Photo Recipe(フォトレシピ)
野鳥撮影をはじめよう
~その1 基礎知識編~
2022年8月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
近年、とても人気の野鳥撮影。野外を歩いていても、以前にも増して、超望遠レンズをつけたカメラや双眼鏡を下げて歩く方をよく見かけるようになりました。野鳥たちはとても魅力的ですから、一度はじめてみるとその奥深さにハマってしまうことは、私もよく知っています。鳥たちのことをもっと知りたい、見たいという気持ちが持続した結果、20年以上続く趣味となりました。
カメラやテクニックは、そんな鳥たちの姿を映し撮るための手段に過ぎず、なによりも鳥を知ることこそが野鳥撮影で最も重要なことだと認識しています。この連載では、まず野鳥撮影に必要な観察テクニックや、観察が楽しくなる知識をお伝えすることで、末長く野鳥撮影を楽しめる準備のお手伝いをしたいと考えています。
野鳥の魅力とは
では、鳥たちの魅力はどこにあるのでしょうか。
まずは、それぞれの持つ個性的な色彩や形の面白さでしょうか。鮮やかな色彩や、特別長い嘴(くちばし)を持つもの。図鑑をめくると、その多様さに気づくでしょう。
次に、行動の面白さ。小春日和の朝、窓の外からシジュウカラの陽気なさえずりが聞こえると、つい外を歩きたい衝動に駆られます。あるいは、公園の池で、素早く水に飛び込み、魚を捕らえるカワセミ。その姿をひと目見たが故に、虜になってしまう方も少なくありません。
そして、季節を知らせてくれる存在でもあります。身近なところでは、ツバメが来ることで春を感じる、という方もいらっしゃると思います。そんなツバメも、毎年春と秋には海を越えて、東南アジアまで旅をします。そのような背景も併せて知るようにすると、野鳥の世界への理解が深くなります。
野鳥撮影をはじめよう
さて“野鳥撮影を始めたい”と思った時には、まずは水辺へ行くのがいいでしょう。サギ類やカモ類など、大型で肉眼でも見つけやすい種類が多く、野鳥観察の入門に最適です。図鑑を片手に見比べると、いままで同じだと思っていた中にも複数の種類が混ざっていることに気がつくはずです。次に、双眼鏡を使い、池の淵に生える植物と水面の境目を見ると、そのような場所を休息場とする、バンやカイツブリ、時にカワセミの姿が目に入ります。このような発見が続くと、野鳥を見る楽しみが深まっていきます。
特におすすめなのが、都市河川や、池が隣接した都市公園。ある程度人の姿を見慣れている鳥も多いので、近くで撮影できるチャンスもあることでしょう。水辺は光が潤沢なので、高速なシャッター速度を確保しやすく、超望遠レンズを使った撮影でもブレの心配が少なくなります。また、大型の水鳥は飛翔速度が比較的ゆっくりしたものが多いので、ファインダーに捉えやすく、飛翔撮影の入門にも最適です。このように、場所や環境、鳥の特性を知ることが重要です。
「声」に注目!
