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写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで撮影したガーベラ

花と水滴をきれいに写そう

吉住 志穂

撮影・解説 : 写真家 吉住 志穂

2023年1月公開

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

はじめに

雨の日はなかなか撮影に出かける気分にはなりませんよね。傘を持ちながら撮影するのはめんどうだし、機材が濡れるのも心配です。しかし、そんな天候だからこそ出会える被写体が水滴です。水滴がついた花はいつも以上に美しく感じられ、濡れるのも気にせず夢中でシャッターを切ってしまいます。もちろん、ひどく雨が降る中撮影へ出かけずとも、雨上がりを狙って撮影に行くのもいいでしょう。OM SYSTEMのカメラやレンズは強力な防滴性能を備えた製品が多く、雨でも濡れることを気にせず撮影に集中できます。一方、冬は花の数が少なく、撮影の機会が減りがちです。それに外は寒いですからね。そこで挑戦して欲しいのが、切り花を使った水滴の撮影です。水滴そのものを写すだけではなく、水滴に映り込んだ花を写してみましょう。お花の宝石みたいで、とっても素敵ですよ。暖かくした室内で、ゆっくり花と水滴を写してみるのはいかがでしょうか。

1. バラ ~宝石をまとって~

水滴がびっしりと付いたバラをクローズアップしました。バラ全体をすっぽり画面に収めてしまうと、小さな水滴は目立ちにくくなるので、中心部だけが写るよう、外側の花びらはカットしています。こうすることで、シンプルな構図になる分、水滴が目立ってきます。雨の日は光が軟らかいのでピンクのグラデーションが美しいですね。痛みのない花を選ぶことと、渦巻くような花びらの形のきれいなものを選びましょう。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで撮影したバラ

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/80秒 ISO 400 +1.7EV

2. ハナショウブ ~雨の日の主人公~

背景はボケていますが、花びらに水滴がたっぷり付いていることから雨の日なのだとわかるでしょう。ハナショウブは梅雨の花なので、雨がよく似合います。むしろ、梅雨の晴れ間ではかなり日差しが強いので、昼を過ぎた頃には花びらが暑さでヨレヨレになってしまいます。梅雨らしさを表現できるし、水滴が撮影できるので、アジサイやハナショウブの撮影は積極的に雨の日を狙ってみてはいかがでしょうか。もちろん、レインウェアを着ていくなど、撮影に集中できるよう、雨対策をして出かけましょう。

写真家吉住志穂がZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDで撮影したショウブ

レンズ:ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD
400mm相当*
Aモード F3.5 1/250秒 ISO 200 +1.3EV
アートフィルター:ファンタジックフォーカス

3. ヒガンバナ ~キラメキの中で~

ヒガンバナの長いシベの部分をクローズアップしました。真横のアングルから狙っているのですが、奥側のシベにピントを合わせると、手前のシベがボケます。その手前のシベに付いた水滴がボケて、キラキラとした丸ボケになるのです。全体的に青っぽく見えますが、雨の雰囲気を感じさせるためにホワイトバランスをカスタムで数値を変更し2800Kに設定しました。花の色は青みがかり、背景の緑が水色になりました。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO で撮影したヒガンバナ

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード F2.8 1/40秒 ISO 400 +2.0EV
アートフィルター:ファンタジックフォーカス

4. バラ ~水晶のように~

バラの花びらに付いた水滴です。1枚目のバラの写真はバラが主役で水滴は脇役的な存在でした。しかし、ここまでクローズアップすると主役は水滴で花自体は背景に過ぎません。透明の水滴が花びらの色を映していてとても綺麗ですね。ピント位置に迷うかもしれませんが、ここでは水滴の表面に合わせました。カメラのフォーカス設定をAFモードでうまくピントが合うこともありますが、なかなかピントが合わないようなときはMFでピントリングを使った微調整をして合わせられるようにも練習しておきましょう。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで撮影したバラと水滴

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/125秒 ISO 400 +1.7EV

5. スノーフレーク ~早朝の輝き~

メインはスノーフレークというお花ですが、水滴のボケが輝きを感じさせてくれました。早朝、あたりの草むら一帯に付着した朝露に、眩しい朝日が差し込んでキラキラと輝きました。朝露は日の出の後すぐが勝負です。光が当たり始めるとあっという間に蒸発してしまうので、頑張って早起きしましょう。雨ではないからと油断すると、靴がびっしょり濡れてしまうので、レインブーツなどを用意しておくと安心です。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影したスノーフレーク

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード F2.8 1/400秒 ISO 200 +1.3EV

6. コスモス ~雨の中で~

この日は一日中、ひどく雨が降る中で撮影しました。せっかく撮影に行くなら晴れの日を選びたいですが、撮影会だったので、私も参加者の皆さんも覚悟して臨みました。しかし、撮影が始まると、いつもは撮らない雨や水滴の撮影ができるので、夢中になっていました。コスモスは茎が細いので、雨に打たれると花が揺れてブレてしまいます。風も吹いていたので、シャッター速度を速めに設定しました。雨の撮影では機材が濡れるのを心配されると思いますが、防滴のカメラとレンズを使用したので全く問題なかったです。雨の日でもいつも通りに撮影できるのは嬉しいですね。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED40-150mm F2.8 PROで撮影したコスモス

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード F2.8 1/800秒 ISO 400 +1.0EV

