Photo Recipe(フォトレシピ)
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夏に出会えるお花を撮りにでかけよう
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撮影・解説 : 吉住 志穂
2022年7月公開
記事内で使用した
レンズをご紹介
はじめに
夏は真っ青な空に太陽の光が燦々と輝いて、花が生き生きと感じられる季節です。ヒマワリはまるで太陽がそのまま花になったようで、この季節がよく似合いますよね。同じ花でも撮影時の天候、時間帯、使うレンズや狙うアングルなどで、写真はまったく違った仕上がりになります。ただ撮るよりも、どんな風に撮りたいかをイメージしながら取り組むと、仕上がりも変わってきますよ。夏の花が見せる、いろいろな表情を引き出していきましょう。
1.ヒマワリ~真夏のポートレート~
太陽のようなヒマワリ。夏空の青と真っ黄色な花色のコントラストが鮮やかですね。夏の花といえば、誰もがこのヒマワリを思い浮かべるのではないでしょうか。花は正面を向き、配置も画面の真ん中ですが、こんなストレートな撮り方がよく合います。むしろ、この堂々とした様子が潔くて、かっこいいポートレートのようです。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
72mm相当※
Aモード F8.0 1/250秒 ISO 200 ±0.0EV
2.ヒマワリ~花びらの造形美~
花全体を写すのもいいですが、花びらをクローズアップしても綺麗ですよ。「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」という接写が得意なマクロレンズを使いました。均等に並んだ花びらの形の面白さが感じられます。太陽の光が花に対して後ろから射すと、花びらは薄いので光が透けて見えます。これが綺麗なので、あえて逆光を選びました。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当※
Aモード F2.8 1/1250秒 ISO 200 +1.7EV
3.ヒマワリ~太陽の花畑~
花がいっぱいのヒマワリ畑でも手前と奥とで密集感が違うのがわかると思います。手前は花と花との隙間が見えますが、奥は隙間がないくらい密集して見えますよね。写ってはいませんがさらに手前はもっと花がスカスカしていました。せっかくたくさんの花が咲いているのだから、花畑全体を写したくなりますが、密集感を出すには花畑の奥側の部分を狙いましょう。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO+MC-14
112mm相当※
Aモード F7.1 1/200秒 ISO 200 +0.3EV
4.ペチュニア~桃色の丘~
広がりがあるのに背景がすごくボケていますよね。使用したレンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」という単焦点レンズです。ズームができないのは不便に感じるかもしれませんが、花に対して自分が寄ったり離れたりすればOK。絞り開放値がF1.2でとても明るい(F値を小さくできる)レンズなので、むしろ背景がぼかしやすいのが魅力です。スナップやポートレート撮影に使われることが多いレンズですが、花を撮るときにボケを引き出して使うのもいいですよ。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO
34mm相当※
Aモード F1.2 1/5000秒 ISO 200 +1.0EV
5.ユリ~彩りの背景~
望遠レンズを使い、背景をぼかして、ユリの花を引き立てました。しかし、背景がぼけていても緑一色ではつまらないので、いつも背景に花の彩りが入れられないかとアングルやポジションを選んでいます。白や黄色、ピンクなどのユリが背景に入れられたので、背景がカラフルになりました。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当※
Aモード F2.8 1/250秒 ISO 200 +1.0EV
6.ハイビスカス~優しい南国の花~
ハイビスカスは沖縄でよく見られ、南国の花というイメージがあります。太陽の光をたっぷりと浴び、色は濃く鮮やかで・・・という、そのイメージ通りに撮るのもいいですが、ふわっと優しい仕上がりで撮るのも好きです。そう、花が持っているイメージの逆に写すのです。日陰などの光がやわらかい場所で明るめに写せば、優しいハイビスカスの出来上がり。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当※
Aモード F2.8 1/320秒 ISO 3200 +1.0EV
WB 3000K
7.ラベンダー~紫の輝き~
