背景に海と絡めて撮影しました。河津桜に光が当たってしまうとピンク⾊がきつく⾒えてしまうため、フラットな光となったタイミングで撮影しています。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
52mm 相当*
M モード F5.6 1/160秒 ISO 400 ±0.0EV PLフィルター
2. 広⼤な梅林をふんわりと
広⼤な梅林で梅が⼀⻫に咲き誇ると圧巻な⾵景です。
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ふんわりとした雰囲気を出すためにカメラ内の多重露出撮影機能を使って捉えました。1枚⽬はしっかりピントを合わせて、2枚⽬はピントをずらすことで、ぼかした状態で撮影しています。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
122mm 相当*
M モード F5.6 1/30秒 ISO 200 -1.3EV
多重露出2コマ PLフィルター
3. 一本の梅を幻想的に
⾥⼭に咲く特徴的な樹形の梅は主役として⼤きく捉えることができます。

⾬上がりの早朝に特徴的な梅の⽊を主役として奥に撓む霧を覗かせて描きました。
カメラのホワイトバランスを晴天で撮影することで早朝のブルートーンの⾊味に描写され、より幻想的に表現することができました。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
122mm 相当*
A モード F5.6 1秒 ISO 200 -1.0EV ハーフNDフィルター
4. 福寿草をキラキラに
福寿草は温かい地域では1⽉ごろから咲き始めますが、内陸部では3⽉ごろに満開になり、春の訪れを感じるお花のひとつです。
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川辺に咲く福寿草を望遠レンズで捉えた作品です。絞りF値を開放(数値を小さくする)にして撮影することで⽔⾯のキラキラを⽟ボケに描写することができました。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-14
341mm 相当*
A モード F4.0 1/4000秒 ISO 400 -1.0EV
5. ミツマタを森のホタルのように
ミツマタは冬になると葉を落とす落葉性の低⽊です。3⽉から4⽉頃にかけて三つ叉に分かれた枝先に⻩⾊いお花を咲かせます。ミツマタの⽊の⽪は和紙の原料として⽤いられます。
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⼿前のミツマタの株に超広⾓レンズで近づき、背景に奥の杉林まで⼊れて奥⾏きを出して撮影しました。露出をアンダー(明るさを暗め)にすることで⼩粒のお花をホタルの光のイメージで表現しました。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
24mm 相当*
M モード F8.0 1/8秒 ISO 200 ±0.0EV PLフィルター
6. 順光で桜を描く
桜を撮影する際には光線状態を意識することが⼤切です。桜の⽊に対して太陽がどの⽅向から当たっているのかをチェックして最適なカメラポジションを選択しましょう。
順光は桜の⾊を鮮やかにくっきり写すことができ⻘空だと桜の色がより⼀層引き⽴ちます。
ただ順光は⽇中の光だと平坦でベタッとした印象になりやすいというデメリットがあるので、早朝や夕方の光がオススメです。
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画⾯いっぱいに桜の⽊を⼊れ、PLフィルターを使うことでコントラストが強調できました。
また朝陽に染まるピンク⾊の桜が⻘空に引き⽴ち、⽣命⼒や⼒強さを表現することができました。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
38mm 相当*
M モード F5.6 1/125秒 ISO 200 ±0.0EV PLフィルター
7. 逆光で桜を描く
逆光は桜の美しさを際⽴たせることができます。また⽇中の光でも背景を暗く落とし印象的な作品に仕上げることができます。
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海辺に咲く桜を朝陽で捉えました。空の部分にハーフNDフィルターをかけることで桜と空の露出差を合わせています。ただ、桜を画⾯いっぱいに捉え、そこに太陽を⼊れてしまうと桜がシルエットになってしまいます。桜をどのように表現したいのかを考えながら光を⾒極めることが重要です。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
40mm 相当*
M モード F5.6 1/250秒 ISO 400 ±0.0EV ハーフNDフィルター
8. 斜光で桜を描く
斜光は真横から光が当たるので、桜の⽴体感や⼒強さを表現できます。
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⼭桜と新緑が⼣陽(斜光)よって輝きを放ちました。PLフィルターで反射を調整してメリハリを出しています。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
160mm 相当*
A モード F8.0 1/30秒 ISO 400 -1.0EV PLフィルター
9. フラットな光で桜を描く
『花曇り』という⾔葉があるようにフラットな光の時は桜を柔らかく表現することができます。
ただ、画⾯の中に⽩い空(曇り空)を多く⼊れないフレーミングにした⽅が良いでしょう。
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染井吉野の桜の下にポジションを取り、枝垂れ桜と染井吉野の桜を対⽐させて撮影しました。⼩⾬降る中、⼭並みに霞がかかり優しい光で捉えることができました。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
160mm 相当*
A モード F8.0 1/50秒 ISO 200 -0.7EV
10. 星空と桜を描く
デジタルカメラになって桜と星空撮影は⽐較的簡単になりました。桜と天の川や北極星などを絡めた撮影に挑戦してみましょう。
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染井吉野の桜と北極星をライブコンポジット機能で撮影した作品です。露光時間は約60分程度です。⽉明かりがあったので桜にライティングをしなくても夜空の中に浮き⽴ちました。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
32mm 相当*
M モード F2.8 30秒 ISO 400 ±0.0EV 比較明合成(126コマ)
11. 散り桜を美しく
桜は満開の時ばかりではなく、散った後の⾵景も侘び寂びが感じられてとても魅⼒的です。
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お堀に散った桜の花筏(はないかだ)の流れをスローシャッター(ライブND機能を使⽤)で表現してみました。その時に画⾯上の桜が動かないように注意しています。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
300mm 相当*
M モード F11 6秒 ISO 64 ±0.0EV
ライブND(ND32) PLフィルター
12. 芽吹きの⾵景
桜を追いかけていると、やがて⽊々の芽吹きも始まります。新緑の中の桜を捉えてみたり、柳の⽔没林の新緑も素敵です。
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ダム湖に浮かぶ⽔没林の新緑。PLフィルターで⽔⾯の反射を調整し、⾵が強かったのでISO感度を上げて⾼速シャッターで捉えることでさざなみまで描写することができました。
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
62mm 相当*
A モード F5.6 1/8秒 ISO 1600 -0.3EV PLフィルター
最後に・・・
お気に⼊りの桜スポットを⾒つけたら、天候(晴れ・曇り・⾬)や時間帯(朝・⼣)を変えて撮影されると、新たにその桜の魅⼒を発⾒できると思います。早速春の撮影に出掛けてみたいと思っていただけたら幸いです。
※35mm判換算焦点距離
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写真家 喜多 規子
東洋英和女学院大学卒。写真家、前川彰一氏に師事。 日本国内の自然風景をテーマに光・色・フォルムを巧みに操り表現する。 アマチュア時代、多数のカメラ誌の月例コンテストにてグランプリや年度賞を受賞し、 フリーとして活動を始める。
2019年、個展『MOMENT』(富士フイルムフォトサロン東京・大阪・名古屋・福岡・札幌)開催。2020年『栞ーfour seasonsー』(旧オリンパスプラザ東京・大阪)開催。2022年『FORME(フォルム)』(OM SYSTEM GALLERY)開催。写真集に『 MOMENT 』(文一総合出版)、『FORME』(風景写真出版)、共著に『美しい風景写真のマイルール』(インプレス)、『極上の風景写真フィルターブック』(日本写真企画)がある。
『喜多規子フォトスクール』主宰。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。
公益社団法人 日本写真協会(PSJ)会員。