目で見つけることに慣れてきたら、鳥の「声」を気にしてみましょう。野鳥の「声」には、よく知られる「さえずり」のほか、「地鳴き」「警戒声」の3つがあって、特に意識したいのは「チッ」とか、「ジー」とか、短く聞こえる「地鳴き」です。
経験を積むと、声を聞くだけで鳥の種類がわかり、種類ごと、鳴き方ごとによくいる場所がある程度推測できるので、発見までの時間を短縮できるようになりますが、最初は「声」に反応できれば十分です。
湖畔の葦や樹木のなかを動き回るシジュウカラやメジロ、コゲラ、エナガなどの小鳥が見つかるようになります。森に入るのは次のステップ。茂った枝葉の中から小鳥を見つけ出すのは容易ではありませんが、声を頼りにすると観察のチャンスは増えます。
知っておきたいこと
野鳥撮影を末長く楽しむために、知っておきたいこともあります。前提として、観察や撮影という行為には、鳥たちの暮らしを邪魔してしまう恐れが常にある、ということを心に留めておくことが必要です。鳥たちの「自然な行動」を妨げないような距離感を保ち、無闇に追い回さないことが大切です。
それを防ぐためのヒントとして、野鳥には表情があるということを知りましょう。一般に、怖がった時には、首を伸ばす、羽がピタッと体につく、という変化が現れます。その仕草に気づかず、次の動きを取ると鳥たちは飛び去ってしまいます。これはすなわち、「餌を取る」「さえずる」といった「自然な行動」の邪魔をしてしまうということになります。
一方、落ち着いている時には、羽が空気を含み、丸々とした印象に見えます。これらの違いがわかるようになると、自然と鳥に優しい撮影を心がけねば、という気持ちになるのではと思います。鳥を驚かせなければ、よりゆっくりと撮影できるようになりますから、結果的に撮影チャンスも増え、いい作品が生まれることにもつながります。
野鳥撮影とOM SYSTEM
野鳥撮影では超望遠レンズを使います。超望遠レンズを使う理由として、まず、「大きく写る」ということは重要です。マイクロフォーサーズ規格のOM SYSTEMは、レンズ焦点距離の2倍の望遠効果を得ることができますので、小型のレンズを使用しても、大きな望遠効果を得ることができるシステムです。35mm判換算焦点距離で、最低でも600mm相当、できれば800mm相当を越える程度のシステムを組みましょう。
超望遠レンズに対しては、扱いが難しいという印象を抱きがちですが、鳥を驚かせずに近づく苦労を思えば、レンズの効果で距離を縮めた方が撮影のチャンスは格段に多くなります。鳥に近づかなくていい、ということは、鳥にかけてしまうストレスを軽減できる可能性がある、ということでもあります。初心者こそ、思い切って超望遠レンズを導入することをおすすめします。
上手に鳥に近づくコツ
さて、超望遠レンズを持ってしても、鳥を大きく写すのは実は難しいもの。距離を詰めようと、最初はどんどん近づきたくなってしまうものですが、理想は鳥たちの方から近づいてきて、通り過ぎていくような位置取りです。行動を先読みし、そっとしゃがむ、木の幹に半身を隠すなど、鳥から見える自分のシルエットをなるべく小さくすることを心がけると、鳥がそのまま近づいてくることがあります。その際、近くに来た時こそ、そっと気持ちをおさえて、なるべくゆっくり、小さな動きで観察・撮影するのが驚かせないコツ。時に、撮影するのが困難なほど近づいてくることもありますが、そんな時は無理に撮影をしようとせず、撮れる距離に鳥が離れるまで、静かに待つのもひとつの手段です。
折りたたみ式の小さな椅子などに腰掛け、20分程度座っているだけでも、思っていたよりも多くの鳥たちが間近を通り過ぎていくことを実感できます。その体験をした前後では、鳥との接し方が大きく違ってくるはずです。
おわりに
いかがだったでしょうか。連載の初回となる本記事では、まず押さえておきたい野鳥撮影における心掛けや準備に重点を置いてご紹介しました。今後、記事連載を通して、カメラ設定の話、季節ごとのヒントなどをお伝えしていきたいと思います。ぜひ、ご期待ください。
※35mm判換算焦点距離
記事内で使用した
レンズをご紹介
野鳥撮影のマナー
野鳥撮影時の注意点
- 撮影のために餌付けなどの環境の改変をしたり、録音した野鳥の声を流して誘引することはやめましょう。
野鳥たちの自然な行動や生活を妨げてしまいます。 - 営巣中の野鳥たちはとても敏感です。
大勢で巣を囲むことや、巣やひな、巣立ち直後の幼鳥などの写真の撮影・公開は控えましょう。 - 撮影地周辺の住民や、他の公園利用者への気遣いも忘れないようにしましょう。
- 撮影地の情報の取り扱いは慎重に行いましょう。特に巣やねぐらのように、逃げ場がない状況では注意が必要です。
(画像に付加されたGPS情報は、OM Workspace で現像時に削除することが可能です。) - 野鳥たちは自然の中で暮らす生き物です。彼らの生活を邪魔しないよう、ゆとりをもって撮影しましょう。
また、双眼鏡などを使ってよく観察することが、よりよい撮影に繋がります。 - 野鳥撮影でフラッシュを使用すると、野鳥たちを驚かせてしまいます。
暗い場所では、フラッシュ使用を避けて、ISO感度を上げて撮影しましょう。