ラベンダー畑に行くと、まるで紫の絨毯が広がっているようです。ただ、花色が濃いので光が強い状況では色が重たく感じてしまいます。そこで、逆光を選びつつ、露出を明るめに写しました。逆光だと後ろから光が当たるので、輪郭が白く輝いているのがわかりますか?また、手軽にソフト効果が得られるアートフィルターの「ファンタジックフォーカス」機能を使っているので、やわらかさがグーンとアップしました。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当※
Aモード F2.8 1/400秒 ISO 200 +1.7EV
ファンタジックフォーカス
8.サギソウ~純白の翼~
まるで白鷺が飛翔しているような姿がユニークなサギソウ。せっかくなので、飛んでいるように見える角度、つまり花に対して平面になる上から見下ろすアングルで撮影しました。普段、花を見下ろすと背景に茶色い地面が写るのが嫌で避けることが多いのですが、今回撮影した際は日差しが強く、地面が影だったので、都合よく黒くなってくれました。黒の背景に白い花が映えますね。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当※
Aモード F2.8 1/1250秒 ISO 200 -1.0EV
9.アガパンサス~ブルートーン~
アガパンサスは青紫色の花が一本の茎からたくさん咲くので、とてもボリューム感があります。ただ花が重なり合ってごちゃごちゃしないように、焦点距離が長い望遠レンズの望遠側(数値の大きい方)を使うことで、背景の花をほんのりとぼかしています。撮影したのは夕方6時過ぎで、日がまったく当たらない状況でした。ホワイトバランス(WB)の機能を使い、青みをプラスして、日の入り後の青みを強めています。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当※
Aモード F2.8 1/250秒 ISO 1000 +0.3EV
WB 4200K
10.クレオメ~夏の雨~
雨の降る中、トンボが花のつぼみにとまっていました。クレオメの花は色もピンクでかわいいし、形も好きな花ですが、ここでの主役はトンボです。花は脇役に徹してもらうためにだいぶ端に寄せて、花の右側は大幅にカットしました。それによって、花が目立ちにくく、トンボが引き立ちます。夕立の最中はどんよりしていますが、暗い雰囲気にならないように露出補正を大きくプラスにすることで明るめに撮っています。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
600mm相当※
Aモード F4.0 1/80秒 ISO 400 +2.0EV
11.ハス~水中花~
夏に見られる大輪の花にハスがあげられますね。ピンク色のグラデーションがとても綺麗で、一枚一枚の花びらの重なりが美しく感じられます。ハスは水生植物なので水との相性は抜群。そこで、多重露出という複数の画像を重ねるカメラの機能を使って、花と水の波紋を合わせてみました。花がまるで水中に咲いているかのように見えて、不思議な感じになりました。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当※
Aモード F2.8 1/1250秒 ISO 200 -1.7EV
多重露出
12.アジサイ~アンティーク~
夏本番となると、梅雨の花であるアジサイは終わりを迎える頃。鮮やかだった青や紫の花色も、ところどころ茶色っぽく変色していきます。普通の花であれば、ただの咲き終わりですが、アジサイはこの色の変化を好まれて“アンティーク”と呼ばれます。このちょっと古びたようなアジサイの姿こそ夏の被写体なのです。アートフィルターの「ヴィンテージIII」機能を使い、さらに「ソフトフォーカス効果」をプラス。おしゃれで、味わい深い仕上がりにしました。
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レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
300mm相当※
Aモード F2.8 1/250秒 ISO 640 +1.3EV
ヴィンテージIII+ソフトフォーカス効果
まとめ
夏の花を撮ると言っても、色々な捉え方、撮り方がありましたね。夏に咲く花を夏らしく、力強く咲く姿を捉えるのもいいですが、ときにはふんわりと優しく写してみるのが私流です。花ごとにイメージがあるように、撮る人ごとに花に対するイメージもそれぞれ。みなさんはどんな撮り方が好きですか?みなさんらしく、楽しみながら、自由に夏の花を表現してみてください。
※35mm判換算焦点距離
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吉住 志穂(よしずみ しほ)
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、花のクローズアップ作品を中心に撮影している。女性ならではの視点で捉えた作品が多く、2021年には写真展「夢」を開催。また、写真誌での執筆や撮影講座の講師を務める
日本写真家協会(JPS)会員
日本自然科学写真協会(SSP)会員
写真展「Heartful Flowers」「Ants」「Yin&Yang」「花時間」など