7. コスモス ~雨上がりに~

雨上がりで茎にだけ水滴が付いていました。メインは花なので、ピントは花芯に合わせていますが、水滴の部分が感じられるよう、ほどほどにボカしました。水滴までシャープに写るとうるさくなるし、ボケすぎると水滴の存在が感じられない。その間がほどほどのボケ。このボケ具合は自身とカメラのポジションで調整できます。ピントを合わせたのは花芯なので、今より左から撮ればピント面と水滴に距離ができるので大きくボケます。右から撮れば花芯と水滴の距離が同じになりどちらにもピントが来ます。このように、ピント面からの距離でもボケ具合を調整できるのです。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED40-150mm F2.8 PROで撮影したコスモス

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
240mm相当*
Aモード F2.8 1/1000秒 ISO 400 +0.3EV

8. コスモス ~しずくのこぼれる一瞬~

これは偶然のシャッターチャンスを捉えたものです。もともとは花びらの先についた水滴を狙っていたのですが、雨の日は次々と水滴が膨らんでは落ち、膨らんでは落ちを繰り返していて、水滴がなかなか定まりません。そんな中で撮影していたら、花から水滴がこぼれ、ちょうど下の蕾に落ちました。これを意図して撮るのは難しいですが、一枚撮って終わりにするのではなく、多めにシャッターを切ることでチャンスが広がります。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED40-150mm F2.8 PROで撮影したコスモス

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード F2.8 1/200秒 ISO 400 +1.7EV

9. 雨の日のクモの巣 ~ビーズのネックレス~

雨上がりに公園を散歩していて見つけたクモの巣。厄介者のイメージですが、水滴が付くとビーズのネックレスのように綺麗です。斜めから狙うことでシャープな部分に視線を合わせさせ、その手前と奥にボケを作り出しました。目立ちにくいクモの巣を主役にするためには背景の彩りに気を遣いたいものです。また、背景がすっきりとボケるように、望遠系のレンズを使い、絞りを開け(F値を小さくする)、クモの巣と背景が離れている場所で撮影するのがポイントです。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROで撮影した雨の日のクモの巣

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当*
Aモード F2.8 1/200秒 ISO 800 +1.7EV

10. 切り花のしずく ~窓辺の光と~

寒い冬に切り花を使って、こんな水滴の写真を撮るのはいかがですか。暖かな室内でじっくり撮ることができます。難しいライティングは必要なく、窓から差し込む光を利用します。まず、直射日光が当たらない窓辺に花を置きます。薄手のカーテンで遮るのもいいでしょう。水滴をアップで狙うのでマクロレンズがベスト。自宅内での撮影セットの作りやすさやブレを防ぐためにも三脚を使用しましょう。水滴はスプレーで噴霧すると広範囲に細かく、スポイトだとピンポイントに乗せることができます。花びらの先の水滴の表面にピントを合わせると、スプレーしてできた前後の水滴がボケて輝きを感じさせてくれました。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macroで撮影した切り花のしずく

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
60mm相当*
Mモード F3.5 1/1.6秒 ISO200

11. ガーベラ ~しずくガラス玉~

ガーベラに水滴を乗せると、水滴がガラス玉のように背景の被写体を映します。水滴の10cmくらい後ろに花があると、水滴の中にすっぽり入ったように見えます。マクロレンズでクローズアップする、ブレないように三脚を使用するといった点は普通に水滴を撮るのと同じですが、水滴の表面ではなく、映り込んだ花にピントを合わせます。スポイトを使って、撮りたい部分にピンポイントで乗せてください。水滴が歪むと映り込んだ花がシャープに写らないので、丸みをもった水滴を作ってください。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで撮影したガーベラ

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F4.0 1/10秒 ISO 400 +1.0EV

12. しずくの写真 ~クロスのスターライト~

イルミネーションを撮影しているときにアートフィルターのファンタジックフォーカスにスターライト効果を加えました。スターライト効果とは強い点光源にクロスの輝きを生じさせるものです。これを水滴の輝いた部分に使ってみたらどうだろうと思い、さっそくトライしてみました。弱い光では小さなクロスにしかなりませんでしたが、ライトを当ててみると光の反射が強くなり、クロスも大きくはっきり出ました。この効果はアートフィルターに付随するもので、一部のアートフィルターで選択できます。ぜひ試してみてください。

写真家吉住志穂がM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで撮影したしずくの写真

レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*
Aモード F2.8 1/25秒 ISO 400 +1.0EV
アートフィルター:ファンタジックフォーカス+スターライト効果

まとめ

水滴は小さな被写体ですが、花をより華やかに引き立てたり、ぼかして煌めきを感じさせたり、クローズアップして主役として捉えたりと、モチーフとしてさまざまな姿を見ることができます。雨の日、雨上がり、朝露、室内での撮影とシーンも様々。水滴があるだけで、お花の魅力がぐんとアップして見えます。クローズアップが基本になるので、ピントのずれによるピンぼけや拡大率が高くなることでブレも目立ちやすくなるので、再生して画面を拡大してのチェックを忘れないように行ってください。

*35mm判換算焦点距離

吉住 志穂

吉住 志穂(よしずみ しほ)

1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、花のクローズアップ作品を中心に撮影している。女性ならではの視点で捉えた作品が多く、2021年には写真展「夢」を開催。また、写真誌での執筆や撮影講座の講師を務める。
日本写真家協会(JPS)会員
日本自然科学写真協会(SSP)会員
写真展「Heartful Flowers」「Ants」「Yin&Yang」「花時間」など

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

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