はじめに
美しい野鳥の姿を写真に残したいと思われる方は多いのではないでしょうか。野鳥を撮影する場合、鳥が住んでいる場所にお邪魔するわけですので、基本的に「鳥の生活」に合わせることが大切です。また、撮影地周辺の住民や公園利用者に配慮して撮影することも重要です。この記事の最後に「野鳥撮影マナー」をまとめていますので、参考にしてください。
撮影場所について
野鳥を初めて撮影する場合、まずは池がある公園に行くことをおすすめします。多くの人が訪れる公園に棲む鳥は、人に慣れているため、近くで観察することができますので、初めて野鳥撮影をする人には最適な場所と言えます。私の場合、以前住んでいた場所は、自宅の近所に大きな池がある公園があり、そこにはサギやカモの仲間、いろいろな種類の小鳥がたくさんいましたので、野鳥撮影を楽しむには適した環境でした。
数年前に自宅を引っ越して、新たに野鳥の撮影ポイントを探しました。以前通っていたような多くの人が訪れる大きな池のある公園はなく、ほとんど人がいないような土手のある大きな川や小川が流れる自然公園で多くの鳥を見られることがわかって、毎週末に通いました。ところが、それまで鳥のアップの写真をたくさん撮れていたのに、人がほとんどいない環境の鳥は警戒心が強く、近寄らせてもらえません。新しいフィールドではなかなかアップでは撮れず、“引き“で絵作りをしていたこともありました。
「どうすれば鳥に警戒されずに撮れるのだろう」と考えたとき、「鳥の生活」に合わせることが大切だと改めて気づきました。鳥を探すのではなく、鳥が来るであろう場所で待つことにしました。そのためには観察が重要です。日頃から、鳥がよく止まる木や石などを見ておき、その近くの草むらに身を隠して待つようにしました。そうすることで、前年には撮れなかった写真が、噓のように撮れるようになったのです。また、鳥が止まったときに、すぐにカメラを構えると、その動きで鳥を驚かせてしまうこともありますので、カメラを構えるときはゆっくり動くことがポイント。撮影が済んだらすぐに立ち去るのではなく、鳥が飛び立ってから自分が場所を離れるようにしています。
準備物と機材について
準備物は、観察・記録するための双眼鏡とメモ帳、動きやすくするためにカメラ機材は最初は少なめにすることをおすすめします。レンズは、鳥にストレスを与えないよう距離を取るために焦点距離が長いレンズが良いでしょう。具体的には35mm判換算で、最低でも600mm相当、理想は800mm相当以上のレンズです。OM SYSTEMのレンズは小型軽量で負担が少ないので、フィールドに持って行っても、体力・集中力を維持することができます。また、強力な手ぶれ補正を搭載していますので、ほとんどのシーンは手持ちで撮影することができます。
レンズの例
*35m判換算の場合
レンズの違いによる画角の変化
50m以上離れたところに止まっているアオサギを同じ場所から撮影してみました。焦点距離が長いレンズほど、鳥を大きく撮ることができます。
カメラ設定と撮影の基本について
露出モードと絞り値/シャッター速度
露出モードは、止まっている鳥を撮るときは、ボケ量をコントロールするため、「A(絞り優先)モード」にして、大きくボカしたいときは絞りを開けて(絞り値の数字を小さく)撮ります。飛んでいる鳥を撮るときは「S(シャッター優先)モード」に設定して、大型の鳥はシャッター速度1/1000~1/2000秒程度、小型の鳥は1/3200~1/4000秒程度で撮ると、ブレずに鳥を写し止めることができます。
ISO感度
慣れてくれば任意でISO感度を決められるようになりますが、最初は、ブレないシャッター速度を得るために「ISO AUTO」にして、動きを止めることを優先することをおすすめします。
ホワイトバランス
美しい野鳥の色を再現するには、ホワイトバランスの設定がポイント。「AUTO」でも良いですが、連続で撮影したときに色を揃えるために「晴天」に設定しておくのが良いでしょう。
光
鳥の色を忠実に再現、また青空を青く写すには「順光」のポジションから狙います。水辺の輝きを印象的に見せたり、鳥の形をシルエットで表現するには「逆光」がおすすめです。
ピント合わせ
生きものの写真は、眼にピントを合わせるのが基本です。止まっている鳥を撮るときは眼にピントを合わせましょう。
フォーカスモード
止まっている鳥を撮るときは「S-AF」、飛んでいる鳥を撮るときは「C-AF」をおすすめします。機種によって「S-AF +MF」「C-AF +MF」が選べる場合は、「AF+MF」を「ON」にしておくと、合焦後に自分でマニュアルフォーカスで調整できるので便利です。
AFターゲット
止まっている鳥を撮るときは「S-AF」との組み合わせで、OM-Dなら「シングル」、OM-1なら「スモール」に設定して、主要被写体の鳥にAFターゲットを合わせます。飛んでいる鳥を撮るときは「C-AF」との組み合わせになりますが、私はシーンによってAFターゲットを変えています。青空背景の場合は「オール」、背景に木や草などが入る場合は、OM-Dなら「9点グループ」、OM-1なら「Middle」に設定して、飛んでいる鳥をAFターゲットに入れ続けて撮影すると良いでしょう。
鳥認識AF
鳥認識AFを搭載している機種では、鳥認識AFに設定すると、カメラが鳥の瞳に優先的にピントを合わせ、瞳が検出できない場合でも、頭部または全身を検出しますので、撮影者は構図に集中することができます。使いこなしのコツは、AFターゲットに鳥を入れること。カメラが鳥を認識していても、AFターゲットが鳥に重なっていないとピントは合いません。ほとんどの場合、オールターゲットで撮影すると、鳥にピントを合わせてくれます。手前に枝があるなど、オールターゲットでピントが迷う場合は、AFターゲットを小さくして鳥に重ねることで、より精度の高いピント合わせが可能です。
止まっている鳥を撮る
逆光で鳥を印象的に撮る
飛んでいる鳥を撮る
野鳥撮影マナーについて
- 撮影のために餌付けなどの環境の改変をしたり、録音した野鳥の声を流して誘引することはやめましょう。
野鳥たちの自然な行動や生活を妨げてしまいます。
- 営巣中の野鳥たちはとても敏感です。大勢で巣を囲むことや、巣やひな、巣立ち直後の幼鳥などの写真の撮影・公開は控えましょう。
- 撮影地周辺の住民や、他の公園利用者への気遣いも忘れないようにしましょう。
- 撮影地の情報の取り扱いは慎重に行いましょう。特に巣やねぐらのように、逃げ場がない状況では注意が必要です。
(画像に付加されたGPS情報は、OM Workspace で現像時に削除することが可能です。)
- 野鳥たちは自然の中で暮らす生き物です。彼らの生活を邪魔しないよう、ゆとりをもって撮影しましょう。
また、双眼鏡などを使ってよく観察することが、よりよい撮影に繋がります。
- 野鳥撮影でフラッシュを使用すると、野鳥たちを驚かせてしまいます。
暗い場所ではフラッシュ使用を避けてISO感度を上げて撮影しましょう。